17日からイタリア・ローマで水泳世界選手権が開催されている。シンクロナイズドスイミング、飛び込み、水球など様々な競技で世界一が決定するが、注目の競泳種目が26日から始まる。北京五輪から1年を経て、ロンドン五輪を見据える各選手の戦いぶりに注目が集まる。
 日本人選手の中で、最も注目が集まっているのは50m、100m、200m背泳ぎに出場する入江陵介(近畿大)だ。北京五輪では5位に終わったものの、その後も疲れを見せることなく確実なパワーアップを遂げてきた。今年4月に行なわれた日本選手権では200mでライアン・ロクテの持つ世界記録に0秒08迫る1分54秒02で優勝。50m、100mとあわせ3種目での世界選手権行きの切符を手にした。

 そして5月の日豪対抗200mでは従来の世界記録を1秒以上更新する1分52秒86を記録する。しかし、この時に着用した水着が国際水泳連盟から認可が下りず、幻の世界記録に終わってしまった。ただ、このニュースは多くのメディアをにぎわせたため、記録が幻となったことで入江には多くの視線が注がれることとなった。

 多くの重圧を感じながらも、6月のジャパンオープンでも自己ベストに近いタイムを出し好調を維持している。世界各国のコーチからも絶賛される美しいフォームを武器に世界の舞台での飛躍を期待したい。入江自身は「メダル獲得が目標」と口にしているが、北島康介が出場しない今大会でロンドン五輪のエースとしての地位を確固たるものにするためにも、世界の頂点を狙う姿勢をみせてほしい。

 入江の強力なライバルとなるのは、アーロン・ピアソル(米国)だ。北京五輪100m金メダル、200m銀メダルの絶対王者は、世界選手権選考会で100m、200mともに世界新記録を樹立したばかり。絶好調でローマに乗り込んでいる。

 そのピアソルにしても、入江の“幻の世界記録”には及ばない。一度は認可が下りなかった水着も改良を重ね、国際水連からお墨付きを得ている。21歳の若武者が王者を追いつめることができるか? 3年後のロンドンに向けても目の離せない一戦となりそうだ。

 入江のライバルは国内にもいる。日本選手権で50m、100mで入江を抑え優勝した古賀淳也(早稲田大)だ。もともと50mでは力を発揮してきたが、距離の壁を越えて100mでも結果を出してきている。日本選手権でマークした52秒87は世界歴代3位の好記録だ。前回の世界選手権では50mで7位に入っており、それ以上の結果が期待される。100mでは入江とともにメダルを獲得しても何ら不思議なことはない。ライバルの存在がお互いの闘争本能を掻き立てることだろう。

 その他の日本人注目選手は北京で銅メダルを獲得している200mバタフライの松田丈志(レオパレス21)、充実著しい200m個人メドレーの高桑健らが表彰台を狙う。女子では北京五輪で決勝に進出している200m平泳ぎの金藤理絵(東海大)にメダルの期待がかかる。代表37名のうち、16名が世界選手権初出場というフレッシュな顔ぶれが揃った。ロンドンへのステップとして、飛躍のきっかけを掴む選手は現れるのか――。

 世界に目を向けると、北京五輪8冠のマイケル・フェルプス(米国)や男子100m自由形で幻の46秒台(水着不認可で記録には残らず)を叩き出したアラン・ベルナール(フランス)、北京五輪金メダリストで地元の期待を一身に背負うアイドルスイマー、フェデリカ・ペレグリーニ(イタリア)などが出場を予定している。日本選手の活躍だけでなく、世界のトップスイマーによる世界記録更新にも期待したい。