13日、南アフリカワールドカップグループリーグD第1節がダーバンで行われ、ドイツ(FIFAランキング6位)とオーストラリア(同20位)が対戦した。前回大会3位のドイツは初戦からいきなりエンジンを全開にする。前半8分にMFルーカス・ポドルスキ(ケルン)が豪快なシュートを突き刺すと、26分にFWミロスラフ・クローゼ(バイエルン・ミュンヘン)がW杯通算11ゴール目をヘディングであげ追加点をあげる。勢いは後半にもとどまらず2ゴールを重ね、終わってみれば4対0の圧勝で最高のスタートを切った。

 豪、ケーヒル退場もあり守備崩壊(ダーバン)
ドイツ 4−0 オーストラリア
【得点】
[ド] ルーカス・ポドルスキ(8分)、ミロスラフ・クローゼ(26分)、トーマス・ミュラー(68分)、カカウ(70分)

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 ドイツは非常に若いチームをヨアヒム・レーヴ監督がうまくまとめ上げ極上のサッカーを展開した。特にMFメスト・エジル(ブレーメン)とMFトーマス・ミュラー(バイエルン・ミュンヘン)の動きは素晴らしく、オーストラリア守備陣を混乱に陥れた。

 先制点をあげたのは前半8分。右サイドでボールを持ったエジルがPA付近でドリブルしDFを引きつける。つられたDFの裏にできたスペースへミュラーが走り込み、スルーパスが送られる。ミュラーがゴール前を確認しマイナスの低いクロスを入れると、ボールはゴール前を通過しファーサイドから上がってきたポドルスキの足元へ。ポドルスキはダイレクトで左足を振りぬき、シュートはGKマーク・シュウォーツァー(フルアム)の手を弾き、豪快にゴールネットを揺らした。

 20分にもミュラーが右サイドからクロスをあげ、ゴール前に走りこむポドルスキに合わせる。その2分後にはポドルスキからゴール正面のクローゼへ。左右から効果的なクロスを次々と供給し、好機を作っていく。

 2点目が生まれたのはオーバーラップしたDFフィリップ・ラームのクロスから。精度の高いクロスがゴール前に入ると、そこへ飛び込んだのはクローゼだ。02年日韓大会、06年ドイツ大会でそれぞれ5得点ずつ入れている長身ストライカーが、ここしかないというタイミングでボールに合わせる。シュウォーツァーも必死に両手を伸ばしたが、クローゼの頭が先にボールに触れ、シュートはオーストラリアゴールに吸い込まれた。圧倒的なボールポゼッションで2点を挙げたドイツが、危なげなく前半の45分間を過ごした。

 後半に入ると、オーストラリアはブレット・ホルマン(AZ)を投入しリズムを引き戻しにかかる。5分にはホルマンがミドルシュートを放ち、だんだんと攻めのテンポが好転しはじめた。

 しかし、オーストラリアにとって大きな誤算が生じたのは10分だった。ピッチ中央でMFバスティアン・シュバインシュタイガー(バイエルン・ミュンヘン)へ後方からチェックをかけたMFティム・ケーヒル(エバートン)が危険なタックルをしたとして、レッドカードを受け退場となる。ケーヒルはコンタクトの直前に足を引いている素振りをみせていたため厳しい判定となったが、これでオーストラリアは攻撃の勢いをそがれる格好となった。

 2点のリードがあるうえ、数的優位になったドイツは十分な余裕を持ちながら試合を進める。23分にはポドルスキがセンターライン付近からドリブルを仕掛け、PA少し外まで持ち込みミュラーへラストパス。ボールを受けたミュラーはDFを切り返しながら一瞬でかわすと、コースを狙ってゴール左隅にボールを流し込む。さら2分後、ピッチに入ったばかりのカカウ(シュツットガルト)が、エジルのお膳立てからダメ押しゴールをあげ、一気にオーストラリアを突き放した。

 相手に全くサッカーをさせることなく試合を支配し続けたドイツは、盤石の試合運びで勝ち点3を獲得した。チームの中心を担うエジルは21歳、ミュラーは20歳。キャプテンマークをつけるラームも豊富なキャリアを誇りながら、まだ26歳だ。強豪でありながら非常に若いチームは、この大勝で一気に波に乗るだろう。次戦はセルビアとの対戦となる。同じ欧州の強豪は戦い方をよく知っているチーム。初戦の勢いそのままに彼らを圧倒することがあれば、上位進出への道が開けてくる。

 心配なのはオーストラリアだ。アジア予選では1失点と鉄壁の守備を誇りながら、本大会初戦で4失点。アジアレベルでは固い守りをみせていたが、世界のトップでは余りにも簡単に崩されてしまった。明日、初戦を迎える日本にとってもオーストラリアの大敗は気持ちのいいものではない。さらに次節ガーナ戦では攻撃の要であるケーヒルを欠くことになる。ガーナに敗れれば予選敗退が決まるだけに、イチかバチかの思い切った采配が求められることになりそうだ。

(大山暁生)

【ドイツ】
GK
ノイアー
DF
フリードリッヒ
メルテザッカー
ラーム
バードシュトゥーバー
MF
ケディラ
シュバインシュタイガー
ポドルスキ
→マリン(83分)
ミュラー
エジル
→ゴメス(73分)
FW
クローゼ
→カカウ(68分)

【オーストラリア】
GK
シュウォーツァー
DF
ニール
ムーア
ウィルクシャー
チッパーフィールド
MF
グレッラ
→ホルマン(46分)
ヴァレリ
クリナ
エマートン
→シェディナク(73分)
FW
ケーヒル
ガルシア
→ルカビツィヤ(63分)