14日、キリンチャレンジカップ2009が宮城スタジアムで行なわれ、日本代表はトーゴ代表と対戦した。中村俊輔(セルティック)、森本貴幸(カターニャ)らが先発した日本は前半5分、左サイドからの崩しに中央で合わせた岡崎慎司(清水)のゴールで先制する。さらにその3分後にも、右サイドからの低いクロスを岡崎がヒールキックで流し込み2点目を挙げる。11分には森本代表初ゴールが生まれ、前半だけで3点を奪った。後半にも岡崎がゴールを挙げハットトリックを達成するなど2点を追加する。守備陣もトーゴに崩される場面を作らず零封し、5−0の大勝でホーム3連戦を全勝で締めくくった。

 サイド攻撃が得点に結びつく(宮城ス)
日本代表 5−0 トーゴ代表
【得点】
[日] 岡崎慎司(5分、8分、65分)、森本貴幸(11分)、本田圭佑(85分)
 代表3連戦の締めくくりとなるトーゴとの一戦に臨んだ日本代表。トーゴ代表は試合直前になって主力選手であるエマニュエル・アデバイヨル(マンチェスター・シティ)ら8名の選手が来日をキャンセルし、たった14名のメンバーで日本へやってきた。明らかにモチベーションの低い相手に対し、岡田武史監督は招集メンバーから現時点でベストと言える陣容で試合に臨んだ。

 両サイドバックには長友佑都、徳永悠平というFC東京コンビが先発し、中盤には中村俊のほかに中村憲剛(川崎F)、遠藤保仁(G大阪)、長谷部誠というメンバー。注目の2トップには香港戦でハットトリックの岡崎慎司(清水)、スコットランド戦で2得点に絡んだ森本が起用された。

 試合は立ち上がりから日本ペースとなる。試合前からサイド攻撃に主眼を置いていた岡田JAPANだが、この日の5ゴールはすべてサイドから生まれた。

 先制点は前半5分。相手カウンターをハーフウェイライン付近でカットし、左サイドに開いた遠藤からクロスが入る。これをニアサイドに走りこんだ森本がDFを背負いながらスルー。そこへあわせたのは岡崎だ。8日の香港戦でハットトリックを決めたストライカーが今日も早い時間帯で得点を挙げる。

 前半8分には右サイドに開いた中村憲の低い折り返しに、ニアサイドで合わせた岡崎が右足ヒールでゴールへ流し込んだ。確実に結果を出し続け、完全にFWの定位置を掴んだ感のある岡崎。長い年月、決定力不足が叫ばれていた日本にとって、待望の点取り屋が出現したといっていい。

 この日、代表初スタメンを飾った森本も岡崎に負けじとゴールを奪う。前半11分、左サイドを駆け上がった長友のクロスをゴール前で受けると、一旦はDFがボールに詰め寄るも体の強さをいかして反転し、鋭く右足を振りぬく。ボールはゴール左隅に吸い込まれ、Aマッチ初得点を記録した。得点シーン以外でもしっかりとポストプレーで攻撃の起点となった森本。トーゴイレブンのコンディションが悪かったことを差し引いても、森本の体幹の強さは国際舞台でも十分に通用する。彼が代表の新しい武器になることは間違いない。

 後半開始から徳永に代わり内田篤人(鹿島)、遠藤に代わり本田圭佑(VVVフェンロ)、森本に代わり大久保嘉人(神戸)がピッチに入る。中盤は中村憲がボランチに下がり、両サイドに大久保、本田へ、トップ下に中村俊が入る形となった。

 前半同様、積極的に攻める姿勢を見せた日本は、本田や中村憲がミドルレンジから強烈なシュートを狙う。ほとんど攻めの形を作ることができない相手を尻目に、攻撃の手を緩めることはなかった。

 20分には長谷部誠(ヴォルフスブルク)のクロスを岡崎が頭で合わせハットトリックを達成。40分には右サイドからのクロスを大久保がゴール前でシュート。GKが弾いたところにつめた本田が2試合連続ゴールを決め、合計5ゴールを挙げた。

 各選手の意識は、以前よりも自分の個性を前面に押し出す姿勢に変わっている。これまではチームの決まりごとを淡々とこなす動きが見られていたが、オランダ遠征以後、選手の長所が目立つようになってきた。長友の縦横無尽のオーバーラップや岡崎の前線での飛び出し、中村憲の強烈なミドルシュート、そして森本のゴール前での強さ。後半途中からピッチに上がった石川直宏(F東京)は果敢にドリブルを仕掛けゴールを演出した。岡田監督は今回の強化試合3連戦に臨むにあたって「それぞれの状況に応じたプレーのできる選手を探す」ことを目標に掲げた。選手たちもその意を汲んで、しっかりとアピールしている。本大会まで残されたテストマッチが少ない中、選手間のサバイバルも日に日に厳しさを増している。

 ただ、今回の3連戦で相手となった香港、スコットランド、トーゴは明らかにモチベーションが低かった。もともと格下の香港や、主力選手をほとんど欠いていたスコットランドやトーゴのようなチームは、W杯本大会で対戦することはない。9月のオランダ戦のように本当の実力を持つ国と対峙した時、自分たちのサッカーができるかどうか。それこそが本大会での上位進出が叶うか否かの指標となる。

 キリンチャレンジカップが終了し、続く代表戦は11月の南アフリカとのアウェー戦。この試合はW杯前に欧州組が合流できる最後の試合になる見込みだ。岡田JAPANの真の実力を計るためには、11月の南アフリカ遠征が大きなカギを握る。本大会と同じ地でのテストマッチで3連戦のような圧勝劇が続くようならば、日本の決勝トーナメント進出に希望の光が差すかもしれない。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
徳永悠平
→内田篤人(46分)
長友佑都
MF
遠藤保仁
→本田圭佑(46分)
長谷部誠
中村憲剛
→今野泰幸(69分)
中村俊輔
→石川直宏(80分)
FW
岡崎慎司
→佐藤寿人(74分)
森本貴幸
→大久保嘉人(46分)