オランダのロッテルダムで開かれている世界柔道選手権は28日、3日目を迎え、女子63キロ級の上野順恵(三井住友海上)が決勝でエリサベト・ベレブールトセ(オランダ)に一本勝ちし、初優勝した。上野の姉は女子70キロ級でアテネ、北京両五輪を制した雅恵。今回は五輪、世界選手権を通じて初の代表入りで最高の成績を残した。日本女子にとっては開幕から3日連続の金メダル獲得となる。
 女王の陰、そして姉の陰に隠れていた選手にようやくスポットライトが当たった。この階級の第1人者は言わずと知れた谷本歩美。アテネ、北京と2大会連続で五輪を連覇した。だが、上野は決して女王に劣っていたわけではない。現に2005年の世界選手権、さらには昨年の北京五輪の選考会と直接対決で谷本を下した。ただ、実績や技の切れで評価が低く、大舞台に立てなかった。

 迎えた今年4月、上野は全日本選抜体重別選手権で谷本を延長の末、大外刈りで撃破。念願の世界選手権への切符を手にする。そして、世界の畳で炸裂したのが、女王を沈めた大外刈りだった。3回戦、準々決勝と鮮やかな大外刈りで一本勝ち。準決勝は力技が得意なベラ・コワル(ロシア)相手にまず大外刈りで有効を奪う。さらに同じ技で技ありを得ると、そのまま寝技に持ち込み、合わせ技一本を決めた。

 北京五輪銅メダリストのベレブールトセとの対決となった決勝も、必殺技の威力は増すばかり。わずか開始1分で相手の足を刈って横向きに倒すと、すかさず押さえ込みに入る。優勝を確信したのか、少し笑顔もみせながら20秒が経過し、勝利のブザーを聞いた。上野は課題とされていた技の切れに磨きがかかり、オール一本で世界を圧倒した。谷本vs.上野――ハイレベルなライバル対決は今後、さらにヒートアップするに違いない。

 なお、男子81キロ級の塘内将彦(旭化成)は3回戦で相手の圧力に屈し、小外刈りで一本負け。好調な女子とは対照的に男子は未だメダルが1つ(60キロ級・平岡拓晃の銀)のみだ。