現地時間4月27日、28日にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝2ndレグが行なわれる。先週の1stレグで勝利を収めたのはバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)とインテル・ミラノ(イタリア)、両者ともホームゲームをものにしている。前年覇者のバルセロナ(スペイン)はミラノで“らしさ”を見せることなく完敗し、連覇へ黄色信号が点滅中だ。ミュンヘンで敗れたリヨン(フランス)は負傷者続出で指揮官を悩ませている。いよいよ世界最高のサッカーコンペティションはクライマックスへ。毎年のようにドラマを生む準決勝2ndレグから目が離せない。
 現在、決勝の地、サンチャゴ・ベルナベウ(マドリッド)へ最も近い場所に位置するのはインテルだ。バルセロナとのホーム戦を3対1で勝利している。グループリーグでも顔を合わせた両者の戦いは、戦前の予想ではバルセロナに分があるとの見方が強かった。しかし蓋を開けてみると、インテルが攻・守どちらの面でもバルセロナを上回り1stレグで完勝を収めた。

 インテルで目立つのは、選手の献身的な動きだ。前線のディエゴ・ミリートやサミュエル・エトー、中盤の攻撃の核であるヴェズレイ・スナイデルが、高い位置からバルセロナにプレッシャーをかけ、パスサッカーのリズムを作らせなかった。クラブを指揮する名将ジョゼ・モウリーニョの下で、各選手が汗をかくことを厭わず結果を出している。モウリーニョがクラブを率いて2季目。これまでイタリア国内では部類の強さを誇ってきたビッグクラブが、ついに欧州の覇権に王手をかけるのか。

 1stレグを落としたバルセロナ。彼らにとって気の毒だったのは、およそ1000キロ離れたミラノへのバス移動を余儀なくされたことだろう。1stレグで1ゴールをあげたペドロ・ロドリゲスは「リズムに乗れなかったが、バス移動とは関係ない」と試合後に語ったが、普段は飛行機での移動が当たり前の彼らにとって、丸2日間かけてのバス移動は苦痛以外のなにものでもない。事実、バルセロナは1stレグの後半20分過ぎから運動量を大きく落としていた。

 しかし、バルセロナにとって2ndレグはホーム戦である。1stレグで不本意な戦いを強いられたクラブへ、カンプノウに集まる10万人もの地元ファンから轟音のような声援が送られる。3対1というスコアは完敗のようにも見えるが、アウェーゴール制を採用するCLでは、見た目ほどの大差ではない。バルセロナは2対0でも決勝へ進出できる。さらに、バルセロナにはリオネル・メッシがいる。1stレグではエステバン・カンビアッソ、チアゴ・モッタの完璧なマークにあい、決定的な仕事ができなかったメッシ。悔しい想いをしているだけに2ndレグにかけるモチベーションは相当高い。準々決勝アーセナル戦では、1stレグを敵地で2対2のスコアで終えたものの、カンプノウでの2ndレグでメッシが4得点の大爆発。彼の力だけでベスト4進出を決めてしまった。スター選手が数多いる欧州サッカーシーンにおいても、メッシの存在は別格となりつつある。準々決勝で披露したパフォーマンスを再現することができれば、崖っぷちのバルサは一気に息を吹き返す。

 3対1というスコアを考えると、2ndレグではどちらに先制点が重要になってくる。前述のように、ホームのバルセロナが先にゴールを奪えば、あと1点でインテルを逆転することになる。逆にインテルが1点を奪えば、バルセロナは3点奪ってもタイスコアまでしか届かない。アウェーでの先制点はバルサにとどめを刺す一発にもなりうる。当然のことながら、両者ともに先制点を奪いにいく。まずは立ち上がり15分までに、どちらかにゴールが入るのか。これが大きな勝負の分かれ目になりそうだ。

 もう一方の準決勝1stレグでは、バイエルン・ミュンヘンがリヨンを1対0で下している。終始試合を押し気味に進めたのはバイエルンだった。後半24分のアリエン・ロッベンのゴールのみという結果は、ホームのサポーターにとって不満の残る内容だったに違いない。しかし、試合後のルイス・ファン・ハール監督は「欧州中にわれわれの力を見せ付けることができた。結局、1点しかあげられなかったが満足している」とコメントした。前半37分にフランク・リベリが相手選手の足首を踏みつけレッドカードを受けたことを考えれば前向きな発言ができるかもしれない。しかし、リヨンも後半9分にジェレミー・トゥラランが2枚目のイエローカードで退場になり、10人対10人になった試合は完全にバイエルンが支配していた。2点、3点と加点していればもっと余裕をもってリヨンに乗り込めたはず。1stレグでは後半40分に、絶好調だったロッベンをベンチに下げたファン・ハール。この交代が吉と出るか凶と出るか。それは2ndレグの結果にかかっている。

 対するリヨンは、負傷者と出場停止で苦しんでいる。1stレグでも本来のセンターバックのジャン・アラン・ブームソン、マティウ・ボドメルが負傷欠場し、急造のトゥラランが入っていた。そのトゥラランが慣れないポジションで退場処分になったことは非常に痛い。チームを鼓舞する精神的柱でもある彼の欠場は、リヨンにとって大きなビハインド。「我々は終始押し込まれ、疲れさせられた。数的優位を十分に生かすことができなかったのは残念」とクロード・ピュメル監督。その表情は明るくならない。本来、1stレグをホームで1対0となれば、2ndをホームで迎えるクラブが勢いに乗るはず。監督の暗い表情は、2ndレグを優位に進めるための芝居なのか。残り90分間、彼の表情の表情が曇ったままならば、リヨンが決勝に駒を進めることはない。ただし、リヨンに追い風がないわけではない。フランスリーグが先週末に予定されていたASモナコ戦を5月12日に延期し、貴重な休養期間を得た。これはCLで戦うクラブにとって異例の待遇であり、敵将のファン・ハール監督が欧州サッカー連盟に猛抗議を行なったほど。バイエルンは週末にボルシア・メンヘングランドバッハとの試合を消化しているためバイエルンよりもフレッシュな状態で戦えるはずだ。

 バイエルンは攻撃のキーマンの一人であるリベリを欠くことになるが、今年のCLで躍進を支えているのはロッベンでありイビチャ・オリッチだ。これまでの戦いぶりでロッベンがMVPの活躍を見せているが、オリッチは陰のMVPである。オリッチの粘り強く、あきらめないプレーがクラブを9季ぶりの決勝へ導くか。手負いのリヨンは1stレグを欠場したブームソンが戻る可能性もあり、まずは守備陣の立て直しが急務だ。こちらはクラブ史上初の決勝進出がかかっている。

(大山暁生)

【UEFAチャンピオンズリーグ準決勝2ndレグ】(※左側がホーム)
リヨン(フランス) × バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
バルセロナ(スペイン) × インテル・ミラノ(イタリア)