障がい者スポーツの祭典、北京パラリンピックが6日、開幕を迎える。約150の国と地域が参加し、12日間で20競技が実施される。日本からは史上最多だった前回のアテネ大会より、1人少ない162名の選手が参加。17競技に出場する。
 アテネで日本勢は金17個を含む52個のメダルを獲得した。今回の目標は金11個を含む39個を目標に掲げる。メダル数を少なく見積もっているのは種目数減少のため。パラリンピックは障がいの程度によって、細かくクラスが分けられており、前回大会では515の金メダリストが生まれた。しかし今回は出場選手の少ないクラスを統合するなど、金メダルの数は472に減った。

 日本勢ではアテネ大会で7冠をとった競泳女子の成田真由美(神奈川県)が4大会連続の金メダルに挑む。この4年間は3度にわたる股関節の手術を経験し、1年以上の入院生活を乗り越えた。退院したのは昨年の11月。直後の大会で出場資格を手にした。2大会連続金の150メートル個人メドレーでは1つ軽い障がいのクラスに振り分けられたため、欠場を余儀なくされたものの、その泳ぎからは目が離せない。

 また陸上では、男子マラソンで高橋勇市(東京都)が連覇を狙う。白点状網膜炎で10年前に失明し、今回はシドニー五輪代表の川嶋伸次氏(現東洋大学陸上部監督)を伴走者にゴールを目指す。女子車いすマラソンに出場する土田和歌子(東京都)は冬季パラリンピックでもアイススレッジスピードスケートで金メダルの実績を持つ。アテネでは5000メートルで金、マラソンでは銀だった。06年に男児を出産し、“ママでも金”を目指す。

 五輪柔道で野村忠宏が達成できなかった4連覇をパラリンピックで射程に入れるのは男子66キロ級に出場する藤本聡(徳島県)。先天性の視神経異常で右目がわずかに見える程度の視力だが、年齢を重ねて得意の背負い投げに加え、技の幅が広がっている。
 車いすテニスの国枝慎吾(千葉県)はシングルス、ダブルスの両方で今、もっとも世界の頂点に近い。昨年は4大大会すべてで優勝するグランドスラムを達成した。威力のあるショットと素早い車いす操作は、それだけで一見の価値がある。

 パラリンピックには独自の競技がある点も見どころのひとつだ。たとえばボッチャ。ジャックボールと呼ばれる白いボールを的にして、それぞれが赤と青のボールを投げ合い、近さを競う。冬季五輪のカーリングのようなスポーツと言っていい。

 障がい者スポーツの課題は、そのサポート体制が不十分なこと。遠征などの費用面や仕事との両立、練習環境や指導者不足など、選手たちが高いレベルでスポーツを続けるのは容易ではない。今大会から日本政府は金メダルには100万円、銀メダル70万円、銅メダル50万円の報奨金を贈呈することを決めた。とはいえ、五輪のメダリストに対する金額(金300万円、銀200万円、銅100万円)とは格差がある。それでも多くの困難を乗り越え、大舞台に立った選手たちにはぜひ大きな声援を送りたい。