6日から14日にかけ、味の素スタジアムと国立競技場でサッカー東アジア選手権2010決勝大会が行われる。参加するのは男子では日本、中国、香港、韓国、女子では日本、チャイニーズ・タイペイ、中国、韓国となっている。南アフリカW杯まで半年を切ったが、本大会前にタイトルのかかった真剣勝負の場はこの大会のみだ。中でも2年ぶりに行なわれる韓国戦に大きな注目が集まる。W杯出場国同士の対戦は、両者にとって負けられない戦いになりそうだ。
 東アジア選手権の前身は、1990年から98年にかけて行なわれていたダイナスティカップ。92年第2回大会ではハンス・オフト率いる日本が初優勝を果たし、翌年のJリーグ開幕やW杯米国大会予選における“ドーハの悲劇”といった一大サッカーブームの起点となった。03年に東アジア選手権に生まれ変わり、2年ごとに開催され今回の大会が4回目となる。日本代表は東アジア選手権へと大会フォーマットを変えてから優勝経験がなく、地元開催となる今大会は是が非でも優勝を果たしたいところだ。

 男女ともに、日本の活躍が期待されるが、特に男子日本代表は今大会の優勝は必須と言える。2日に大分で行なわれたキリンチャレンジカップ・ベネズエラ戦では全体的に動きが鈍く、無得点のまま試合を終えた。2月の親善試合はFIFAの定めるインターナショナルマッチデーに指定されておらず、海外組の招集がかなわなかった点を考慮しても、その戦いぶりは目を覆いたくなるようなものだった。前線で全く起点を作ることはできず、中盤で横パスをまわすのみ。相手ゴールを脅かすような場面は皆無に等しかった。2日の試合は久しぶりの実戦という言い訳もあるかもしれないが、6日からの東アジア選手権ではそのような理由付けもできない。岡田武史監督はじめ選手たちにとってまさに、負けられない大会となる。

 日本の日程は6日が中国戦(味スタ)、11日が香港戦(国立)、14日が韓国戦(国立)となっている。中でも注目は、最終戦に組まれている韓国戦だ。日韓戦が開催されるのは2年ぶりだが、国内での一戦となると03年東アジア選手権以来7年ぶりとなる(1対0で日本が勝利)。南アW杯アジア最終予選B組で1位通過を果たした韓国を相手に、岡田JAPANがどのような戦いぶりを見せるのか。

 日本の海外組不在と同様に、韓国代表にも欧州で活躍する選手たちは招集されていない。パク・チソン(マンチェスター・ユナイテッド)やキ・ソンヨン(セルティック)といった看板選手の来日は叶わないものの、粒揃いな選手たちがタイトル奪取を狙っている。

 08年から始まったアジア枠の影響でJリーグには多くの韓国人選手が在籍しており、今回は5名がJリーグから選出されている。中でもDFイ・ジョンス(鹿島)とFWイ・グノ(磐田)は代表チームでも中心的な選手だ。今季、京都から鹿島に移籍したイ・ジョンスは、昨年32試合に出場しており、日本選手の特長を把握している。昨年のオールスターサッカーではJリーグ選抜の一員としてプレーしMVPにも輝いており、高い打点から放たれるヘディングはセットプレーで日本の大きな脅威となる。

 また、磐田で前田遼一とJ最強ツートップを組んでいるイ・グノも24歳ながら韓国代表の顔になりつつある。韓国のFWは別格のパク・チソンだけでなく、イ・ドングッ(全北現代)やノ・ビョンジュン(浦項)といった実力者が顔を揃っている。それだけに本大会出場へのサバイバルは混戦だ。本大会への切符を掴むためにも、1つでも多くのゴールでチームの勝利に貢献し、熾烈な争いをリードしたい。日本で開催される今大会へのモチベーションは高いはずだ。昨季、Jリーグで24試合に出場し12ゴールを上げているだけに、楢崎正剛(名古屋)や中澤佑二(横浜FM)にとって手ごわい相手になることは間違いない。

 日本にとって中国、香港は格下なだけに、ここで勝ちを逃がすような事態があれば、岡田監督の解任論にも繋がりかねない。2連勝してライバルとの直接対決に臨みたい。

 岡田JAPANの注目選手は小笠原満男(鹿島)と平山相太(F東京)だ。小笠原はベネズエラ戦で先発出場しているが、周りとの連係は今ひとつだった。パサーばかりが並んでしまう中盤で自分の役割を全うするのが難しいが、高い守備意識と前線への縦パスで韓国DF陣を翻弄することができるか。小笠原にとって朗報なのは玉田圭司(名古屋)が戦列に復帰したこと。スピードのあるFWがいてこそ彼の持ち味が生きる。本大会行きを決定的なものにするためにも、代表で存在感を示してもらいたい。

 代表デビュー戦でハットトリックを達成した平山だが、ベネズエラ戦ではゴールにつながる働きはできなかった。献身的な守備もチームに貢献するが、FWとしてやはりゴールがほしい。当たりの強い韓国や中国のDFを相手に、ペナルティエリア内で仕事ができれば代表ポジション争いでも優位に立つことができる。彼には他のFWにない“高さ”という武器がある。先発出場の可能性もあるだけに、ここではゴールという結果が欲しい。

 今回の日韓戦は国立競技場で行なわれる。国立での日韓戦といえば、数多くの名勝負が繰り広げられてきた。しかし実のところ、日本は国立で30年以上韓国から勝ち星を挙げていない。“日本サッカーの聖地”では苦い経験しかしていないのだ。南アフリカで結果を残すためにも、東アジアの4カ国で行なわれる大会で優勝できなければ話にならない。宿敵を倒し、W杯に向け日本サッカーを盛り上げていく責任が岡田JAPANにはある。内容と結果が求められる日韓決戦。必勝態勢で臨んでもらいたい。

 女子大会に目を向けると、北京オリンピックで“ベスト4”進出を果たしたなでしこジャパンは、今大会で連覇を目指す。ドイツに移籍した安藤梢(デュイスブルク)、永里優季(ポツダム)が不参加だが、16歳の岩渕真奈(日テレメニーナ)など若手を中心に招集されている。もちろん絶対的エースである澤穂希(ワシントン)も健在だ。1月に行なわれたチリ遠征でも結果を残しており、ここは負けられない大会になる。復活を目指す中国や若手の成長著しい韓国も侮れない相手だが、ここは3連勝で大会連覇を果たしてもらいたい。

(大山 暁生)

<東アジア選手権2010決勝大会>

◇2月6日(土)
日本女子代表 × 中国女子代表
日本代表 × 中国代表
味の素スタジアム(東京)

◇2月7日(日)
韓国女子代表 × チャイニーズ・タイペイ女子代表
韓国代表 × 香港代表
国立競技場(東京)

◇2月10日(水)
中国女子代表 × 韓国女子代表
中国代表 × 韓国代表
味の素スタジアム(東京)

◇2月11日(祝・木)
日本女子代表 × チャイニーズ・タイペイ女子代表
日本代表 × 香港代表
国立競技場(東京)

◇2月13日(土)
チャイニーズ・タイペイ女子代表 × 中国女子代表
日本女子代表 × 韓国女子代表
味の素スタジアム(東京)

◇2月14日(日)
香港代表 × 中国代表
日本代表 × 韓国代表
国立競技場(東京)