柔道日本一を決める全日本柔道選手権が29日、日本武道館で行われ、高橋和彦(新日鉄)が立山広喜(日本中央競馬会)との“同級生対決”を制し、初優勝をおさめた。連覇を狙った穴井隆将(天理大職)は準決勝で高橋に判定負け。過去3度の優勝経験を持つ鈴木桂治(国士舘大教)も同じく高橋に準々決勝で敗れた。今大会最多の12度目の出場で悲願の日本一を狙った棟田康幸(警視庁)も準決勝で敗退した。
 相次ぐ強豪を撃破しての栄冠だった。準々決勝で相対したのはアテネ五輪金メダリストの鈴木。3日の全日本選抜体重別選手権を制した好調な相手が序盤は攻勢だった。しかし、そこをこらえると、中盤以降は逆に反撃。きわどい勝負になったが、最後まで攻めたことが功を奏し、2−1の旗判定で勝利した。

 続く準決勝は連覇を狙う穴井と対戦した。準々決勝を豪快な大外刈りで突破した日本柔道の新エースが有利とみられたが、試合が進むにつれ、高橋がたくみに相手の攻めを封じる。一方、技を繰り出せない穴井は残り2分をきったところで戦意に欠けるとして指導を受けて劣勢に。鈴木を破った準々決勝同様、徐々にペースをつかんだ25歳が旗判定3−0で初の決勝進出を決めた。

 決勝で顔を合わせた立山は大牟田高、国士舘大の同級生。“大牟田のツインタワー”と称された2人が頂点を決める一戦で激突した。お互いに手の内を知り尽くしているとあって、序盤は静かな立ち上がりだった。試合が動いたのは後半に入ってから。まず立山が支え釣込み足で有効を奪う。「厳しいと思った」と語る高橋だったが、残り1分で大外刈りから有効を奪い返して形勢が逆転。残り15秒で技を仕掛けられない立山が指導を受け、高橋が優勝を決めた。

 昨年の全日本柔道は予選敗退。先の体重別選手権では初戦で敗れた。
「とりたかったタイトル。昨年出られなかった悔しさをぶつけられた」
 この優勝を評価され、9月に開催される世界選手権(東京)の100キロ超級代表に選ばれた。だが、強豪相手とはいえ、試合内容には日本代表の篠原信一監督から注文もついた。
「世界を戦うには力が足りない。今日の内容では全然ダメなのは分かっている。弱点を克服したい」
 日本一を大きなステップにして、次は世界で結果を残す。