ラグビーのトップリーグのプレーオフ「マイクロソフトカップ」決勝でサントリーが勝利し、初優勝を果たした。チームを率いたのは早大を13年ぶりの大学日本一に導いた就任2年目の清宮克幸監督だ。昨夏に行われた清宮監督と二宮清純との対談から、サントリー・ラグビー部の「清宮革命」の本源を探る。(最終回)

※月刊「潮」06年10月号「<特別企画>リーダー革命 対談「『勝つ』ために必要なことは何か」にて掲載されたものを元に構成しています。
清宮: 僕は選手たちにコーチングするときは、試合後のビデオ分析でフォードバックして「こうだろう、だからこうなんだよ」と選手たちに納得させるんです。たとえばボールのないところにフォーカスかけて、いまここにいるやつがアライブしてないだろう。ほんとはここにいるはずなんだよ。ここにいたら、次ここまで来られているんだよ、というふうに。そうすると、いままで聞いたことのない切り口だからみんな楽しそうに聞くし、理解してくれるんです。

二宮: なるほど。私は、リーダーにいちばん必要なのは「解決力」だと思うんです。難問を解決するから尊敬される。いまやっていることが間違いないと確信できるから、ついていこうとなるんです。お話をうかがっていて思うのは、清宮さんはその点が優れている。
 さてこれからのラグビーのあり方ということで言いますと、日本サッカーは川淵(三郎)さんがリーダーシップを発揮して改革したから、今の発展がある。その意味では、トップリーグというのは確かに日本のトップチームの集まりですが、まだ企業スポーツから脱皮できないところがある。もちろん企業の協力は必要ですが、もう少し地域との連携を図らないと単なる企業対抗になってしまう。浦和レッズが三菱自動車レッズでは埼玉に住む日産やトヨタ、ホンダの社員は応援できないでしょう。

 埼玉のシンポジウムに登壇したときですが、あるラグビーファンの方が「サッカーは地元に浦和レッズや大宮アルディージャがあってうらやましい。ラグビーはない」と言うんですね。それで「セコムは埼玉の狭山ですよ」と返すと、「知らなかった」と。これは非常に残念でもったいないと思いました。スポーツを通しての地域づくり、コミュニティの再生にラグビーはもっともっと貢献できると思うのですが……。

清宮: いま、企業スポーツの中でラグビーほど恵まれている競技はないと思うんです。グラウンドにしてもクラブハウスにしてもJリーグのチームよりはるかに整っていますし。ですから僕は、いまある強み、特色を生かしながらラグビーでしかできない新しい企業スポーツの道をつくっていきたいと思っているんです。
 イメージとしては、サントリーはサントリーホールがあり、文化、音楽関係の方々に愛されているし、それが大きな社会貢献にもなっている。僕は、そのスポーツ版をつくりたいですね。おっしゃるように、ホームタウンをつくりながら、企業としての社会貢献的な部分もやっていくことはとても大切です。たとえば、そうした活動の旗振りをするのも僕の仕事だと考えています。

二宮: 私が言うのも僭越ですが、清宮さんは優勝が最終目標ではないと思うんですよ。ご自身のミッションとして、日本のラグビーを発展させ、進化させる。そして文化として根付かせる。そのステップの一つとしてワセダを再生させ、いまはサントリーで最強のチームをつくろうとしている。5年後、10年後が楽しみですね。“清宮革命”をぜひ見届けたいと思っています。そして成功した後、次に何をされるのか、それがまた楽しみなんです。ご活躍をお祈りします。

(終わり)
※「潮」06年10月号「<特別企画>リーダー革命 対談「『勝つ』ために必要なことは何か」にて掲載されたものを元に構成しています。