WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2次ラウンド1組は19日、敗者復活戦にまわった日本代表がキューバ代表を5−0で破り、2大会連続の準決勝進出を決めた。日本は4回、2死2、3塁で相手がセンターフライを落球し、2点を先制。その後も小刻みに得点をあげた。投げては岩隈久志、杉内俊哉のリレーで強打のキューバを無得点に封じ込めた。

 青木、4安打2打点
日本代表     5 = 000210101
キューバ代表  0 = 000000000
(日)○岩隈−S杉内
(キ)●マヤ−Y.ゴンザレス−ヒメネス−N.ゴンザレス−ガルシア−ベタンコート
(写真:今大会の打率.391と好調の青木)
 負ければ終わりの日本を救ったのは、昨季のパ・リーグで23年ぶりとなる21勝をあげた右腕だった。6回を投げて要した球数はわずか69球。アウトの内訳は三振2、ライナー1、内野ゴロ15。もちろん失点はゼロだ。「自分は三振をどんどん奪うピッチャーではないので、いかに相手に打たせてアウトを稼ぐか」を意識している岩隈の持ち味が十二分に発揮されたゲームだった。

 初回、2死から外角の甘いボールをユリエスキ・グリエルにヒットされる。だが、ランナーが出てから粘り強い。一発のあるフレデリック・セペダには、まずアウトコースに落ちるフォークで空振りを奪い、次にインハイのストレートですぐに追い込む。そして3球目はアウトコース。セペダの打球は岩隈の正面を襲ったが、慌てず処理してピッチャーゴロにしとめた。「ランナーが出たらゴロを打たせることを考えています」。2回以降も4本のヒットを浴びたが、そのうち3度は次の打者を内野ゴロに打ち取った。

 何より良かったのは、シュート気味に曲がるツーシームとフォークボールだ。昨年、岩隈は好調の理由のひとつに「右の長距離打者に対して、しっかりインコースを突けましたし、左バッターに対してはフォークボールで空振りを取れた」ことをあげていた。この日も右打者のインコースでストライクからボールになるツーシーム、そして同じくストライクからボールになるフォークボールが決まり、キューバ打線は自分のスイングをさせてもらえなかった。強打を誇る彼らたちが、何度かセーフティバントを試みたのは苦戦の表れだった。

「主軸バッターの前にランナーを出さないことを意識している」。岩隈は以前、こうも語っていた。この日はそれも実践できた。3回を除いては毎回走者を背負う内容ながら、ヒットや四球を許したのは、すべて2死から。傷口を広げられる前に、3つ目のアウトを奪うことができた。

 昨夏は抜群の好成績を収めながら、北京五輪代表から外された。4年前のアテネ五輪での不安定な投球が影響したとも言われた。「最初に代表メンバーを聞いた時は一瞬“何かの間違いかな”と思いました」。しかし、五輪に選ばれなかった分、個人タイトルで獲れるものは全部獲ろうと気持ちを切り換えた。沢村賞をはじめとする主要タイトルの大半を獲得して、今回は文句なしの代表入り。ところが満を持して登板した9日の韓国戦、6回途中を1失点の好投ながら敗戦投手になった。悔しさを胸に秘め、絶対に落とせない一戦での快投。松坂大輔、ダルビッシュ有と並ぶ日本の大黒柱に白星がついた。

「外国人バッターに対して苦手意識はあまりありません。外国人は大振りしてくるので、ボール球を降らせれば打ち取れる」。岩隈はそうも言っている。次に登板機会が巡ってくるとすれば24日の決勝戦。最高の舞台でもう一度、背番号20が投げる姿を見てみたい。

 4強入りを果たした日本は2次ラウンドの1位通過をかけて、20日に韓国と4度目の対決を行う。先発は日本が内海哲也、韓国は張ウォン三と発表された。この一戦の位置づけは難しい。なぜなら、2次ラウンドまで約1週間の間があった1次ラウンド最終戦と違い、中1〜2日で大事な準決勝が待っているからだ。

 20日の試合で50球以上投げてしまえば登板間隔の規定により、もう決勝では投げられない。かといって、少ない球数で継投すれば、それだけリリーフ陣に疲労がたまる。内海は今大会初登板、張もゴールド負けした日本戦の敗戦処理で投げただけだ。この起用をみる限り、両チームとも控え投手を使って主力を温存したい構えに映る。これでは、曲がりなりにも「真の世界一を決める国際大会」が消化試合になりかねない。同じ国と何度も対戦が続く点も含め、今大会のシステムの欠陥が出たと言えるだろう。

 日本は勝てば1位通過となり、23日に米国と対戦。敗れれば22日にベネズエラとの顔合わせとなる。どちらも強敵であることは間違いないが、現時点では米国のほうが投打のバランスがとれていない。韓国に3連敗ではチームの雰囲気も悪くなる。キューバ戦とは異なり、絶対に負けられない戦いではない。だが、勝っておきたい戦いではある。

○岩隈(先発で6回5安打無失点)
 プレッシャーは感じていた。負けたら終わりということで、ひとりひとり丁寧に投げることを心がけた。低めをうまく突いて、粘り強いピッチングができた。自分のピッチングができて満足している。これで(準決勝の地)ロサンゼルスに行ける。世界一をとりたい。

○青木(5打数4安打と大当たり)
 何が何でも勝つことしか頭になかった。それを積極的にプレーで出せたことが良かった。韓国には負けたくないが、あくまでも目標は世界一になること。昨日は負けたが、「明日勝てば決勝トーナメントに行ける」と思っていた。
(4安打の要因は)技術的なことより気持ち。「何とかしてやろう」「絶対に打つ」と強い気持ちで試合に臨んだ。相手投手はよかったが、情報もしっかり入っていたので準備して打席に入れた。

【今後の日程】 ※日時は日本時間
ゲーム6 韓国日本 20日(金)10:00


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15/18の真実
 キューバを2試合連続の完封リレーで下したサムライジャパン。セミファイナル進出の立役者は6回までを投げ切った先発の岩隈久志(東北楽天)だ。
 注目すべきデータがある。18のアウトのうち、実に15が内野ゴロなのだ。いかに低めに根気よく投げていたかという証拠だ。

 キューバの事実上の最高指導者は今でもフィデル・カストロだ。若い頃、メジャーリーガーを目指したこともあるというカストロは衛星放送でくまなくメジャーリーグの試合をチェックしていると言われるほどの野球好きだ。
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(石田洋之)