日本相撲協会は27日、東京・両国国技館で理事会を開催し、木瀬親方(元幕内・肥後ノ海)に2階級降格(委員から無役の年寄へ)処分、清見潟親方(元幕内・大竜川)に譴責処分を下した。木瀬部屋の力士27名は、出羽海一門預かりとなり、部屋は閉鎖される。木瀬親方と清見潟親方は昨年の名古屋場所で山口組系暴力団の複数の幹部に対し、一般では入手できない土俵下の特別席を手配していたことが問題となっていた。
 部屋がすべての基本となる角界において、それを不祥事で閉鎖するのは極めて異例だ。身内に甘いといわれてきた相撲協会でも、今回ばかりは厳罰を下すしかなかった。
 昨夏、2人の親方が暴力団に用意した席は「維持員席」と呼ばれ、協会へ一定額以上の寄付をした有力後援者、企業向けに割り当てられている。本来、席は本人しか利用できない原則になっているが、実際には企業接待として他人に譲渡されたり、相撲案内所(茶屋)を通じて取引されているのが実情だ。

 大相撲では、昔より地方巡業の勧進元(興業主)として暴力団が関わることが多く、親方や力士との付き合いも深かった。しかし、近年では暴力団に対する世間の風当たりは厳しくなっており、協会でも警察の要請に基づき、関係者の入場を禁止するなどの対策を講じてきた。ただし、今回問題になっている昨年名古屋場所以降もたびたび暴力団幹部の観戦が確認されている。

 ただでさえ相撲協会は力士暴行死事件や大麻騒動など、不祥事が絶えない。公益法人の改革が進む中、協会が生き残るには毅然とした対応が必要だった。だが、管轄官庁の文部科学省は、この日の協会側の報告に対し、さらなる全容解明を求めている。土俵を覆う闇を取り除く作業は、まだ入口にさしかかっただけと言えるだろう。