1日、都内ホテルでK-1ファイターの魔裟斗(シルバーウルフ)が会見し、現役を退くことを発表した。「今年7月と12月の試合をもって引退することにしました」と自らの言葉で説明、大晦日のDynamiteがラストマッチとなることを明かした。会見には谷川貞治イベントプロデューサーも同席し、「世界王者として引退したいという魔裟斗選手の気持ちを尊重したい。慰留することはなかった」と第一人者の引退について語った。
(写真:笑顔を交えながら引退会見を行った魔裟斗)
 昨年10月に行われたK-1 WORLD MAX 2008で03年以来の優勝を遂げ、復活をアピールしたばかりの魔裟斗。そんな中での引退発表なだけに、関係者からは早い引退を惜しむ声も上がっていた。

「スポーツ選手の引退には3つのパターンがある。1つは早い時に負けてスパっと足を洗う人。2つ目は負けてもスポーツが好きで長く現役を全うする人。そして強い時に辞める人。僕は3つ目を選びました」「(ファンが)もっと見たいと思われる、強い時に辞めたいと考えていた」と口にした魔裟斗。そう語る表情には悲壮感は全くなかった。

 谷川プロデューサーも魔裟斗の気持ちを理解した上で「昨年のWORLD MAXでは5年ぶりの優勝を果たした。特に最後の2試合(対佐藤嘉洋戦、対アルトゥール・キシェンコ戦)は激しい試合だった。プロデューサーとして、あれ以上激しい試合を組むことはできない」と語り、引退に同意した理由を明かした。
(写真:会見に臨む魔裟斗(左)と谷川プロデューサー)

 気になる残り2試合の対戦相手について、7月13日の試合は「みなさんが観たいと思う相手と対戦したい。もちろん総合の選手でも構わない」とコメント。12月31日のDynamiteでは今年のWORLD MAXの優勝者と対戦することが明かされた。「最後は自分の好きな相手と戦わせてもらいたい。自分は今が一番強いと思っている。今年のチャンピオンならば最高の対戦相手。可能ならば3分5Rか7Rでやりたい。必ずKOできる試合をしたい」「もちろんチャンピオンとやるのだから、強敵と戦うことになる。最後の試合で一番強い自身があるし、一番魅せられると思う。自分はカッコつけマンだから、格好つけて辞めたいと思っています」と時おり表情を崩しながら最後の試合について語った。

 また4月21日に福岡マリンメッセで行われるK-1 WORLD MAX FINAL16では高校生ファイターHIROYA(フリー)と3分間のエキシビジョンマッチが組まれる。「これからのK-1を引っ張っていくであろう彼に、リング上で何かを伝えることができればいい」と次世代のスターとのスパーリングの意義を口にした。

 魔裟斗の格闘技人生は15歳でヨネクラジムの門をくぐった時から始まる。キックボクシングスタイルで頭角を現し、K−1草創期から中量級の日本人エースとして、常に格闘技界の話題をさらってきた。03年には念願のK-1 WORLD MAXで優勝を果たし世界王者の座に就いた。04年Dynamiteでは総合格闘技の山本“KID”徳郁と対戦し勝利を収める。これまでの戦績は38戦34勝4敗(14KO)。08年10月のK-1 WORLD MAXでは5年ぶりの優勝を飾っており、魔裟斗の言葉通り「今が一番強い時」なのかもしれない。

 魔裟斗は引退後について「何も考えていない」と口にした。続けて「とにかく残り2試合を最高のものにしたい」と力強く答えた。“K-1=魔裟斗”と言っていいほど、存在感を放ってきた格闘家のラストファイトは見逃せないものになるだろう。