今年の南米代表はブラジル、アルゼンチンでもなくエクアドルからやってくる。この2カ国以外の南米王者は2004年のオンセ・カルダス(コロンビア)以来4年ぶり。赤道直下のエクアドルから初めて生まれたコパ・リベルタドーレスの覇者はリガ・デ・キトだ。
 もともとはエクアドル中央大学のサッカー部として誕生したクラブは、昨年まで国際大会で目立った成績を挙げておらず国内のリーグを9回制覇したのみで、国外では決して名の通った存在ではなかった。キトとはエクアドルの首都で人口140万人が住む大都市、標高2800メートルの高地にあり、準々決勝で対戦する北中米カリブ海代表のパチューカと共通点がある。

 先述の通り前評判は決して高くなかったが、コパ・リベルタドーレスではグループリーグを3勝2敗1分でフルミネンセ(ブラジル)に次ぐ2位で突破。決勝トーナメントではエストゥディアンテス、サン・ロレンソというアルゼンチンの強豪クラブを立て続けに撃破、準決勝では北中米地区に属しながら特別枠で招待されたクラブ・アメリカ(メキシコ)を破り、初めての決勝進出を果たした。

 決勝での相手はグループリーグでも同組で対戦していたフルミネンセ。日本のサポーターにとっては懐かしい元・浦和レッズのワシントンが所属しているクラブだ。グループリーグで対戦は1敗1分とブラジルの名門クラブに軍配が上がっていた。

 ホームアンドアウェー方式で行われた決勝は第1戦(ホーム)では、高地の特性を生かし相手を圧倒、4−2で快勝した。しかし、リオデジャネイロの10万人収容のマラカナン・スタジアムで行われた第2戦では1−3と逆に2点差をつけられ敗れてしまう。アウェーゴール制ならば、ここでフルミネンセの優勝が決まるのだが、コパ・リベルタドーレス決勝戦ではアウェーゴールを採用しておらず、2戦合計5−5でPK戦に突入。リガ・デ・キトは10万人の地元サポーターの圧力を物ともせず、3−1でフルミネンセを破り、エクアドル史上初の南米王者が誕生した。

 国際的な知名度は低いものの、06年ドイツワールドW杯にも出場したエクアドル代表を7名擁しており、南米を制した実力は決してフロックではない。中心選手は決勝のPK戦、3本連続でシュートを止めたホセ・セバジョス(37)だ。02年日韓ワールドカップにも出場経験のあるベテランの活躍なしに南米を制することは不可能だった。この活躍でエクアドルでは国民的人気を誇っている。

 中盤ではパトリシオ・ウルティア(31)に注目したい。中盤の底に位置する選手ながらコパ・リベルタドーレスで4得点を挙げている。強烈なミドルシュートと積極的な上がりが武器で、キャプテンとしてもクラブを引っ張る。エースストライカーはエクアドル代表歴代最多得点(31点)の記録を持つアグスティン・デルガド(34)。すでに代表を引退しているが、02年W杯ではエクアドル代表のW杯初ゴールをあげ、06年W杯では同国代表ベスト16進出の原動力となった。経験豊富なベテラン2人の働きがクラブ浮沈のカギを握る。

 過去のクラブW杯に出場した南米代表は全て決勝まで駒を進めている。準決勝ではパチューカとアフリカ代表アルアハリ(エジプト)の勝者と対戦するが、いずれのクラブが勝ちあがっても決して楽な試合にはならないだろう。もちろんリガ・デ・キトの目標は世界王者だが、17日の準決勝で2試合目の相手にトップコンディションで臨めるか。そこが最大のポイントだ。