21日、第81回選抜高校野球大会が開幕する。第2期改修工事が終了したばかりの阪神甲子園球場で11日間、紫紺の優勝旗をかけた戦いが行なわれる。今大会は各校の実力が拮抗しており、例年以上に激戦が数多く見られそうだ。
 今大会、優勝候補の筆頭に挙げられているのは、昨秋の明治神宮大会を初制覇した慶応(神奈川)だ。エースの白村明弘(3年)を柱に投打のバランスがとれており、総合的には最も安定したチームだ。

 慶応の対抗馬としては近畿勢が有力だ。勢いのある打線が自慢の天理(奈良)、走攻守で全国トップクラスを誇るPL学園(大阪)、投手を中心とした堅守の福知山成美(京都)は慶応に決してひけをとらない実力を持つ。特に天理、PL学園は甲子園の常連校。試合巧者ぶりを発揮できれば、慶応以上に優勝の可能性はある。

 次に注目選手を見てみよう。投手では清峰の右腕・今村猛(3年)が今大会ナンバーワンの呼び声高い。MAX146キロの伸びのあるストレートに加え、130キロ台の高速スライダー、カットボールも一級品だ。昨秋の九州大会では、全4試合完投するなど、スタミナ面も全く問題ない。今村は既に昨夏、甲子園のマウンドを経験していることも大きなアドバンテージとなりそうだ。

 また、左ではMAX149キロを誇る花巻東(秋田)の菊池雄星(3年)だ。メジャーリーグのスカウトが視察に訪れるほどの逸材。キレのあるストレートとスライダーを織り交ぜたコンビネーションで打者を翻弄する。冬場にはチェンジアップやフォークを習得し、投球の幅を広げた。菊池も1年夏に甲子園デビューを果たしている。大舞台での経験をいかしたピッチングを期待したい。

 一方、野手では昨年から注目されている“清原2世”ことPL学園の勧野甲輝(2年)。秋の公式戦での本塁打は0本に終わったものの、15安打中7本が長打とパンチ力のあるところを見せた。不発に終わった秋の汚名返上とばかりに今大会への意気込みは強いはずだ。清原和博のように大舞台で本領発揮となるか。

 また、四国からは「怪物」が乗り込んでくる。186センチ、91キロとひと際異彩を放つのは西条(愛媛)の主砲・秋山拓巳(3年)だ。高校通算本塁打は31本を誇るそのパワーは超高校級。昨秋は打率(.459)、打点(14)ともにチームトップの数字をマークし、期待に応えた。エースでもある秋山は、投げては球速以上に重いストレートを武器に12試合85回2/3を投げて87奪三振をマーク。投打ともに「ゴジラ」張りの豪快さは必見だ。

 今大会、最も話題となっているのが、甲子園史上初の“早慶戦”だ。実現するとすれば、決勝戦で顔を合わせることになるが、早稲田実(東京)は初戦で天理と対戦する。天理の強力打線に早稲田実の2年生ピッチャーがどれだけ踏ん張ることができるかがポイントとなる。

 初戦で最も注目したいのは西条vs.PL学園と花巻東vs.鵡川(北海道)だ。西条とPL学園はもちろん主砲対決。どちらが「怪物」の異名にふさわしいスラッガーなのか、パワフルな試合展開をぜひ見せてもらいたい。一方の花巻東と鵡川は剛腕・菊池と、一度火がつくと勢いが止まらない爆発力を擁する通称“シシャモ打線”との対戦だ。特に体重103キロの森泰一(3年)、90キロの西藤昭太(3年)、83キロの柳田恭平(3年)の中軸は破壊的パワーを擁する。北海道大会準決勝の駒大岩見沢戦ではそろって本塁打を放ってみせた。今大会屈指のガチンコ勝負になることは間違いない。

 さて、今大会からはストライクゾーンがボール1個分低めに広がる。それだけに投手有利と言われているが、低めに抑えられるほどのコントロールがあるかどうかが決め手となる。それだけに、制球力に優れた投手の有無が優勝へのカギとも言えそうだ。とすれば、単純に数字だけを見れば、昨秋のチーム防御率ベスト3に入る高崎商(群馬、0.58)、福知山成美(0.59)、興南(沖縄、0.66)が当然、優勝候補の筆頭に挙げられる。

 果たして最後に校歌を甲子園に鳴り響かせることができるのはどのチームなのか。いよいよ明日21日、熱戦の火蓋が落とされる。