組み合わせ抽選直後から“死のグループ”と言われ続けているグループG。2大会ぶりの優勝を狙うブラジル、高い個人技を誇りタレント揃いのポルトガル、アフリカ最強の呼び声も高いコートジボワール、そして謎に包まれた北朝鮮。まさにワールドカップといったバラエティに富んだ見どころのあるグループだ。
◎ ブラジル
▲ ポルトガル
▲ コートジボワール
△ 北朝鮮

 スペインと並び優勝候補に挙げられているブラジル。たしかにドゥンガが築き上げたチームは勝ち方を知っており、昨年のコンフェデレーションズカップで優勝、南米予選も1位通過と万全な仕上がりを見せているように思える。ただし、彼らにも死角はある。それはストライカーの不在だ。最前線に配置されるルイス・ファビアーノ(セビージャ)は高いレベルでパフォーマンスを発揮するFWだが、過去にワールドカップで頂点に達したブラジルにいたような“スペシャル”な存在ではない。58、62、70年大会のペレ、94年アメリカ大会のロマーリオ、そして02年日韓大会のロナウド。L・ファビアーノが彼らと肩を並べられるかといえば、首を横に振らざるを得ない。今大会が初めての大会となるのも気になる。

 ドゥンガは現役時代、ロマーリオが守備をしない点を批判された際、「彼の分まで私が走ればいい」と絶対的エースを擁護したことがある。つまりドゥンガもストライカーの必要性は理解しているのだ。カナリア軍団が優勝まで駆け上るためには、L・ファビアーノが特別な存在になる必要がある。しかしそれは、容易なことではないだろう。

 ポルトガルの浮沈はクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリッド)にかかっている。今大会が彼のための大会になってもなんら不思議はない。まずはグループリーグを突破することが第一条件だ。ウイングとしてサイドから切れ味鋭いドリブルで相手守備陣をかく乱する。
 ポルトガルにとって気がかりなのはナニ(マンチェスター・ユナイテッド)の欠場だ。今季はクラブでレギュラーを獲得し素晴らしい活躍を見せており、昨年まで同僚だったC・ロナウドとの共演を楽しみにしていただろう。出場の叶わなかったナニの分までC・ロナウドが爆発するようなことがあれば、ブラジルの上を行き、首位通過も考えられるかもしれない。

 コートジボワールはディディエ・ドログバ(チェルシー)の戦線離脱が痛すぎる。右腕の骨折で緊急手術を施し回復具合を見ているが、さすがにグループリーグ初戦からの出場は厳しいだろう。その初戦が目下のライバルとなるポルトガルとの一戦だ。攻撃のカギを握るサイモン・カルー(チェルシー)はクラブでもドログバとチームメイトの間柄。無念の主将の姿をみて、期するところがあるはずだ。エースの不在が彼をワンステップ引き上げることになるかもしれない。
 他にもトゥレ・ヤヤ(バルセロナ)、コロ・トゥレ(マンチェスター・シティ)、エマヌエル・エブエ(アーセナル)と欧州トップクラブで活躍する選手が揃う。身体能力の高いアフリカ勢の中でも、最も国際経験豊富な国だ。今年3月に就任したばかりの名将、スベン・ゴラン・エリクソンが大会期間中にどのようにチームを整備していくかも見どころと言える。

 北朝鮮は3カ国から1点でも多く勝ち点を奪い取りたい。カギを握るのは鄭大世(川崎F)だ。「1試合1ゴール」を公言しており、直前の親善試合でもまずまずの仕上がりを見せている。ただ、鄭が得点源であることは3カ国とも織り込み済み。彼には厳しいマークが予想される。その状況を跳ね除けゴールを奪うことになれば、世界にインパクトを与えるに十分だろう。鄭にとって今大会は大きなターニングポイントになるかもしれない。

(A.O)


 ドゥンガのセレソンは、まさに勝つためのチームだ。ロナウジーニョ(ミラン)、アドリアーノ(ローマ)といったチームの風紀を乱す選手を排除し、選手に規律を重んじることを求めた。ピッチ上で披露されるサッカーはブラジルらしさや魅力に欠け、それが理由でドゥンガは幾度となく批判の矢面に立たされた。しかし彼は自分の信念を曲げることなく、ソリッドで組織化された現在のチームを作り上げた。

◎ ブラジル
〇 ポルトガル
▲ コートジボワール
  北朝鮮

 今大会のブラジルディフェンスはまさに難攻不落。今や世界最高のGKに成長したジュリオ・セーザル(インテル)がゴールマウスに君臨し、ディフェンスラインにはジュリオ・セーザルと共にインテルをCL制覇に導いたルシオ、マイコンを擁する。攻撃面ではこのチームで唯一無二の存在であるカカ(レアル・マドリー)を基点に、あまり人数をかけずに速く相手ゴールへ迫る。守備面でのリスクを避けるため、ブラジルらしいファンタスティックな攻撃を封印したあたりもドゥンガらしい。従来の高い攻撃力に、守備力と組織力が加わった今大会のセレソンはまさに最強チーム。優勝候補の大本命だ。

 だが、そんなブラジルにも大きな不安要素がある。それは攻撃の柱であるカカのコンディションが思わしくないことだ。今シーズンは度重なるケガで満足な活躍ができなかった。現代表において、単独で決定的なシーンを作り出せるのはカカしかいない。この10番のコンディションがブラジルのアキレス腱となるかもしれない。

 2位を争うポルトガルとコートジボワールは横一線の状況だが、前回大会でベスト4に躍進したポルトガル優位と予想する。やはり個人で状況を打開できるC・ロナウドの存在は大きい。鉄壁を誇るブラジルDF陣と彼の対決には注目だ。

 ポルトガルの浮沈はセンターフォワードの働きにかかっているといっても過言ではない。昨年8月にブラジルから帰化したリエジソン(スポルティング)、長身FWウーゴ・アウメイダ(ブレーメン)は好タレントだが、W杯のような大舞台でのプレー経験は少ない。彼らが点を獲れなければ、欧州予選のように苦戦を強いられることになるだろう。3位という結果を残した66年イタリア大会ではエウゼビオ、ベスト4入りを果たした前回大会ではペドロ・パウレタという偉大なストライカーがチームにいた。ポルトガルが上位進出するには、ストライカーの活躍が求められる。

 アフリカ勢ナンバー1の実力国と目されるコートジボワールは、今年3月に監督がエリクソンに代わったばかりで、チームの完成度に大きな不安がある。その上、大黒柱のドログバを負傷で失ったとあってはかなり厳しい戦いを強いられるだろう。カルー、セイドゥ・ドゥンビア(ヤングボーイズ)、ジェルビーニョ(リール)ら攻撃陣がエースの穴を埋められなければ、今大会も16強への扉は開かれないだろう。

 44年ぶりのW杯出場となった北朝鮮にとってはあまりに厳しい組分けになったが、勝ち点1でも取れればこの死のグループをさらに盛り上げることができる。5人のDFを配し、身を挺してゴールを守るスタイルは、北朝鮮相手に勝ち点3を計算している3カ国にとって嫌なはずだ。攻撃面では鄭大世とホン・ヨンジョ(ロストフ)のカウンターに期待がかかる。44年前はイタリアを下し、ベスト8に進出する大波乱を巻き起こした。今回も44年前のジャイアント・キリングの再現なるか。

(S.S)