大相撲初場所は25日、東京・両国国技館で千秋楽が行われ、横綱・朝青龍が優勝決定戦で横綱・白鵬を下し、5場所ぶり23回目の優勝を飾った。朝青龍は本割で白鵬に敗れ、全勝優勝こそならなかったが、決定戦での再戦を制した。23回の優勝は貴乃花(元横綱・現親方)を抜き、史上4位。3場所連続休場で進退が取りざたされた土俵で、朝青龍は見事な復活を遂げてみせた。
「朝青龍はまた帰ってきました!」
 優勝インタビューで国技館に詰めかけた超満員のファンに挨拶すると、思わず涙があふれた。場所前は優勝どころの話ではなかった。調整不足が指摘され、横綱審議委員会の稽古総見では白鵬に歯が立たなかった。引退の二文字は現実味を帯びていた。

 しかし、本人には手ごたえがあった。「場所前の稽古は口には出していなかったが、いい感じでできた」。それは初日に難敵の稀勢の里に逆転勝ちすると、「いけるかな」と確信に変わった。立ち合いが鈍く、押し込まれる展開が目立った序盤を乗り切ると、徐々に持ち前のスピードが戻ってきた。

 14個の白星をきれいに並べ、迎えた1敗の白鵬との決戦。本割は完全に立ち合いで失敗した。先に手をついて立ったが、相手との呼吸が合わない。待ったをしようか迷った中途半端な立ち合いで簡単にもろ差しを許し、向正面に寄り切られた。

「やってしまった。何もできなかった」
 だが、すぐに気持ちを切り替えられるところが、前人未到の7連覇も経験した横綱の強みだ。「負けたことが励みになった。次はない」。集中して臨んだ決定戦、全盛期を思わせる鋭い踏み込みで先手をとった。左下手を深くとり、頭をつける。左から投げを打って、白鵬の体勢を崩すと、右前まわしをつかんだ。最後は4場所連続優勝を狙った東の横綱を渾身の力でひきつけると、西土俵へ寄り切った。

 良くも悪くも朝青龍で始まり、朝青龍で終わった15日間。01年夏場所以来(貴乃花−武蔵丸)、8年ぶりの横綱同士の優勝決定戦も実現し、国技館は大いにもりあがった。しかし、半年間ほとんど休んでいた横綱に賜杯を渡した結果は、他の力士のふがいなさも示している。勝ち名乗りを受けた後、土俵上で派手に両手をあげてガッツポーズした姿を敗れた力士たちはどう見たか。「まだまだ頑張りたい」。そう語る朝青龍を本気で頑張らせるためにも、このまますんなりと完全復活を許してはいけない。