13日、南アフリカワールドカップグループリーグD第1節がプレトニアで行われ、セルビア(FIFAランキング15位)とガーナ(同32位)が対戦した。攻守の切り替えが早い試合展開となったが、スコアはなかなか動かない。身体能力に勝るガーナが強引にゴールに迫るも、強固な守備陣を擁するセルビアは得点を許さなかった。このまま試合は終了するかと思われたが、後半40分にセルビアがPA内でハンドの反則を犯し、これで得たPKをFWアサモア・ギャン(レンヌ)がしっかりと決め1点を勝ち越し。1対0となり、そのままガーナが逃げきり勝ちを収めた。

 セルビア、しっかりと守るもハンドの判定に泣く(プレトニア)
セルビア 0−1 ガーナ
【得点】
[ガ] アサモア・ギャン(85分)

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 大混戦といわれるグループDの先陣を切ったセルビアとガーナは、ともに優れたテクニックを持っている。それぞれが“欧州のブラジル”“アフリカのブラジル”と呼ばれるほどで、多くの選手が欧州のトップリーグで活躍中だ。そんな両者の顔合わせはグループリーグ屈指の好カードとの注目が集まっていた。

 試合は身体能力に勝るガーナが主導権を握った。前半4分、ゴール30m付近からFWプリンス・ダゴエ(ホッフェンハイム)が直線的なドリブルでセルビアゴールに突進する。これに対し、セルビアDF陣は2人で対応するもダゴエが倒されフリーキックとなる。これをギャンが右足で狙うが、シュートはゴール右に逸れる。

 ガーナは度々セルビア陣内に侵入する場面を作る。18分には左サイドのクロスにDFジョン・メンサー(サンダーランド)が飛びこむ。さらにその2分後にはギャンがヘディングシュートを試みるも、これはクロスに合わせられず。ガーナがチャンスを迎える度、会場からは彼らを後押しするブブゼラの爆音が鳴り響いた。

 一方のセルビアは細かいパスこそ通るものの、前線に供給する縦パスがなかなか繋がらない。右サイドMFミロシュ・クラシッチ(CSKAモスクワ)もボールが入らないため、中央へ寄ったプレーを見せ、彼の持ち味であるドリブルを披露する場面がなかなかこない。

 セルビアにとってこの試合初めての枠内シュートは38分のデヤン・スタンコビッチ(インテル・ミラノ)のミドルシュートだった。なかなか攻撃の組み立てられないセルビアはフリーキックから活路を見出そうとするが、ここでも決定機は作りだせなかった。

 後半に入ると、ガーナがサイドからの攻撃でビッグチャンスを迎える。18分、右からのロングスローがゴール前に供給される。そこへ合わせたギャンが頭を思い切り振り、強烈なヘディングシュートを放つ。地面に叩きつけられたボールは惜しくもゴールポスト直撃。前半同様に身体能力を前面に押し出し、ガーナはセルビアゴールに向かって行く。

 ゴール前に迫られながらもどうにか持ちこたえてきたセルビアが、ピンチに陥ったのは後半29分だった。センターライン付近で競り合ったDFアレクサンダル・ルコビッチ(ウディネーゼ)が相手FWを両手で押さえこむと、この日2枚目のイエローカードを受け退場となる。退場から2分後にはMFミラン・ヨバノビッチを下げDFネベン・スボティッチ(ドルトムント)がピッチに立つ。残り10分あまり、ここからは守りきるというラドミール・アンティッチ監督の意図が見える采配だった。

 それでも選手たちは勝ち点3を獲得する姿勢を見せた。33分には、左サイドを突破したダンコ・ラゾビッチ(セニト)がマイナス方向の低いクロスを入れる。これに逆サイドから走りこんだのはクラシッチだった。左足から放たれたシュートは枠内にコントロールされたが、GKリチャード・キングソン(ウィガン)が素晴らしい反応をみせ得点を許さない。さらに3分後には右サイドを駆け上がったDFブラニスラフ・イバノビッチ(チェルシー)が強烈なシュートを放つも、またもやキングソンにはじき返される。終盤になってやっと“らしさ”を見せ始めたセルビアは、数的不利を感じさせない場面を作った。

 しかし、そんなセルビアに絶体絶命のピンチが訪れたのは38。右サイドからのクロスに対しPA内でクリアに入ったズドラフコ・クズマノビッチ(ベルン)が痛恨のハンドを犯す。クズマノビッチは主審に抗議したものの判定は覆らす、クズマノビッチにはイエローカードが出された。
 反対に、ガーナにとってはこの試合最大のチャンスがやってきた。キッカーはギャン。彼はこのチャンスに豪快なキックを見せる。PKは甘いコースに飛んだものの、GKの逆をつき、ガーナがこの日初めてゴールネットを揺らした。再三好機で決められなかったギャンが意地のPKでガーナに先制点をもたらした。

 その後、セルビアは人数をかけ1点を狙いにいったが、キングストンを中心とするガーナDFが反撃を抑える。虎の子の1点を守り切ったガーナが欧州の強豪相手に勝ち点3を手にした。

 終了間際での勝ち越しは、ガーナに勝ち点3とともに大きな勢いをもたらした。次戦オーストラリアから勝ち点を奪うことになれば、一気にトーナメントを駆け上がる可能性もある。一方のセルビアは惜しい試合を落とした。前評判の高かった華麗なサッカーを見ることは出来なかっただけに、次節ドイツ戦までにチームの立て直しが求められる。

(大山暁生)

【セルビア】
GK
ストイコビッチ
DF
ビディッチ
ルコビッチ
コラロフ
イバノビッチ
MF
スタンコビッチ
ミリヤシュ
→クズマノビッチ(62分)
ヨバノビッチ
→スボティッチ(76分)
クラシッチ
FW
パンテリッチ
ジギッチ
→ラゾビッチ(69分)

【ガーナ】
GK
キングソン
DF
ジョン・メンサー
ボルサー
サルペイ
パントシル
MF
アナン
アサモア
→アッピアー(73分)
A・アイエウ
K・ボアテンク
→アディ(90+1分)
FW
タゴエ
ギャン
→オウスアベイ(90+3分)