福田政権が「官の代弁者」であることは、政権発生後7カ月の施政を見ていれば明らかである。小泉政権下での構造改革は明らかに後退し、この国は「社会主義国家」の様相を呈し始めている。
 規制緩和から規制強化へ――。復権を狙う霞ヶ関が錦の御旗に掲げるのが「消費者保護」である。その内実はどうか。
 たとえば耐震強度偽装の再発防止のための「改正建築基準法」。基準をいきなり強化したため、新築着工は落ち込み、中小の建設、建材、住宅設備会社の倒産が相次いだ。さしずめ、これなどは「行政不況」の典型だろう。著者は喝破する。<改正建築基準法も、もとをただせば「現場を知らない官僚と学者による規制づくり」の産物なのだ>。
 続いて「改正貸金業法」。グレーゾーン金利を廃止し、上限金利を引き下げたことで現場では何か起きているのか。貸金業者は激減し、生き残った業者も貸し倒れリスクを低くするため融資審査の厳格化に乗り出した。
 その結果、融資を受けられない顧客はヤミ金に流れるという悪循環。規制を強化すれば、どこかにシワ寄せが出る。それの手当てが十分だったとはとても言い難い。官民必読の好著。「行政不況」 (中森 貴和 著・宝島社新書・648円)

 2冊目は「スポーツの素朴な大疑問」(日本博学倶楽部 著・PHP文庫・476円)。チベット問題に対する中国政府の対応を巡り、世界各都市で北京五輪聖火リレーへの抗議行動が活発化している。過去において聖火リレーを最大限、利用した政治指導者とは?

 3冊目は「GIの勝ち方」(藤沢 和雄 著・小学館・800円)。 シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ、ダンスインザムード…。数々の名馬を育ててきた現役ナンバーワン調教師が語る「強い馬」の法則とは。108の金言を胸に刻みたい。

<この原稿は2008年4月16日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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