WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)連覇の興奮冷めやらぬ4月3日、プロ野球はセ・パ両リーグが同時開幕する。昨季は前年5位の埼玉西武が制したパ・リーグ。各球団の戦力差は小さく、今季もどこが勝ってもおかしくない。果たして144試合の長いペナントレースを勝ち抜くのはどのチームか? そしてクライマックス・シリーズに進出するのは? 当HP編集長の二宮清純は昨季最下位の福岡ソフトバンクが1位、そして同5位の東北楽天が3位に入り、下克上が起きると予想した。
(写真:今年も新監督の年になるか? ソフトバンク・秋山監督)
★二宮清純予想★

1.福岡ソフトバンク
2.千葉ロッテ
3.東北楽天
4.埼玉西武
5.北海道日本ハム
6.オリックス

 6球団に力の差はない。混戦が予想される。その中で、あえて1位に推すなら福岡ソフトバンクだろう。もともと投打のコマは揃っており、実力を発揮すれば優勝しても不思議ではない。昨季の西武が5位から躍進したように、最下位に沈んだ屈辱をバネにチーム一丸で戦ってくるはずだ。長年の課題だった捕手の城島健司(マリナーズ)が抜けた穴も高谷裕亮、ルーキーの堂上隼人といい選手が出てきた。特に堂上はアイランドリーグ時代から、リード、キャッチング、打撃ともに1軍クラス。彼が定着するようになれば大きい。

 2位の千葉ロッテはWBCの代表に選ばれなかった西岡剛、里崎智也が例年以上の意気込みをみせている。WBCの代表に選出されたのは渡辺俊介ひとりで、主力選手が“燃え尽き症候群”になる心配もない。何よりボビー・バレンタイン監督の今季限りでの退団が決まっている。フィナーレ効果でチームがまとまるのではないか。

 同じ理由で順位を上げそうなのは楽天だ。野村克也監督にとっては、24年にもわたる指揮官生活の集大成の1年となる。あらゆる経験を総動員して、勝ちにこだわる采配を見せてくれるはずだ。投手陣ではWBCでも活躍した岩隈久志、田中将大の両輪が充実している。野手も中村紀洋の加入は心強い。

 西武は優勝で選手たちが自信をつけた。地力はある。ただ、昨年はノーマークでの日本一だった。打倒・西武で他球団が臨む中、昨季のように勝ち星を積み重ねられるか。中島裕之、片岡易之ら主力にWBC疲れが出ないかも不安だ。

 日本ハムも侮れない存在だ。ただ、昨年と同様、打線に迫力がない。投手陣で確実に勝ちを計算できるのはダルビッシュ有くらい。昨季も北京五輪中に負けが込んだように、柱となる存在が抜けた際に選手層の薄さが目につく。

 オリックスも選手個々の力はある。ホセ・フェルナンデスが加わり、外国人4人が揃った打線は脅威だ。しかし、チームとしてのまとまりを考えると、彼らの存在は諸刃の剣となる。小松聖ら2ケタ勝利が4人も出た投手陣の“2年目のジンクス”も気がかりだ。

★スポーツコミュニケーションズ予想★

1.オリックス
2.千葉ロッテ
3.埼玉西武
4.福岡ソフトバンク
5.東北楽天
6.北海道日本ハム

 投打のバランスを考えれば、オリックスの充実ぶりが目立つ。昨季は小松聖、山本省吾、近藤一樹、金子千尋と10勝投手が4人も誕生した。彼ら全員に昨年以上の成績を期待するのは酷かもしれないが、故障で1年を棒に振った平野佳寿が復帰するなど、先発のコマは豊富だ。抑えには加藤大輔が控えており、一気に投手王国の様相を呈してきた。

 攻撃陣もグレッグ・ラロッカ、タフィ・ローズ、アレックス・カブレラ、ホセ・フェルナンデスが並ぶ通算1014発カルテットの破壊力は12球団随一。一方で坂口智隆、後藤光尊といった足の使える選手をスタメンに入れ、機動力も駆使できる。唯一の不安は外国人を入れた際の守備力か。

 ロッテの投手陣もいい。清水直行、渡辺俊介、小林宏之の3本柱に、唐川侑己、大嶺祐太ら若手も伸びてきた。昨季は小林雅英(インディアンス)らの抜けた影響でブルペンが試行錯誤だったが、クローザーに荻野忠寛が定着して役割分担は明確になった。

 打線ではメジャー帰りの井口資仁の加入が大きい。彼が4番に座り、軸ができた。若き大砲・大松尚逸も年々、力をつけており期待できる。今季限りのボビー・バレンタイン監督は就任以降、猫の目打線でさまざまな選手を使い分けてきた。主力と控えに大きな差がない点は他球団にない強みだ。昨季は76盗塁(リーグ5位)と機動力が使えなかった。上位を打つ西岡剛が盗塁を昨季(18個)の倍に伸ばせば、攻撃力は増すはずだ。

 前年、アジア一にもなった埼玉西武は投手陣に不安がある。36歳の西口文也、35歳の石井一久のベテラン先発陣に多くを望むのは厳しい。昨季10勝止まりだったエースの涌井秀章、日本シリーズMVPの岸孝之が昨年以上の成績を残すことが連覇への第一条件だ。

 ただ、このチームには昨季107盗塁とリーグトップの機動力がある。WBCでも活躍したトップバッターの片岡易之、3番の中島裕之に不安はない。グレイグ・ブラゼルが退団した穴を感じさせないつながりのある打線が組めている。悪くても優勝争いには加わってくるだろう。

 昨季、最下位に終わったソフトバンクにはもともと戦力がある。オフに手術を受けた大隣憲司、新垣渚も開幕に間に合ったのは大きい。昨季はオープン戦で抑えの馬原孝浩が離脱し、すべての計算が狂った。今年は馬原も万全で、リリーフ陣にも新人の摂津正が加わった。多村仁が故障で開幕に間に合わないなど、相変わらずケガ人が出ているが、離脱者を出さなければ優勝だって不可能ではない。

 WBCで日本の柱として活躍したダルビッシュ有、岩隈久志をそれぞれエースに持つ日本ハムと東北楽天は上位進出の計算が立てづらい。共通の課題は終盤の救援陣。日本ハムはマイケル中村が巨人に移籍し、武田久が新守護神となる。これまで武田が務めていたセットアッパーが誰になるかがポイントになる。

 楽天は野村克也監督が川岸強を新クローザーに指名したが、完全に固まったとは言いがたい。打線は中村紀洋の加入で厚みを増した。攻撃力ならオリックスや西武にも負けないだろう。野村監督の投手起用がうまくはまればAクラスが見えてくる。

 昨年はこのトピックスで、1位・ソフトバンク、5位・西武、6位・オリックスと予想した。結果はほとんど逆になった。今年も考えれば考えるほど、何通りもの順位が浮かんだ。予防線を張るわけではないが、それだけパ・リーグは各球団の力が拮抗している。いずれにしても最後まで目の離せないペナントレースになることだけは間違いない。

★パ・リーグ開幕カード★ ( )内は先発予想

・北海道日本ハム(ダルビッシュ有)×東北楽天(岩隈久志) 札幌ドーム 18時
・千葉ロッテ(清水直行)×埼玉西武(涌井秀章) 千葉マリン 18時30分
・福岡ソフトバンク(和田毅)×オリックス(小松聖) ヤフードーム 18時