元日、第88回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝が東京・国立競技場で行なわれ、ガンバ大阪が延長戦の末、柏レイソルを1−0で下し、優勝を果たした。ガンバの優勝は93年のJリーグ開幕以降は初めて、前身の松下電器産業時代を含めると18年ぶりの天皇杯制覇となった。試合は前後半90分、両クラブとも攻め続けるも決め手を欠きスコアレスで延長戦へ。このままゴールが決まらずにPK戦へ突入するかと思われた延長後半11分、延長後半から投入されたFW播戸竜二が決勝点を叩き込んだ。勝利したガンバは、昨年優勝を果たしたアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を獲得した。

◇1月1日、国立
ガンバ大阪 1−0 柏レイソル
【得点】
[G大阪] 播戸竜二(延長26分)
 決勝戦で立ち上がりからペースを掴んだのは柏だった。前半6分には右サイドバックの村上佑介がオーバーラップしゴール前へパスを出す。これに反応したFWポポがGKと1対1となり、右足で強烈にシュート。ゴール枠内へ向かったが、GK藤ヶ谷陽介が左手一本でセーブしコーナーキックへ逃れた。この他にも決定機を数度迎えた柏だったが、藤ヶ谷の好セーブでゴールを奪うことができない。

 一方のガンバは12月3日のリーグ最終節から数えて1カ月で7試合目という超過密日程からか、前半から柏に主導権を奪われてしまう。負傷により出場が危ぶまれたMF遠藤保仁と橋本英郎は決勝のピッチに立ったが、本来の動きを前半では見せることができなかった。ガンバはチャンスを作り出すにいたらず、前半は0−0で折り返す。

 柏は後半開始からFWフランサを投入する。13分にはFW李忠成もピッチに送り込み、一気に攻めの形に出る。フランサの正確なロングフィードやヒールパスから、何度かチャンスを作るものの、ガンバDF陣の必死の守りで得点を挙げることはできない。

 ガンバは後半から上がり目の位置に入っていた遠藤とボランチの橋本をポジションチェンジしてからバランスがよくなり、短いパスをつなぎながら柏ゴールに迫っていく。足の状態が万全とはいえない遠藤だったが、西野朗監督が「負傷している足はかなり痛いはずなのに、試合が終盤になるほどに動きがよくなっていった印象がある」と試合後に絶賛した働きでチームを牽引していく。20分にはMF寺田伸一のシュートが柏ゴールを襲ったが、惜しくもゴールは生まれず、前後半90分で決着がつかず延長戦に突入した。

 延長に入ってからも一進一退の攻防は続いた。フランサ、李を中心に攻める柏。ルーカス、山崎雅人と運動量豊富なFWにボールを集めるガンバだったが、お互いフィニッシュの精度を欠き、両者無得点のまま時間は過ぎていく。

 延長後半開始時に、西野監督は山崎に代え、ベンチスタートだった播戸を投入する。すでに105分を戦った他選手よりもフレッシュな播戸がゴール前に入っていくことで、ガンバの攻撃陣に活気が戻ったように見えた。

 そしてこのままPK戦になるかと思われた延長後半11分。左サイドに開いたルーカスからのボールをMF倉田秋がつなぎゴール前へ。そこに待っていた播戸がシュートを放つ。一旦DFにカットされるが、そのボールに再び鋭く反応した播戸がGKの動きをよくみてシュートを放つ。ボールは柏ゴールネットを揺らし、試合開始から116分でようやく初ゴールが生まれた。その後、攻めるしかなくなった柏がパワープレーを見せるが、藤ヶ谷を中心としたガンバ守備陣が猛攻を耐え切り、ガンバが1990年に前身の松下電器産業が優勝して以来、18年ぶりに元日決戦を制した。

 この結果、2009年ACLには、Jリーグクラブから鹿島アントラーズ、川崎フロンターレ、名古屋グランパス、ガンバ大阪が出場することとなった。ガンバにとって昨年のチャンピオンクラブとして、アジア連覇のかかる大会となる。

 試合後、西野監督は開口一番「素晴らしい選手たちとスタッフに感激している」と語った。「特に選手たちは過密日程とACLへの出場権を獲得しなければならないというプレッシャーの中、よく戦ってくれた。準々決勝からの3試合は目に見えない、自分たちに潜在する力で乗り切ってくれたと思う。クラブワールドカップの後、燃え尽きてしまってもおかしくない中、気持ちを立て直して戦ってくれた。あの舞台でもう一度やりたいという気持ちがあったからこそ優勝できた」とコメントした。

 天皇杯制覇で08年度2冠に輝いたガンバ大阪。今年も国際舞台と国内リーグ、2つのステージで戦うこととなる。西野監督は「今年戦っていくメンバーが明確ではないが、昨年は海外と国内でうまく併用ができなかった部分がある。昨年と同じようなチャレンジをしても(ACL)連覇は難しいし、国内のリーダーになることはできない。レベルを上げて(2つの戦いに)チャレンジしていきたい」と2009年の豊富を語った。