前回王者のイタリアだが、本大会を前に勢いは感じられない。昨年のコンフェデレーションズカップではW杯王者として大会に臨んだが屈辱のグループリーグ敗退。悩めるアズーリに、南米の古豪パラグアイ、欧州の新興勢力スロバキアが襲い掛かる。
◎ イタリア
〇 スロバキア
▲ パラグアイ
  ニュージーランド

 欧州予選こそ無敗で突破したものの、この数字はメンバーに恵まれた感がある。W杯の組分けについても同様に、他のシード国と比べるとかなり容易なグループに入った。スペインが入ったグループGと並び、番狂わせの少ない組になりそうだ。

 グループリーグこそ無難に突破しそうだが、イタリアの強さを強調できる要素は極めて少ない。4年前の大会で鉄壁の守備をみせたファビオ・カンナバーロ、ジャンルイジ・ブッフォン(ともにユベントス)は高齢であり、衰えは隠せない。前線はアルベルト・ジラルディーノ(フィオレンティーナ)の迫力ある突破があるものの、ワールドクラスのFWは彼1人。ロベルト・バッジォやアレクサンドロ・デルピエロを生んだ国としてはいささか寂しい限りだ。
 中盤はアンドレア・ピルロ(ACミラン)の離脱が痛い。攻守ともに中心を担う絶対的な司令塔が欠場することとなり、レベルの低下は避けられない。クラブレベルでは大活躍をしているダニエレ・デ・ロッシ(ローマ)がピルロの穴を埋めて余りある働きをしない限り、単調な試合に終始してしまうおそれが大きい。
 それでも、グループリーグは首位通過を果たすだろう。4年前に歓喜をもたらしたマルチェロ・リッピ監督の手腕はまさに老練。少ない手駒で最小限の力で試合を支配しそうだ。1対0で3連勝という結果になれば、いかにもイタリア的な戦い方。南アフリカでの本当の戦いはグループE2位と当たりそうな決勝トーナメント1回戦からだろう。

 チェコから分離して初めての大舞台となるスロバキアは欧州のオーソドックスなスタイルで堅守速攻を狙う。攻撃的な国との点の取り合いでは分が悪いが、同居した国はどこも守りから入るタイプ。ロースコアでの試合運びになれば、スロバキアにもチャンスは巡ってくる。
 攻撃を司るマレク・ハムシュク(ナポリ)は22歳と若き逸材だ。セリエAを主戦場にしている彼にとって最終戦となるイタリア戦は自らを知る分厚い壁との攻防になる。予選で6得点と活躍をみせたスタニスラフ・セスタク(ボーフム)とのホットラインが機能すれば、アズーリを慌てさせることもできる。やはり先制点を奪って、守り抜くというスタイルで勝ち点を拾いたい。

 南米にあって守備的なチームであるパラグアイは抜群の安定感を誇る。南米予選ではホームでブラジル、アルゼンチンを完封しており、はまった時の守備の堅さは世界でも屈指だ。GKフスト・ビジャール(バリャドリード)、センターバックのパウロ・ダ・シルバ(サンダーランド)、フリオ・セサール・カセレス(アトレチコMG)と経験豊富なベテランがゴール前に強固な砦を築く。
 前線にはパラグアイの英雄、ロケ・サンタクルス(マンチェスター・シティ)がおり、虎視眈々とゴールを狙う。少ないチャンスをものにする技術と集中力は一級品。ネルソン・バルデス(ドルトムント)とのコンビで、パラグアイ史上初のベスト8入りを狙う。

 バーレーンとの大陸間プレーオフを制し、7大会ぶり2回目の出場を果たしたニュージーランドはアマチュア選手を多く抱えるなど実力的に32カ国の中でも大きく劣る。それでも英プレミアリーグ・ブラックバーンでレギュラーを張るライアン・ネルセンを中心に守りを固め、まずは勝ち点1を獲得することを目標にしたい。

(A.O)

 ディフェンディングチャンピオンとはいえ、イタリアの連覇への道は険しい。大会直前となった今でもシステムを模索しており、誰が出場するのか見えてこない。その上、チームの核であるアンドレア・ピルロ(ミラン)が負傷し、本大会出場も不透明な状況だ。司令塔のピルロの離脱により、攻撃面ではジラルディーノの得点感覚、アントニオ・ディ・ナターレ(ウディネーゼ)の個人技、デ・ロッシのミドルシュートに期待するしかなさそうだ。頼みのディフェンス陣もカンナバーロとジャンルカ・ザンブロッタ(ミラン)は年齢による衰えを隠せず、往年の鉄壁を誇ってきたイタリアのディフェンスラインではない。

◎ パラグアイ
〇 イタリア
▲ スロベニア
  ニュージーランド

 とはいえ、イタリアはW杯の勝ち方を知るチームだ。決して派手さはないが、老獪なゲーム運びと無類の勝負強さで4度のW杯制覇を成し遂げてきた。相手が優れていても、自分たちが逆境にあっても、最後には勝利をもぎ取る。今回もアズーリ伝統の強さを見せることができるか。

 問題山積のイタリアに代わってこのグループの主役に推したいのはパラグアイだ。堅守で知られるパラグアイだが、今大会では攻撃陣にも好タレントを擁する。これが自身3大会目となるサンタクルス、ポルトガル・リーグで今季26点を記録した長身FWオスカル・カルドーソ(ベンフィカ)、ブンデス・リーガで19得点を記録し、今年4月にパラグアイ国籍を取得したアルゼンチン産まれのバリオス(ドルトムント)など、フォワードの得点力にも期待できる。
 今年1月、南米予選で活躍した代表FWのサルバドール・カバニャス(クラブ・アメリカ)が頭部を銃撃された。一命は取り留めたものの本大会出場は叶わなかった。現在リハビリに励むチームメイトのためにも同国初のベスト8を目指したい。

 スロバキアは中盤の若手選手たちに注目だ。セリエAで12得点を記録したハムシクに監督の息子で同名のウラディミール・ヴァイス(ボルトン)、16歳でチェルシーに引き抜かれ、今季はレンタル先のトゥウェンテでリーグ優勝に貢献したミロスラフ・ストフと将来を嘱望される選手が揃っている。最終ラインにはエアバトルに絶対の自信を誇るマルティン・シュクルテル(リバプール)もいる。イタリア、パラグアイは厳しい相手だが、チェコスロバキア分裂後初の16強進出を伺うに十分な戦力は揃っている。

 ニュージーランドは同国サッカーの将来のためにも有意義な大会にしたい。これまで同国ではラグビー代表の“オールブラックス”が人気を博してきたが、W杯出場を機に、サッカー代表の“オールホワイツ”に対する注目も高まってきている。戦力的にタレント不足は否めないが、主将のネルセンはプレミアリーグで多くのFWと対戦してきた百戦錬磨のセンターバックだ。18歳のクリス・ウッド(ウェストブロムウィッチ)はオセアニアサッカーの将来を担いうる逸材なので注目したい。16強進出は困難だが、格上の3カ国を相手に勝ち点1でも上げることができれば、ニュージーランド・サッカーの発展にも繋がる。国民の期待に応える戦いぶりを披露してほしい。

(S.S)