11月14日、18日は国際サッカー連盟(FIFA)のインターナショナルマッチデーにあたり、世界中で南アフリカW杯に向け各大陸でのプレーオフや親善試合が行われる。日本代表はW杯が行なわれる南アフリカに乗り込み同国代表と対戦する。本大会まであと7カ月。残り少ない時間の中、本番を占う上でも貴重なシミュレーションの試合となりそうだ。
 9月に行なったオランダ遠征でのオランダ、ガーナとの2連戦。そして10月の香港、スコットランド、トーゴとの3連戦。そして09年秋のインターナショナルデーの締めくくりとなる南アフリカ遠征が迫ってきた。もちろん対戦するのは南アフリカ。いわずと知れたW杯ホスト国だ。

 ただ、南アフリカは開催国としてかなり厳しい立場にある。6月に地元で行なわれたFIFAコンフェデレーションズカップでは準決勝に進出したものの、その後の国際親善試合では1勝5敗と全く成績を残せていない。唯一の勝利を挙げた相手はマダガスカル(FIFAランキング154位)と完全に格下の相手だ。過去のW杯ホスト国は全て決勝トーナメント進出を果たしている。このノルマを達成するためには、チームの建て直しが急務だ。

 そこで南アフリカは、成績不振を理由にジョエル・サンタナ監督は更迭し、07年1月から08年4月まで指揮を執っていたカルロス・アウベルト・パレイラを電撃的に代表監督へ復帰させた。パレイラといえば94年アメリカW杯で母国ブラジル代表を率いてワールドチャンピオンになった実績のある人物だ。世界王者に輝いた経験を持つ指揮官は、元気のない“バファナ・バファナ”(南アフリカ代表の愛称・男の子たちという意味)に再び活気を注入しようと試みている。

 さらに、パレイラの復帰で南アフリカにはベニ・マッカーシー(ブラックバーン)が還ってきた。03−04シーズン、ポルトに所属したマッカーシーはジョゼ・モウリーニョの下でUEFAチャンピオンズリーグ制覇に大きく貢献し、南アフリカサッカー史上最も成功を収めた選手だ。サンタナ監督が指揮を執っていた時期は素行の悪さから代表に呼ばれなかったが、大統領が復帰を望む声明を出すほどの国民的人気を誇る。マッカーシーにとって日本戦が復帰初戦となるだけに、ホームの大声援の中で、しっかりと結果を残したい。

 対する日本は遠征直前になってメンバーの変更を余儀なくされている。中盤の中村憲剛(川崎F)は右足を負傷し辞退、森本貴幸(カターニャ)はクラブの意向により代表招集が実現しなかった。また、新天地のスペインで苦戦している中村俊輔(エスパニョール)も直前までクラブに帯同するため、南アフリカ入りが試合の前日になる。欧州から南アフリカへの移動時間は長いため、コンディションが上がってくるかは疑問符がつく。

 ただ、アウェーに乗り込むとはいえ、FIFAランキング85位に沈む国に対し是が非でも勝っておきたい。場合によっては本大会でも対戦する可能性のあるチームだけに、しっかりと勝ち点3を計算できる試合運びをする必要がある。

 注目されるのは中盤での選手起用だ。前述のとおり中村(憲)が欠場し、中村(俊)も直前合流となれば、生き残りをかけた激しいポジション争いが繰り広げられる。本大会への当落線上にいる選手たちにとって、絶好のアピールチャンスとなるだろう。松井大輔(グルノーブル)、稲本潤一(レンヌ)らはこの試合での活躍はそのまま本大会への切符につながる。ここは結果を残したいところだ。

 日本代表にとって貴重な本番へのシミュレーションとなる今回の遠征だが、試合会場について二転三転した経緯がある。もともとこの試合は、ダーバンに新設されるワールドカップスタジアム(7万人収容)のこけら落としで行なわれる予定だったが、工事の大幅な遅れで完成が間に合わずヨハネスブルグのオーランドスタジアムで行なわれることになっていた。

 ところが、オーランドスタジアムはW杯で使用されるスタジアムではなく、日本はW杯開催予定のエリスパークスタジアムでの試合を希望した。この要望に対し、南アフリカはラグビーでも使用される同スタジアムは芝の荒れが激しいため使用できないと断りを入れていた。わざわざ南アフリカまで出向き、本大会を開催するスタジアムでの試合ができない事態。これではW杯へのシミュレーションとしては物足りない。

 しかし、今月に入り試合会場が急遽、ポートエリザベスに完成したネルソン・マンデラ・ベイスタジアムに変更となった。これで日本が希望していたワールドカップ使用スタジアムでの開催となったのだが、実はこの変更も日本にとって手離しで喜べるものではないのだ。

 ヨハネスブルグの標高は1750mであるのに対し、港町であるポートエリザベスは当然標高が低い。9都市で開催される南アフリカW杯のうち、標高1200m以上にあるのは5カ所。グループリーグだけでも3試合が行なわれるのだから、かなりの確率で高地での試合に臨むことになる。W杯使用スタジアムでの開催こそ手にしたものの、高地での力試しを行なうことは叶わなかった。これが本番で大きな影響にならなければいいのだが。

 欧州組も確実に招集できるインターナショナルマッチデーは、南アフリカ遠征と18日のアジアカップ予選香港戦を除くと、本大会前では来年の3月のみとなる。W杯までの期間でベストメンバーを組める機会は少ない。チームを完成形に仕上げていくためにも、W杯出場国と対戦する南アフリカ戦は大事な一戦となる。

(大山暁生)

<国際親善試合>
◇11月14日(土)
南アフリカ代表 × 日本代表
ネルソン・マンデラ・ベイスタジアム(南アフリカ・ポートエリザベス)

<アジアカップ予選Aグループ>
◇11月18日(水)
香港代表 × 日本代表
香港スタジアム