4日、横綱・朝青龍(本名ドルゴルスレン・ダグワドルジ、高砂部屋)が現役引退を表明した。朝青龍は大相撲初場所中の1月16日未明、泥酔し、知人男性に暴行したとされる問題で、高砂親方(元大関・朝潮)とともに日本相撲協会の理事会に召喚されていた。
 モンゴル出身の朝青龍はモンゴル相撲で少年横綱となり、1997年に明徳義塾高校(高知)に留学。2年冬に中退をして若松部屋(現高砂部屋)に入門した。99年初場所初土俵を踏み、02年名古屋場所後に大関に昇進。翌年の初場所後、25場所という史上最速で第68代横綱に昇進した。史上初の7連覇を含み、幕内優勝は大鵬、千代の富士に次ぐ歴代3位の25回を誇る。

 しかし、土俵上でのひとり勝ちに比例するように、その振る舞いは次第に傍若無人ぶりを極めていった。度重なるトラブルでこれまで厳重注意を受けたのは5度。極めつけは2007年の2場所出場停止と4カ月の減俸処分で、名古屋場所後に夏巡業をケガで休場しながら、母国でサッカーをしていた。ただ、これまでの騒動は横綱としての品格を問われるものだったが、今回は他人に危害を加えており、性質が異なる。しかも、当初は自らのマネジャーへの暴行と問題を“矮小化”していた面があり、事態を重くみた協会は調査委員会を設置し、真相究明に乗り出していた。

 相撲協会では寄付行為施行細則に「譴責」「給与減額」「出場停止」「番付降下」「解雇」の罰則規定を設けている。ケガをした男性とは示談が成立しているものの、角界内では3年前に下した出場停止を超える処分を求める声が強かった。今回は重い罰を与える前に、自らに責任をとらせた格好だ。しかし、白鵬との二大横綱で土俵を盛り上げてきた男の引退は人気面で痛手となることも事実。なぜ、このような幕引きにいたるまで横綱の暴走を放置してしまったのか。“無作為の罪”を繰り返してきた師匠の高砂親方、そして協会の責任も同時に問われている。