16日、都内で「ヴェルディドリームス2010」を運営するミュージックセキュリティーズが「ファンと地域を軸としたスポーツ・ビジネス・セミナー」を開催した。スポーツファンドという方式を利用し、大資本に頼らないクラブ経営を目標に掲げ、2月末まで出資者を募集する予定だ。
 親会社である日本テレビから離れ、経営陣を一新し新体制でクラブ経営に乗り出している東京ヴェルディ。現在はJリーグの予算管理団体として運営されており、スポンサー集めの苦戦など前途多難な状況が伝えられる中、2010シーズン開幕を迎える。そのヴェルディが健全経営の第一歩としてファンド「ヴェルディドリームス2010」をミュージックセキュリティーズと共同運営し、大資本に頼らない資金調達を目指している。

 ヴェルディドリームスでは1口19,690円から出資者を募り、クラブ運営費や練習場使用料に充てていく。一方でシーズン中のヴェルディホームゲームでの入場者数に応じて、チケットやグッズ収入などを出資者に分配していく。これまで日本スポーツ界でファンドによる資金を調達した例はなく、スポンサーや寄付などからは一線を画す方式といえる。ファンクラブと持ち株制の中間のような存在だ。

 この日行なわれたセミナーにパネリストとして参加したスポーツジャーナリスト生島淳氏は「これまで大学や企業に頼ってきた歴史を持つ日本スポーツ界にとって新しい試みだ。地方のJ2クラブなどに最も適したシステム。今後、どのように目に見える形で出資者にリターンをしていくかが課題になる」とファンドについて評価した。

 国内では馴染みの薄いシステムだが、海外の類似した例としてスペインのサッカークラブ、FCバルセロナのソシオ制度が挙げられる。ソシオから集まる資金はクラブ運営費の5〜7パーセントと言われており、ソシオ代表者には会長選の投票権も与えられている。ヴェルディドリームスでは運営費のおよそ5パーセントにあたる5000万円を集めることを目標とし、出資者には招待チケットの贈呈やコミュニティサイトの構築で出資者間での情報共有の場を提供していく。

 セミナーに参加した出資者からは「千葉サポーターでヴェルディを応援しているというわけではないが、この制度に惹かれ5口募集した。サッカー界にとって新しい仕組みで注目している」との声があった。ファンドの考案者である渡部泰地氏は「ファンドを購入することで、スポーツに馴染みのない人が興味をもっていただき、応援する方法の一つとなってくれれば」とヴェルディドリームスへ期待を寄せている。

 これまで企業によって支えられてきた日本のスポーツ界も、長引く不況でプロ・アマ問わず親会社・スポンサー離れが加速している。担当者によると、スポーツファンドについてヴェルディ以外のJクラブやアマチュアスポーツ界からも問い合わせがあるとのこと。今後、ファン・サポーターがスポーツと関わる新たなツールとしてスポーツファンドの需要は拡大していきそうだ。

>>ミュージックセキュリティーズ「ヴェルディドリームス2010」