元日、第89回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝が東京・国立競技場で行なわれ、ガンバ大阪が名古屋グランパスを4−1で下した。前半を1−1で折り返し、後半32分に遠藤保仁がゴールを決め勝ち越しに成功する。さらに終了間際に2得点をあげ4−1で逃げ切り2年連続優勝を果たした。天皇杯連覇は05年、06年大会の浦和レッズ以来3年ぶり。リーグ戦3位のガンバが天皇杯を手中にしたため、リーグ戦4位のサンフレッチェ広島がアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を獲得した。

◇1月1日、国立
ガンバ大阪 4−1 名古屋グランパス
【得点】
[G大阪] ルーカス(6分)、遠藤保仁(77分、89分)、二川孝広(86分)
[名古屋] 中村直志(40分)
 立ち上がり6分に鮮やかなパス回しで先制したガンバだったが、大半の時間で試合を支配したのは名古屋だった。序盤からピッチを広く使ったサイド攻撃でガンバゴールに度々迫った。同点ゴールもサイド攻撃が起点だった。40分、左サイド玉田圭司からゴール前のジュシュア・ケネディへクロスが入る。ケネディが落としたところに走りこんだ中村直志がヘディングを押し込み1−1となった。

 後半に入ってもボールを持ち続けたのは名古屋。ドラガン・ストイコビッチ監督も試合後に「いいサッカーをしていた。それでも負けることがあるのが人生だ」と語ったように、名古屋が勝ち名乗りを受けてもなんら不思議のない試合だった。

 それでも優勝したのはガンバだった。後半32分、カウンターから右サイドでボールを受けた遠藤保仁がトラップすると同時に1人目のDFをかわし、内へ切り込みながら2人目も抜き去る。ゴール正面から左足で放ったミドルシュートは糸を引いたかのようにゴール右隅へ吸い込まれ勝ち越しに成功した。

 点を奪わなければいけない名古屋が前がかりになると、ガンバのカウンターはさらに勢いを増した。後半41分とロスタイムにも追加点をあげ、終わってみれば4−1の圧勝で天皇杯連覇を飾った。

 先述のとおり、ストイコビッチ監督は名古屋の試合運びに満足していた。しかし名古屋の武器であるケネディの高さはガンバにとって織り込み済みの脅威だった。「ケネディにボールが入れば競り合っても確実にボールはこぼれる。ラインを高く保つことで簡単にボールを入れさせないことを心がけた」と西野朗監督は試合後に語った。1点を奪われたものの、名古屋のストロングポイントへの対策を練っていたことで、チームに落ち着きと安定した守備をもたらした。

 チームを率いて来季で9年目に入る指揮官はチームの成熟度に自信を持っている。そしてボールを繋がれながらも全く慌てる素振りをみせなかったガンバイレブン。押し込まれた場面でも「先制点を取っていたので悪い流れではなかった」(遠藤)という意識を選手間で共有できる。これがガンバの強さの秘訣だ。

 決勝のピッチに立った選手の平均年齢は29.2歳。ベテラン選手の多くが高額年俸を理由にクラブを去ることが少なくない中、ガンバのサッカーはJリーグ屈指の完成度を誇っている。それでも「さらに個の力を磨いて精度を上げていきたい」と西野監督は満足する様子はない。2010年はW杯イヤー。その幕開けを飾る天皇杯決勝でガンバが披露した“大人のサッカー”は日本サッカー、代表チームにとって大きなヒントになるだろう。

 さらに代表のキーマンである遠藤が決勝ゴールを含む2ゴール1アシストの大活躍をしたことも大きい。「特別なことはしていないけど、結果として優勝できた。代表でもクラブでも充実した1年にしたい」と力強く語った遠藤。今年も彼のプレーから目が離せない一年になりそうだ。

(大山暁生)