11月4日(火)
 4日、日本シリーズは西武ドームに場所を移し、第3戦が行われた。序盤に大量リードを奪い、終盤には効果的なダメ押し点を挙げた巨人が、西武の反撃をかわして2勝目を挙げた。これで通算成績を2勝1敗とした巨人は、あと1勝で王手をかけることとなった。

◇第3戦
 鈴木、3安打3打点の活躍!(巨人2勝1敗、西武ドーム)
巨人      6 = 130001010
埼玉西武   4 = 000004000
勝利投手 内海(1勝0敗)
敗戦投手 石井一(0勝1敗)
セーブ   クルーン(1S)
本塁打   (巨)鈴木尚1号3ラン、ラミレス2号ソロ、小笠原1号ソロ
       (西)中村1号3ラン
 巨人のリードオフマン、鈴木尚広が攻守ともに素晴しいプレーを披露し、チームに勝利をもたらした。まずは初回、鈴木は初球をライトに運び、二塁打とした。続く2番・木村拓也の当たりは平凡なショートゴロだったが、鈴木が好走塁を見せて三塁へ進み、西武の先発・石井一久を揺さぶる。そして続く3番・小笠原道大への1球目のスライダーがワンバウンドに。これをキャッチャーの細川亨が後逸し、三塁ランナー鈴木は悠々とホームへ返り、わずか3球で巨人は先取点を奪った。

 続く2回表、1死から7番・亀井義行がラッキーな内野ゴロで出塁すると、8番・坂本勇人はサードゴロに倒れるも、9番・鶴岡一成が粘って四球を選んだ。打席には先制のホームを踏んだばかりの鈴木。1球目、外角にそれたストレートをしっかりと見送ると、2球目、真ん中に甘く入ったスライダーを鈴木はフルスイングした。打球はオレンジ一色に染まったレフトスタンドへ入り、貴重な3ランとなった。プロ12年間で8本しか本塁打を打っていない鈴木の一発に、マウンド上では信じられないような表情で肩をガックリと落とす石井一。それとは対照的にダイヤモンドを一周する鈴木の足取りは実に軽やかだった。

 投げては巨人先発の内海哲也がキレのあるスライダーを武器に西武打線を翻弄。第1、2戦と2試合連続で本塁打を放った3番・中島裕之もそのスライダーに全くタイミングが合わず、2打席連続で三振を喫した。6回表には4番・ラミレスの2試合連続となる本塁打で1点を追加し、巨人はその差を5点と広げた。

 5回まで無得点に終わっていた西武打線だったが、6回裏、ようやく西武らしい集中打を見せた。1死から安打で出塁した1番・片岡易之が盗塁を決めると、2番・栗山巧も続き、打席にはこの試合無安打の中島が入った。

 すると、これまで好投を続けてきた内海に力みが生じ、制球が乱れ始めた。カウント1−1から2球続けてスライダーが高めに抜け、1−3とする。そして5球目のスライダーは真ん中へ入った。中島はこれをきれいにセンターへ弾き返し、まずは1点を返した。なおも1死一、二塁で4番・中村剛也。

 ここで巨人ベンチが動いた。内海に代え、西村健太朗をマウンドに上げる。だが、この継投がシリーズ無安打と眠っていた若獅子を目覚めさせた。2球目、真ん中高めに入ったボールを中村は軽々とライトスタンドへ。打った瞬間それとわかる3ランに西武ファンの歓声がとどろき渡った。

 5−4と一気に1点差に詰め寄られた巨人だったが8回表、ケガをおして強攻出場した小笠原がダメ押しの一発を放った。リリーフ陣も好投を見せた。3番手・越智大祐が7、8回を無失点に抑えると、満を持して最終回に送られたクルーンもきっちりと三人で切ってとり、西武の反撃をかわした。

 2勝目を挙げた巨人・原辰徳監督は次のようにコメントした。
「(早めに)主導権を握ることができたので、それほどハラハラしなかった。(小笠原は)昨日もバットを触れる状態ではなかった。今日も心配したが、彼の強い精神力があのホームランにつながったと思う。(最後は)いいかたちでクルーンにつなげたというのはうちの勝ちパターンなのでよかった。短期決戦とはいえ腰をすえて戦うのが日本シリーズ。明日も一戦必勝で戦う」

 また、走攻守で好プレーを披露し、勝利の立役者となった鈴木は次のように冷静に試合を振り返った。
「今日はいい試合ができたのですごく嬉しい。ここ2試合、積極的にいけていなかったので、今日は初球から打つという気持ちを強くもって打席に入った。(ダイヤモンド一周は)あまり慣れていないので、急ぎ足でホームまで行ってしまった。でも、僕には出塁することが一番求められているので、3本目の内野安打の方が自分にとっては価値があると思う。(走攻守)全てにおいて積極的に気持ちがいっているので、それがいい結果につながっていると思う。明日もいつもと変わらず気持ちをフラットにして自分らしく積極的にいきたい」

 一方、西武にとってこの試合は不運が続いた。7回表にはアウトと思われた鈴木のファーストゴロがセーフに。最終回、キャッチャーゴロと見なされた7番・佐藤友亮の打席では、ボールがキャッチャーミットに当たっていたという渡辺久信監督が「ファウルではないか」と抗議をしたものの受け入れられず……。後味の悪い試合に渡辺監督はガックリと肩を落とした。

 果たして明日は2連敗という悪い流れを断ち切り、西武がホームで初勝利を挙げることができるのか。それとも、巨人が勢いをつけ早くも王手をかけるのか。注目の第4戦は明日5日、同じ西武ドームで行なわれる。