2019年ラグビーW杯の日本開催決定に成功した招致団が30日、国際ラグビーボード(IRB)理事会が開かれたアイルランドから帰国して都内で会見を開いた。招致委員長をつとめた日本ラグビー協会の真下昇専務理事は「IRBが自分たちの宗主国以外で(W杯開催を)決めたのは勇断。我々はしっかりと成し遂げて、お返しするのが責務と思っている」と大会成功に向けた決意を示した。
(写真:開催決定を改めて喜ぶラグビー協会・森会長(右)、真下専務理事)
「2019年は10年先というのでは決してない。10年もあるではなく、10年しかない。だから、どうしていくのか。早急に建設的なプロジェクトチームをしっかりとつくってゴールに向かわなくてはいけない」
 真下専務理事は会見中、「10年しかない」という言葉を何度も口にした。ラグビーW杯は世界的には五輪、サッカーW杯に次ぐビッグスポーツイベント。組織委員会をはじめとする体制づくりはもちろん、大会の盛り上げには日本代表のレベルアップが不可欠だ。

 これまで日本は第1回大会から6回連続でW杯に出場しているとはいえ、わずか1勝(18敗1分)しかあげていない。過去6大会でホスト国が予選で敗退したケースは皆無だ。真下専務理事は「この10年の中で人を育てるのが一番大変。大会を運営する組織も大事だが、チームが決勝トーナメントに進むのが一番ハッピー。そのことによって(集客など)他の部分が潤ってくる」と語る。

 協会はこれまでも若年層を含めた育成プログラムに取り組んでいたものの、6月に地元で開催されたU-20世界選手権では、日本は16チーム中15位の惨敗だった。「それ(育成プログラム)が機能しているのかは疑問」と真下専務理事も見直しの必要性を認めている。加えて日本のスポーツ界は中学、高校、大学、社会人とそれぞれの段階で縛りや壁があり、一貫した指導が難しい。

 協会は2019年に向けた強化策として、エリート教育をさらに推し進める意向だ。優秀な選手を海外の強豪国に送り込んで、ラグビー留学させるプランもある。真下専務理事は「ラグビーをやっている人間だけが対象ではない。他の競技からタレントを発掘して売り込んでいかなくてはいけない」と、全国から金の卵を探しだす普及活動も並行することを表明した。
(写真:「オーストラリアやオセアニア勢に並ぶ力をつけたい」と意気込む真下専務理事)

 また「Tender for Asia(アジアのための招致)」を掲げて計画案に盛り込まれたシンガポールでの試合開催は、移動距離や気候面で難色を示され、「一時フリーズ」を宣言。国内の開催地でも秩父宮ラグビー競技場などは収容人員が足りない(現状は25,000人)ため、大規模な改修が求められる。16年の東京五輪・パラリンピックの招致、18、22年のサッカーW杯誘致の結果次第で、日本のスタジアムを取り巻く環境は大きく変わる可能性があり、まだ流動的な要素も多い。大会実施に向けて「宿題はいっぱいある」(真下専務理事)のは事実だ。

「決まるまでは“決めてくれ”と願っていたが、決まった瞬間は“これは大変だぞ”と責任を感じた」
 ラグビー協会の森喜朗会長は本音を明かした。ヨーロッパや南半球の強豪国と比べて、競技熱がさほど高くない日本で大会は果たして成功するのか。世界のラグビー関係者は注視している。残された時間は10年。日本にとって長い戦いが今、キックオフされた。