17日、南アフリカW杯アジア最終予選最終戦が行われ、日本代表は敵地でオーストラリア代表と対戦した。A組首位通過を狙う日本は、前半40分に左コーナーキックからのボールに田中マルクス闘莉王(浦和)がヘディングで合わせ先制点を奪う。後半開始からはホームのオーストラリアが反撃し、後半13分にティム・ケーヒルのゴールで追いつかれる。さらには後半30分、コーナーキックからゴール前へ飛び込んだケーヒルに逆転ゴールを奪われた。日本はその後、サイド攻撃を中心に反撃を試みるが同点ゴールは生まれず、2−1で試合終了。日本はオーストラリアに勝ち点5差をつけられ、Aグループ2位でアジア最終予選を終えた。

 ドイツW杯の再現許す(メルボルン)
日本代表 1−2 オーストラリア代表
【得点】
[日] 田中マルクス闘莉王(40分)
[オ] ティム・ケーヒル(58分、75分)
 アジア予選最終戦を迎えた岡田JAPANは首位・オーストラリアとの一戦でグループ1位通過を目指した。現地で体調を崩した中澤佑二(横浜FM)に代わり阿部勇樹(浦和)がDFラインに入り、海外組と遠藤保仁(G大阪)が不在の中盤には、松井大輔(サンテティエンヌ)、橋本英郎(G大阪)、今野泰幸らが先発に名を連ねた。

 試合開始から一進一退の攻防が続き、最初にチャンスを迎えたのはオーストラリアだった。前半6分、センターバックからの縦パスを、DFラインの裏に抜け出したケーヒルがうまくトラップしシュート。楢崎正剛(名古屋)が弾いたボールを、ミル・ステリョフスキーが左足で強烈なミドルを放つ。シュートはDFに当たりコーナーに逃れたが、試合開始早々、日本ベンチは肝を冷やした。

 しかし、ホームの大声援を浴びながら戦ったオーストラリア代表は、前半45分では攻めの形を作ることができなかった。日本はサイドからの攻撃を許さず、ワントップに入った身長194cmのジョシュア・ケネディに決定的な仕事をさせなかった。

 一方の岡田JAPANは細かいパスを繋ぎながら、両サイドから攻撃を組み立てる。前半8分には中村憲剛(川崎F)から右サイドに開き、パスを受けた橋本がクロスを上げる。ここでは、オーストラリアゴール前には左SBの長友佑都(F東京)を含む3人が上がっていた。しっかりとしたポゼッションから攻撃の形を作る、このスタイルは機能しいくつかのチャンスが生まれた。しかし、相手は平均身長で日本を大きく上回るオーストラリア代表。時間をかけた攻撃からのクロスでは、局面を打開することは叶わず決定的な場面を作るまでには至らなかった。

 それでも20分過ぎには、立て続けに長友が突破を試み、コーナーキックのチャンスを演出した。日本が先制点を挙げたのは前半40分だった。長友が得たCKを中村憲が入れる。ゴール正面に後ろから飛び込んできたのは闘莉王だ。プレミアリーグでも活躍するルーカス・ニールに競り勝ち、叩きつけられたボールはオーストラリアゴールに突き刺さる。今回の最終予選で初めてオーストラリアのゴールをこじ開け、日本がアウェーで貴重な先制点を獲得した。日本にとってこのシュートが2本目、まさにワンチャンスをものにしてのゴールだった。前半はこのまま終了し、日本が1点リードで試合を折り返した。

 エンドが変わった後半、立ち上がりから仕掛けたのは先制を許したオーストラリアだった。長身のケネディのすぐ近くにケーヒルを配置し、縦パス1本で局面打開を図る。日本も闘莉王、阿部が体を張ったDFを見せるが、ケーヒルの鋭い出足に次第に守備が遅れ気味になっていく。前半は抑えこんでいたサイドからの攻撃も徐々に威力を増し、ゴール前でDFがクギづけになるシーンが目立ち始めた。

 同点ゴールが生まれたのは後半13分のFKの場面。右サイドから高いボールがゴール前に上がる。ケネディと闘莉王が競り合ったところに、後ろから走りこんできたのはケーヒルだった。闘莉王に競り勝ち高い打点からヘディングシュートを放つ。楢崎はなすすべなくシュートを見送り、ボールはゴール左ネットを揺らした。ケーヒルといえば06年ドイツW杯で日本から2ゴールを奪った因縁のある選手。3年前の再現を見るかのようなシーンで日本は追いつかれた。

 7万人の大声援に後押しされたオーストラリアは攻撃の手を緩めず、さらに日本ゴールへと襲い掛かる。ケネディとケーヒルが果敢にボールを受け、前線で起点を作りながらチーム全体を押し上げる。日本は必死にクリアするものの、セカンドボールを拾うことができず防戦一方。逆転を許すのは時間の問題のように思われた。

 その瞬間は後半30分にやってきた。左サイドからのコーナーキック。ゴール前へ詰めてきたのはまたもケーヒルだった。マークについていた阿部を弾き飛ばす力強い動きからシュートを押し込み逆転に成功。満員のサポーターからはスタジアムが割れんばかりの大声援が上がった。日本はセットプレーからの2失点。流れの中で完全に崩されるシーンは生まれなかっただけに、悔やまれる2失点となった。

 反撃に出たい日本は、前半同様、両サイドバックのオーバーラップから活路を見出そうとした。しかし、両SBが上がってもタイミングのよいパスが足元に送られてこなかった。これまで岡田JAPANの中盤をコントロールしてきた遠藤不在の影響がこれらの場面にはよく現れていた。遠藤と長谷部に代わって中盤に入った橋本と今野は、守備面では貢献していたものの、攻撃を組み立てるまでには至らなかった。特に橋本はカタール戦に続きボールを落ち着けることができず、中盤の潤滑油とはならなかった。パスの出所が定まらない日本は徐々に攻撃の機会を減らしていった。

 パワープレーに出たい岡田武史監督は後半22分に松井に代えて矢野貴章(新潟)を、38分には橋本に代えて興梠慎三(鹿島)を投入した。さらには闘莉王を上げ、前線の枚数を増やしたものの、ニールを中心としたオーストラリアDFを崩すことはできず、このまま試合終了。日本は首位攻防戦で逆転負けを喫し、グループ2位で南アフリカへ駒を進めることとなった。

 試合後、岡田監督は「残念だった。選手たちはよくやっているが、セットプレーの高さに対応できなかった」と豪州戦を振り返った。「DFを破られたシーンはなかった。攻撃ではもう少しボールを回せると思っていたが、相手がボールを持つ時間が長かった」と守備面での収穫と攻撃面での反省を口にした。

 先制ゴールを挙げた闘莉王は「いい試合をしていたのに、セットプレーで2点を取られたのは悔しい。僕らの方がチャンスを作っていた。世界と戦うためには決まられる時に100%決めないと後で痛い目に遭う。がんばっている中で試合をものにできなかったのは心残り」と、好機を逃がし、得点を決め切れなかったことを敗因に挙げた。

 この試合でアジア最終予選は全日程を終了し、日本は4勝1敗3分で勝ち点15。得点11、失点6で南アフリカへ乗り込むこととなった。「我々の目標はベスト4」と公言して止まない岡田監督だが、アジア予選で首位・オーストラリアにつけられた差は5ポイント差。この現実をしっかりと受け止める必要がある。本大会では、日本の入るグループにオーストラリア以上の実力を持つ国は最低でも2つは入る。それを考えれば、日本が今いる位置はグループリーグ最下位レベルと言えるだろう。この成績でW杯ベスト4を目標にすることはおかしい。

 南アフリカでの日本の目標は「決勝トーナメント進出」。これが現実的なラインだ。岡田JAPANには自分たちの立ち位置を理解した上で、身の丈相応の目線を持って1年間を過ごしてもらいたい。

 この敗戦は、今までの驕りを排除するにはいい薬だったかもしれない。あまり上を見過ぎていては、足元すらおぼつかなくなる。幸いアジア予選は他地区に比べ早い時期に実施されている。その分、本大会への準備期間を取れるアドバンテージがある。世界を驚かせるためには、地道に着実に、一歩ずつ前進していくこと。方法はそれしかない。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
田中マルクス闘莉王
阿部勇樹
内田篤人
長友佑都
MF
今野泰幸
橋本英郎
→興梠慎三(84分)
松井大輔
→矢野貴章(67分)
中村憲剛
FW
岡崎慎司
玉田圭司