地元・福岡に戻ってきました監督の森山です。故郷のチームを指揮する機会をいただき、本当にうれしく思っています。昨年、西武を退団し、リーグの鍵山誠CEOと球団代表から「21年間のプロでの経験を生かしていただけないか」と監督就任を要請された時、僕の心はすぐに固まりました。

「ぜひ、やらせてください」
 迷いはまったくありませんでした。このリーグの選手たちは少ない給料ながら、大きな夢を持っています。彼らの姿を見ると、僕もプロを目指した若い頃を思い出し、もう一度、原点に戻って野球に取り組める気がしています。

 2月1日のキャンプイン。どの選手も思った以上に体が仕上がっていました。練習に取り組む態度などをみても、NPBの選手たちにひけはとりません。ただ、福岡は高校、大学、社会人のチームが多く、練習場所の確保は本当に苦労します。特に土日はどのグラウンドもいっぱいで、砂浜などでトレーニングをしているのが現状です。

 新規球団だけに、道具も満足に揃いません。バッティングケージやバッティングピッチャーが身を守るLネットがなく、フリーバッティングは満足にできない状態です。練習ボールも一昔前の高校野球で見られたような、泥だらけで糸がほつれたものを使っています。正直、NPBとの環境の落差にとまどったことは事実です。

 ところが選手たちは、そういった環境を当然のこととして受け止めています。「野球がやれるだけで幸せ」。その気持ちを僕はどこかで忘れていたのかもしれません。ないならないなりに工夫する。チームが始動して1カ月、大切なことを選手たちから学びました。

 福岡球団では、九州大学の学生向け寮の一角をお借りし、選手が共同で生活をすることになりました。フィットネスルームやプールなどの大学の施設も利用することができ、個々のトレーニングやケアは充分できます。何よりありがたいのは朝晩、食事が出ること。四国から移籍してきた選手たちは皆、「食事に困らないのが大きい」と喜んでいます。

 僕は基本的に選手のやり方を尊重することを指導方針にしています。投手にしても、それが故障につながるような危険な投げ方でない限り、下手にフォームをいじって持ち味を殺さないように気をつけています。まずは良いところを伸ばす。これを第一に考えたいのです。

 選手の育成のみならず、地域に愛される球団を目指すためには、選手たちの人間教育は不可欠です。野球人である前に、まずは社会人であれ。この点は厳しく指導していきます。球団代表とも相談して、まず選手たちの茶髪やヒゲは禁止にしました。残念ながらNPBへ全員が行けるわけではありません。もし野球を離れて、他の仕事に就いても恥ずかしくない礼儀やマナーは全選手が身につけてほしいと思っています。

 先程、話題に出たようにフリー打撃が不足し、打者の仕上がりは遅れています。愛媛から移籍した浦川大輔、徳島からやってきた角野雅俊を中心に「投手を中心にした守りの野球」を目指すことになるでしょう。幸いにも、二遊間を組む國信貴裕土佐和広(いずれも元高知)、センターを守る関口大志(東洋大休学中)は守備力が高い選手です。

 なんといっても野球はセンターラインです。ここが安定していれば、ある程度は戦えます。加えて、彼らには足があります。打撃が弱い分、盗塁やエンドラン、バントなどの小技を活用して、少ないチャンスをモノにするスタイルを追求します。
 
 もちろん狙うは初年度優勝。球場に足を運んでいただいたファンの心に残るよう、全力プレーで最後まで戦います。福岡のみなさん、新しく誕生したレッドワーブラーズをどうぞ、よろしくお願いします。 

森山良二 (もりやま・りょうじ)プロフィール>: 福岡レッドワーブラーズ監督
  1963年7月20日、福岡県北九州市出身。福岡大大濠高時代は甲子園の出場経験ももつ。北九州大を中退後、ONOフーズを経て87年、ドラフト1位で西武に入団。パームボールを武器に88年には10勝をあげて新人王を獲得した。同年の日本シリーズでは第4戦で中日相手に完封勝利を収めている。93年に横浜に移籍し、95年限りで現役を引退。以降、横浜、西武で投手コーチ、トレーニングコーチを歴任した。現役時代の通算成績は86試合、14勝15敗、防御率4.21。


★携帯サイト「二宮清純.com」では、独立リーグのコラムコーナーを更新中です。題して「ニッポン独立リーグ紀行」。アイランドリーグ、BCリーグの監督、コーチ、選手が毎週火曜日に交代で登場し、それぞれの今をレポートします。
 今回は森山監督のコラムです。「復活なるか? コリアンクローザー金」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。


太陽石油はアイランドリーグのオフィシャルスポンサーです[/color][/size]
◎バックナンバーはこちらから