17日、南アフリカワールドカップグループリーグA第2節がポロクワネで行われ、フランス(FIFAランキング9位)とメキシコ(同17位)が対戦した。前半からパスを繋いだフランスが試合のペースを握る。一方のメキシコは高い位置からプレッシャーをかけ、シュートチャンスを作っていく。前半を無得点で折り返すと、後半も主導権を握ったのはボールを動かしたフランスだった。しかし、19分に先制点を奪ったのはメキシコだ。途中出場のハビエル・エルナンデス(グアダラハラ)がGKとの1対1で冷静にゴールへ流し込む。さらに34分、右サイドから突破をかけたパブロ・バレラ(プーマス)がPA内で倒されPKを獲得。これをクアウテモク・ブランコ(ベラクルス)が落ち着いて決め2対0となり試合は決まった。メキシコはウルグアイと得失点差でグループ2位につけ、フランスは次節でウルグアイとメキシコが引き分ければ、グループリーグ敗退となる。

 フランス、グループリーグ敗退の危機(ポロクワネ)
フランス 0−2 メキシコ
【得点】
[メ] ハビエル・エルナンデス(64分)、クアウモテク・ブランコ(79分)

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 両国にとって大会2試合目となる試合は攻守の切り替えが速い好ゲームとなった。試合開始からボールを保持したのはフランスだった。ニコラ・アネルカ(チェルシー)をワントップに据え中盤を厚くし攻撃を組み立てる。序盤はMFフランク・リベリ(バイエルン・ミュンヘン)とフロラン・マルダ(チェルシー)の入った左サイドからメキシコ陣内に進んでいく場面が目立つ。さらに30分を過ぎると右サイドバックのバカリ・サーニャ(アーセナル)が度々メキシコゴール付近まで上がりクロスを入れる。

 しかし、攻撃こそ組み立てるものの、ゴール前で得点を予感させるような場面を作ることはできない。アネルカにボールが入っても中盤から追い越すような動きを見せる選手もおらず、遠目からシュートを放つのみ。欧州予選から決定力不足と批判を浴びている攻撃陣が、今日も悪癖を出し始める。

 一方のメキシコはボールポゼッションでは相手に劣るものの、前線から激しくプレッシャーをかけ、ゴール前でのチャンスを迎える。18分には高い位置でボールを奪い、左サイドに展開すると、最後はオーバーラップしてきたDFカルロス・サルシード(PSV)が強烈なシュートを放つ。さらに27分にも左サイドからサルシードが再び持ち込み、左足でシュート。これはGKウーゴ・ロリス(リヨン)の正面をつきゴールにはならないが、効果的に攻めたメキシコが惜しい場面を作り前半を終えた。

 後半に入るとフランスはアネルカに替え、アンドレ=ピエール・ジャニク(トゥールーズ)を投入する。すると前半に比べシュートチャンスは増え9分にマルダ、11分にリベリと立て続けにミドルシュートを狙う。これはGKオスカル・ペレス(チアパス)が好セーブをみせ得点にはならないものの、さらにポゼッションを増したフランスがゴールをあげるものと思われた。

 しかし、先制点が入ったのはほとんど攻めの形を作れなかったメキシコの方だった。19分に中盤の底に入るMFラファエル・マルケス(バルセロナ)から途中出場のJ・エルナンデスへ絶妙のタイミングで浮き球のパスが通る。フランスDFはオフサイドトラップをかけるが、J・エルナンデスのポジションはラインギリギリのところでオンサイドだった。完全に抜け出したJ・エルナンデスはセービングにかかったロリスをドリブルでかわし無人のゴールへシュートを流し込む。大会後にマンチェスター・ユナイテッドへの移籍が決定している22歳の若い点取り屋が大舞台で大仕事をやってのけた。

 ここで負ければグループリーグ敗退も見えてくるフランスは、失点後さらに前への意識が高くなる。29分にはPA付近でリベリ、マルダとダイレクトでパスを繋ぎ、最後はジニャクがシュート。ボールは大きく浮いてしまい枠を逸れるが、華麗なパス回しがやっと出てくるようになる。

 だが、次の点を奪ったのもメキシコだった。33分に右サイドでボールを持ったバレラがスピードに乗ったドリブルを仕掛ける。PA内に入り、さらに深く切り込もうとするところへDFエリック・アビダル(バルセロナ)がたまらずスライディング。バレラが倒されると主審はPKを宣告し、アビダルにはイエローカードが出された。大事なPKを蹴るのはブランコ。今年で37歳となった代表の顔は、長い助走をとってゴール左隅の完璧なコースへシュートを放つ。ロリスも反応するも、ボールは彼の手をすり抜けゴールネットを揺らした。

 1点目を奪ったJ・エルナンデス、2点目のPKを獲得したバレラ、そしてPKを決めたブランコ。この3人は全員途中出場だ。指揮官のハビエル・アギーレの采配が見事的中し、メキシコが勝利を一気に手繰り寄せた。

 一方、フランスのレイモン・ドメネク監督は後半開始時にジニャクを入れたものの、24分に目立った動きのなかったMFシドニー・ゴブ(リヨン)に替え、マテュー・バルビュエナ(マルセイユ)をピッチに送り出したのみ。バルビュエナはゴール前でボールを持つシーンもなく、そのまま試合終了の時を迎えることとなり、両監督の采配の優劣が浮き彫りになる形となった。

 メキシコはこの勝利で決勝トーナメント進出へ大きく前進した。次節のウルグアイ戦で引き分けでもグループリーグ突破が決まる。一方のフランスは勝ち点1に留まっており、次戦の南アフリカ戦に大勝したとしても、ウルグアイ−メキシコ戦が引き分けならば勝ち点で並ぶことができずグループリーグ敗退となる。前回準優勝国が決勝トーナメントを待たずに消えてしまうのか。0ゴールのまま大会を去る不名誉な記録を残さないためにも、次節ではまず、早い時間でのゴールが必要だ。

(大山暁生)

【フランス】
GK
ロリス
DF
ギャラス
アビダル
サーニャ
エブラ
MF
トゥララン
ディアビ
マルダ
リベリ
ゴブ
→バルビュエナ(69分)
FW
アネルカ
→ジニャク(46分)

【メキシコ】
GK
ペレス
DF
ロドリゲス
モレーノ
サルシード
オソリオ
MF
マルケス
トラード
フアレス
→J・エルナンデス(55分)
FW
ベラ
→バレラ(31分)
フランコ
→ブランコ(62分)