15日、南アフリカワールドカップグループリーグG第1節がヨハネスブルグ・エリスパークで行われ、ブラジル(FIFAランキング1位)と北朝鮮(同105位)が対戦した。序盤から圧倒的に攻め続けたブラジルは、5人のDFを並べる超守備的な北朝鮮に対し、なかなかゴールを奪えない。前半は北朝鮮が自分たちのペースに持ち込み無失点で折り返す。後半もブラジルが攻撃を続けると、10分に右サイドを駆け上がったDFマイコン(インテル・ミラノ)が角度のないところからシュートを突き刺し先制点をあげる。1点が入り相手DF陣のチェックが緩くなると、27分にもMFエラーノ(ガラタサライ)が追加点を奪う。終了間際にDFチ・ユンナム(4・25体育団)のゴールで北朝鮮は1点を返すものの、2対1でブラジルが逃げ切り勝ちを収めた。

  8大会連続で白星発進決める(ヨハネスブルグ・エリスパーク)
ブラジル 2−1 北朝鮮
【得点】
[ブ] マイコン(55分)、エラーノ(72分)
[北] チ・ユンナム(89分)

全64試合詳細レポートと豪華執筆陣によるコラムはこちら

 強豪が顔を揃えるグループにあって、やはり本命はシード国のブラジルだ。ドゥンガ監督の下、過去のセレソンが持ち合わせていた派手さはないものの、組織力と規律のある、勝てるチームを築き上げた。初戦の相手は北朝鮮。このグループで実力が2枚は落ちる相手との対戦だけに、ここで勝ち点を取りこぼすことは許されなかった。

 試合開始と同時にボールを保持したのはブラジルだった。流れるようなパス回しで中盤から後ろでは自由にボールを動かす。しかし、対する北朝鮮は3人のセンターバックのラインに左右のサイドバックが加わる5バックという守備的布陣で対抗する。ブラジルがPA付近まで攻め込むと、5−3―2のラインが自陣深くまで下がり全くスペースを与えない。これにはさすがのブラジルも手こずりなかなかゴール前で決定的な場面を作ることができない。7分にMFカカ(レアル・マドリッド)から中央でパスを受けたMFロビーニョ(サントス)がドリブルで持ち込みシュートを放つが、これは枠をとらえることができず、せっかくの好機を逃がしてしまう。

 ブラジルはワントップのルイス・ファビアーノ(セビージャ)にボールを入れようとするが、数で押さえ込む北朝鮮DFの前に全くボールが収まらない。21分にやっとボールをタッチしたL・ファビアーノはPA内に侵入したロビーニョにスルーパスを通したが、これは本来の彼の役割ではない。33分に左からのクロスにヘディングであわせるものの、シュートは力なくGKにキャッチされる。攻撃の核となるワントップが機能しないブラジルはボールを持ちながらゴールには近づけない。北朝鮮DFはブラジルの動きを研究してか、PA付近でファウルを許さない。フリーキックのチャンスも得ることもできず、得点がうまれそうな気配は感じられなかった。

 一方の北朝鮮は守備的なシステムのため、攻撃はFWチョン・テセ(川崎F)頼みとなる。9分に縦パス一本に反応したチョン・テセは、右サイドをDF3人に囲まれながら突破しシュートを放つ。ボールはキーパーの正面を突いたものの、Jリーグで活躍するストライカーは世界トップレベルのDFと対峙しても一歩も引かない姿勢を見せた。

 後半になると、ブラジルがさらにスピードを上げ攻撃を仕掛ける。すると、それまでファウルを犯さなかった北朝鮮も守備に回るタイミングが遅くなり次第にファウルが増える。5分には、この試合で初めてゴール正面からのフリーキックのチャンスを得る。これをDFミシェウ・バストス(リヨン)が直接左足で狙うも、シュートはわずかに左に外れた。さらに2分後にはPA付近でフリーになったロビーニョが強烈なシュート。前半にはみられなかったプレーが徐々にブラジルに出始めた。

 そして10分、ついに均衡が破れる。左サイドのスローインを受けたMFフェリペ・メロ(ユベントス)がエラーノの待つ右サイドに大きく展開。エラーノはボールを受けるとしばらくキープし後ろからの押し上げを待つ。そこへ右サイドバックのマイコンが一気にオーバーラップをかけエラーノを追い抜くと、絶妙のタイミングでパスが出る。北朝鮮陣深くまで切り込んだマイコンはクロスボールをあげると思いきや、ゴールライン付近から右足を振りぬくと、ボールはGKリ・ミョング(平壌市体育団)の逆をつきゴールへ吸い込まれた。スピードに乗りながら、角度のないところから技ありのゴールが決まりブラジルに先制点が入った。

 1点が入ると北朝鮮DFはさらに集中を欠くようになり、だんだんとスペースが生まれる。攻撃も前半から飛ばしたチョン・テセにボールが入らなくなり、ブラジルが圧倒的に攻める時間が続いた。追加点が生まれたのは後半18分。PA少し外、左サイドでパスを受けたロビーニョがDFラインの裏をつくパスを斜めに通す。右サイドに展開されたパスに走りこんだのはエラーノだ。DFよりも一歩早くボールに追いつくとダイレクトでシュートを放つ。ボールは線を引いたようにファーサイドのゴールネットを揺らし2対0となった。前半は中央からの攻撃が機能しなかったブラジルは、サイドからの流れるような攻めで2ゴールを奪い試合を決めた。

 試合終了間際の44分、攻められ続けた北朝鮮が反撃に出る。DFからチョン・テセへロングフィードを送りカウンターを仕掛け、それをチョン・テセがヘッドで落としたところへ走りこんだのはチ・ユンナム。PA内に侵入すると鋭く右足を振りぬく。セービングを試みたGKジュリオ・セーザル(インテル・ミラノ)の脇を抜け、シュートはゴールへと吸い込まれ2対1となった。2点を取り気持ちの緩んだブラジルDFのミスだったが、攻め手のなかった北朝鮮が“王国”相手に一矢報いた格好となった。

 試合はこのまま終了しブラジルが勝利した。この勝利で82年スペイン大会から続いている大会初戦の連勝を8に伸ばしたブラジル。次節ではコートジボワールと対戦する。今日の相手とは違い、攻撃的なサッカーを身上とする相手にどのような戦いを見せるのか。ブラジルにとって、本当の意味での“死のグループ”は次戦から始まる。

(大山暁生)

【ブラジル】
GK
J・セーザル
DF
ルシオ
ファン
マイコン
M・バストス
MF
F・メロ
→ラミレス(84分)
G・シウバ
エラーノ
→D・アウベス(72分)
カカ
→ニウマール(78分)
ロビーニョ
FW
L・ファビアーノ

【北朝鮮】
GK
リ・ミョング
DF
チャ・ジョンヒョク
リ・ジョンイル
リ・グァンチョン
チ・ユンナム
パク・チョルジン
MF
アン・ヨンハ
パク・ナムチョル
ムン・イングク
→キム・グミル(79分)
FW
ホン・ヨンジョ
チョン・テセ