10日、日本サッカー協会(JFA)は6月11日から南アフリカで開催されるFIFAワールドカップに出場する23名の日本代表を発表した。岡田武史監督が自ら読み上げたメンバー表には、これまで岡田ジャパンを支えてきた中村俊輔(横浜FM)や遠藤保仁(G大阪)らに加え、川口能活(磐田)、矢野貴章(新潟)などの選手も名を連ねた。日本代表は5月24日に国内で韓国と壮行試合を行い、26日からの欧州合宿ではイングランド、コートジボワールと親善試合を消化した上で、6月6日に決戦の地・南アフリカへ乗り込む。
<南アW杯日本代表メンバー23人>

GK
川口能活(ジュビロ磐田)
楢崎正剛(名古屋グランパス)
川島永嗣(川崎フロンターレ)
DF
中澤佑二(横浜F・マリノス)
田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)
駒野友一(ジュビロ磐田)
岩政大樹(鹿島アントラーズ)
今野泰幸(FC東京)
長友佑都(FC東京)
内田篤人(鹿島アントラーズ)
MF
中村俊輔(横浜F・マリノス)
稲本潤一(川崎フロンターレ)
遠藤保仁(ガンバ大阪)
中村憲剛(川崎フロンターレ)
松井大輔(グルノーブル)
阿部勇樹(浦和レッズ)
長谷部誠(ヴォルフスブルク)
本田圭佑(CSKAモスクワ)
FW
玉田圭司(名古屋グランパス)
大久保嘉人(ヴィッセル神戸)
矢野貴章(アルビレックス新潟)
岡崎慎司(清水エスパルス)
森本貴幸(カターニャ)

 4回連続でW杯本大会に出場する日本代表のメンバー23名が出揃った。事前に予想されていた選手の多くが代表入りを果たしたが、最も驚きを持って迎えられたのはGKの川口能活だ。川口は楢崎正剛(名古屋)とともに、4大会連続での選出となった。

 川口を選出した理由について、岡田監督は「第3のGKとして、彼のリーダーシップに期待した。他の選手からも一目置かれている存在で彼の力が必要だ」「私が代表監督に就任してから彼をレギュラーから外した。さらに(ベンチ)メンバーからも外した。しかし、その後も彼をずっと見てきて、代表を狙ってくれればと思っていた。大きなケガ(右脛骨骨折、全治6カ月)をしていたが、プレーができるようならば選出する可能性は十分にあった。色々な経験をした後の変化もあり、彼をメンバーに入れた」と会見で語っている。

 過去のW杯本大会メンバーでは、2002年日韓大会にベテランの中山雅史、秋田豊が選出されたケースが思い出される。しかし中山や秋田の場合、日本代表から遠ざかってはいたものの、所属クラブでは毎試合に出場していた。一方、川口は2010シーズンになって1試合もリーグ戦に出場していない。それだけに今回の川口の選出は前代未聞の出来事だといえる。

 ただ、岡田監督の中に、常に川口という名前があったことは事実のようだ。「本大会は長期間になる。その間、チームを一つにまとめることのできる選手が1人欲しい」。岡田監督がこう考えた時に脳裏に浮かんだ選手が川口だった。しかしいくらサプライズ選考とはいえ、川口が置かれている立場は監督が口にしたようにあくまで第3GKだ。23名の枠に入ったものの試合に出場する可能性は高いとは言えない。それでも川口を呼んだ理由は彼のサッカーに対する真摯な姿勢とそれをリスペクトする代表選手たちの気持ちだ。川口といえば、アトランタオリンピックでのブラジル戦やアジアカップ中国大会での神懸り的なPKストップなど、常に日本代表の奇跡の主役になってきた存在。その彼を招集することで、チームの奮起を促したい岡田監督の意図も見え隠れする。

 川口以外の選手については、多くのポジションで順当な選出となった。注目を集めていたFWでは矢野が最後の枠に滑り込んだものの、矢野のプレーについて岡田監督は以前から高く評価していた。矢野の長所について「豊富な運動量とフィジカルの強さ。プレーの粗さもあるが、前線での追い方や裏への飛び出しにも期待したい」とコメントした岡田監督。「状況に応じたプレーのできる選手を23名」と今回のメンバーを表現しており、ゴールの欲しい時間帯での途中出場やパワープレーが必要な場面で起用される可能性が高い。

 岡田監督は会見の席で「W杯でベスト4に行くには、まずグループリーグを突破しなければいけない。そのためにはカメルーンとの初戦が重要になる。そこへ向けて集中力を高めている。我々は課題も多い。特にDFのカウンターやロングボールへの対応は修正する必要がある。それらを修正して24日の韓国戦に臨みたい」と口にした。23名の名前が出揃った今、残り1カ月間でいかにして決勝トーナメントへ駒を進めるかを熟考する時期となった。今回の選手選考について、岡田監督は当日の朝に手書きで23名の名前を書いて、最終決定している。その上で、発表の3時間前に行なわれた会議で、初めて協会内のスタッフにメンバーを告げた。会見でのメンバー発表が選手のフルネームではなく、苗字のみになったのもそのためで、自筆のメモを片手に会見に臨んでいたのだ。

 もちろんメンバー選出は監督の専権事項だが、今後はスタッフ間で密に協議を重ね、グループリーグ突破の戦略を立てていかなければいけない。岡田監督が掲げる「日本人が勝つためのアグレッシブでハードワークするサッカー」は、未だに具現化されていない。昨年9月のオランダ遠征で実行したものの、90分間のうち60分間までは成功したが、残り時間で3失点の憂き目を見ている。選手の起用法を含め、どの組み合わせが日本代表のポテンシャルを最も引き出すことになるのか。慎重かつ大胆な方法を監督以下スタッフ一丸となって示してほしい。

 本大会初戦のカメルーン戦まで残り3試合。この少ない時間の中で、少しでもグループリーグ突破の可能性を上げなければいけない。多くのサポーターはそれを期待している。まずは24日の韓国戦だ。W杯前の国内最終戦、2月に完敗を喫したライバル相手にどのような戦いを見せるのか。世界で戦えるチームを日本サポーターに披露する必要がある。23名が出揃った今、岡田ジャパンは前進あるのみ。もう言い訳はきかない。

(大山暁生)