18日、横浜国際競技場でクラブワールドカップ2008準決勝が行われる。アジア代表として大会に臨んでいるガンバ大阪が、欧州代表のマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)と対戦する。世界を代表する強豪クラブを相手にガンバはどのようなサッカーを展開するのか。
 16日の練習後、いつも強気な姿勢を崩さない西野朗監督が珍しく「ウィークポイントがない」と弱気なコメントを残した。たしかにイングランド・プレミアリーグの名門相手に強気になれる監督はそうはいないだろう。

 一方、同日の会見でマンチェスター・ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソン監督は「ガンバは危険な相手、厳しい戦いになるだろう」と語った。しかし、長旅直後の試合であること、中2日で決勝戦が控えていることを考えれば、準決勝はあくまで2試合のうちの初戦といったところだろう。

 昨年の準決勝では浦和レッズが同じく欧州代表のACミラン(イタリア)を相手にゴール前を固め1−0という試合をした。しかし、攻め手が全くなかったのは事実。ボールに対しあと一歩の所での速さと強さが違っていた。スコア上は善戦といえるかもしれないが、内容では完敗の試合だった。

 ではガンバにも攻め手はないのかというと、そうとも言えない。ガンバならばマンチェスター・ユナイテッドに通用する部分があるように思う。その鍵を握る選手はFW播戸竜二だ。準々決勝では前半20分、MF佐々木勇人の負傷を受け途中出場し、前半23分のゴールシーンでは長身DF2人に競り勝ち遠藤保仁でラストパスを送り決定的な仕事をしている。

 播戸が狙うべきポイントは、マンチェスター・ユナイテッドのセンターバック、リオ・ファーディナンドとネマニャ・ビディッチの2人。高さという点ではなかなか敵う相手ではないが、横へのスピード、特にドリブルやスルーパスへの対応に難がある。同じイングランドのクラブ、チェルシーのジョー・テリーとリカルド・カルバーリョの鉄壁コンビならば歯が立たない気もするが、ファーディナンドとビディッチならば通用しないこともない。播戸のようなスペースへ飛び込む上、闘志あふれる球際に強い選手は2人にとって手を焼くタイプだろう。

 マンチェスター・ユナイテッドの攻撃陣は文句のつけようのない磐石の布陣だ。ウェイン・ルーニー、ディミタル・ベルバトフにカルロス・テベス。名前を並べるだけでもいつでも得点が入りそうなメンバーだ。中盤に関しても穴という穴は見当たらない。説明不要のオールラウンダー、クリスティアーノ・ロナウド、京都サンガでもプレーしたパク・チソンに、日本では名が知られていないが確実な仕事をするダレン・フレッチャー、正確無比なパスを通すマイケル・キャリックと駒が揃っている。

 ただ、最終ラインは世界屈指の実力を持つと言えるかは疑わしい。センターバックの2人は上背はあるが、うまさを強調できる選手ではない。また、右サイドバックのラファエルは18歳のブラジル人。将来は代表入りも嘱望される逸材だが経験では他の選手よりは劣る。狙うとすればガンバにとっての左サイドということになるだろう。

 来日会見の席上、注目選手として遠藤とルーカスの名前を挙げたファーガソン監督。万が一、播戸へのマークが薄くなるようなことがあればガンバにもチャンスが生まれる。播戸の巧みなボールコントロールからゴール前でファールをもらうシーンがあれば、そこは遠藤の出番だ。欧州チャンピオンズリーグではマンチェスター・ユナイテッド相手に、中村俊輔(セルティック)が2本の直接フリーキックを叩き込んでいるだけに、負けられない気持ちもあるだろう。セットプレーは相手のプレッシャーもなく攻撃できる唯一の方法。このチャンスをものにしたい。

 とはいえ、相手の慢心と油断がなければ打倒マンチェスター・ユナイテッドは難しい。しかし不可能ではない。遠藤は「世界に驚きを与えられると思う」と語っている。彼と同じ思いをガンバの選手が一人でも多く持ち、戦う姿勢をみせれば勝負できる可能性は少しずつ上がっていく。

 アジアチャンピオンズリーグでの戦いから「浦和とは違うやり方でアジアの頂点を目指す」と口にしていた西野監督。攻撃的なサッカーでアジアを制した。世界の舞台でも強豪相手でも攻めの姿勢を失わないで欲しい。果敢にチャレンジした結果、攻められなければ仕方ない。それが世界のトップクラブとアジア王者の差。その部分を肌で実感することも貴重な経験になる。