北京オリンピック後初の個人戦主要大会である「嘉納治五郎杯東京国際柔道大会2008ワールドグランプリ」(12日〜14日、東京体育館)が12日、開催され、男子60、66キロ級、女子78、78キロ超級の計4階級で覇が競われた。今夏、66キロ級で五輪連覇を達成した内柴正人(旭化成)は2回戦でツァガンバータル(モンゴル)の谷落をくらい、早々に敗退。この日、日本勢は、秋元希星(60キロ級、筑波大)、江種辰明(66キロ級、警視庁)の金メダル2個を含む、計7個のメダルを獲得した。
(写真:「悔しいだけです」と唇を噛んだ内柴)
 内柴の五輪3連覇への船出はほろ苦いものとなった。
 1回戦、ウォン(中国香港)をわずか59秒で仕留める(横四方固)上々のスタートをきった。しかし、続くツァガンバータル戦は内柴に北京のキレはみられなかった。抑込に入るも極めきれない。内柴が1分37秒に谷落で一本負けを喫すると会場はため息に包まれた。

 内柴は敗因を「練習不足」と語った。
「2回戦は息をするのもしんどかった。抑込の時、あと5ミリ指がかかれば極っていた。その5ミリを補うものが練習だと思う」
 また、練習不足を自覚しながら嘉納杯出場を決めたきっかけは妻のあかりさんの妊娠だった。
「うちにも井上康生と同級生ができました。その子のためにも勝ちたかった」
 出産予定日は6月中旬。生まれてくる子供のためにも、来年オランダで開催される世界選手権、12年のロンドン五輪で金メダルを獲りたいところだ。

 一方、今年の講道館杯王者は強かった。
 男子60キロ級は秋元希星が制した。秋元は初戦となった2回戦から準決勝まで全て一本勝ちで勝ち進む。決勝のチェ・グアンヒョン(韓国)戦は激しい組み手争いと投げ技の応酬となるが、なかなか互いに決め手を許さない。残り1分をきったところで秋元は有効ポイントを手にしてそのまま逃げ切った。
(写真:嘉納杯を手に喜ぶ秋元)

 66キロ級の王者は32歳のベテラン江種辰明だ。江種は秋元とは対照的に、初戦から延長戦にもつれ込む苦戦を強いられる。決勝の相手は韓国のアン・ジョンファン。江種は先に技ありを取るが、終始責め続けられる苦しい展開となった。そして、残り30秒をきったところで篠原伸一新監督から大きなゲキが飛ぶ。「下がるな、前に出てさばけ」。その言葉に反応したのか、江種は捨て身突っ込んできた相手をうまく体に乗せた。払腰で一本勝ち。劇的な幕切れに東京体育館に詰めかけた観客は大いに沸いた。
(写真:66キロ級のメダリスト。左からアン、江種、コバルスキ、海老沼)

 78キロ級で優勝したのは楊秀麗(中国)だ。楊は決勝で堀江久美子(兵庫県警)と対戦したが、立て続けに有効を2度奪ってみせる。2分45秒に後腰をきれいに決めて勝負あり。銀メダルを獲得した堀江に笑顔はなかった。また、北京五輪日本代表で優勝の期待が大きかった中澤さえ(綜合警備保障)は初戦敗退に終わった。

 女子最重量の78キロ超級はロシアのイワシュシェンコが優勝。イワシュシェンコは2回戦で田知本愛、準決勝で立川真衣(ともに東海大)、決勝で杉本美香(コマツ)と日本人をことごとく破って金メダルを獲得した。

 日本人メダリストは以下のとおり。

男子60キロ級
金メダル 秋元希星(筑波大)
銅メダル 福岡政章(綜合警備保障)

男子66キロ級
金メダル 江種辰明(警視庁)
銅メダル 海老沼匠(明治大)

女子78キロ級
銀メダル 堀江久美子(兵庫県警)

女子78キロ超級
銀メダル 杉本美香(コマツ)
銅メダル 田知本愛(東海大)