19日、南アフリカワールドカップグループリーグE第2節がダーバンで行われ、日本(FIFAランキング45位)がオランダ(同4位)と対戦した。初戦と同じスタメンで臨んだ日本は堅い守りをみせて好機をつくらせず、前半は無失点で折り返す。しかし後半8分、MFウェスレイ・スナイデル(インテル・ミラノ)の強烈なミドルシュートで失点。中村俊輔(横浜FM)らを投入しての反撃も実らず、0−1で敗れた。日本は24日(日本時間25日3時30分キックオフ)のデンマーク戦で勝つか引き分ければ、決勝トーナメント進出が決まる。

 日本、チャンスつくるも追いつけず(ダーバン)
オランダ 1−0 日本
【得点】
[オ] ウェスレイ・スナイデル(53分)

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 終わってみればシュート数は10本と9本。欧州の強豪に対して、まったく歯が立たない内容ではなかった。しかし枠内シュートは3本対5本。得点は0と1。日本はなんとか組織力で対抗したものの、最終的には個の力で押し切られた。

 勝てばグループリーグ突破へ大きく前進する一戦、両国とも勝ち点3をあげた初戦と同じスタメン、システムで臨んだ。日本のシステムは4−1−4−1、オランダは4−2−3−1。スタメン入りも予想されたDF今野泰幸(FC東京)、FWアリエン・ロッベン(バイエルン)はともにベンチスタートとなった。

 日本は立ち上がりより中盤からプレッシャーをかけ、オレンジの軍団を中に入らせない。9分には相手との接触で、DF駒野友一(磐田)があごを負傷。一時ピッチを離れるアクシデントがあったが、MF長谷部誠(ヴォルフスブルク)が右サイドをケアし、1人少ない時間帯をしのいだ。

 日本の初シュートは11分だった。MF松井大輔(グルノーブル)の縦パスにDF長友佑都(FC東京)が反応。左サイドから切り込んで右足でシュートを放つ。これはゴール右へ外れた。だが、その後はオランダがボールを保持する時間帯が続き、日本はそれに対応するのが精一杯。攻撃の足がかりすらつかめない。23分にはようやくMF大久保嘉人(神戸)が、左サイドから中盤で1人をかわしてドリブルで攻め込んだものの、ペナルティーエリアの手前で相手につぶされた。

 ただ、初戦でカメルーンの猛攻に耐えた守りは機能していた。オレンジのユニホームがボールを持つと、必ずブルーのパンツが体を寄せ、簡単にパスを出させない。試合はこう着状態に入った。日本にやや活路が見えたのは、右サイドからの攻撃。まず33分、松井がドリブル突破を仕掛けて倒され、フリーキックを得る。37分には駒野が抜け出し、クロスをあげる。相手DFに当たってファーに流れたところをFW本田圭佑(CSKAモスクワ)、MF遠藤保仁(G大阪)とつなぎ、折り返しを松井が左足でボレーシュート。しかし、これはGKの正面を突いた。

 オランダのシュートらしいシュートは前半ロスタイムにMFラファエル・ファン・デルファールト(レアルマドリッド)が右サイドからロングレンジで放った1本のみ。日本にとっては悪くない試合運びで前半をスコアレスで折り返した。

 格下相手にドローは避けたいオランダは後半に入り、早めに縦のボールを入れ、攻勢に出た。6分にはMFマルク・ファン・ボメル(バイエルン)が中央から左へロングボールを入れ、FWロビン・ファン・ペルシー(アーセナル)が突破。しかし、シュートは枠をとらえず事なきを得た。

 なおもオランダは攻撃の手を緩めない。日本陣内でボールをキープし、セットプレーからゴールに襲い掛かる。辛抱が必要な時間だったが、ついに8分、均衡が崩れた。相手の左クロスに対するクリアボールをファン・ペルシーに拾われ、折り返して中央へ。ここにスナイデルが2列目からスルスルと現れ、左足を振り向く。強烈なミドルシュート。GK川島永嗣(川崎)も反応はしたものの、手をはじかれた。ボールは角度を変えて、そのままネットの中へ。後半の立ち上がり、日本は痛い1点を失った。

 反撃を試みたい日本はすぐさま大久保が左サイドから中へ切り込んで、右足でシュートを放つ。しかし、これはGK正面。その1分後にも遠藤からのパスを受けて、再び大久保が右足を振り抜くが、ボールはゴールバーの上に飛んだ。流れで得点が奪えないなら頼みはセットプレー。その後、立て続けに3度コーナーキックのチャンスを得るも、相手のDF陣にことごとくはじき返された。

 それでも、まだ得点は1点差。日本は攻撃の切り札として、19分にMF中村俊を投入。直後には右サイドから長谷部、本田とわたり、逆サイドで大久保が後半3本目のシュートを放つ。ところが、これまた枠をとらえられない。さらに24分には、駒野が右から最終ラインとGKの間に低いクロスを放り込む。ゴール前には長谷部、本田が詰めるも、あと一歩タイミングが合わなかった。

 残り15分を切って岡田武史監督はFW岡崎慎司(清水)、FW玉田圭司(名古屋)と突破力のあるコマをピッチに送り出す。ところが中村俊も含めた交代選手は周囲との連係がかみ合わず、うまく攻撃がつながらない。オランダも苦しいタイミングだっただけに、ここで時間をロスしたのは痛かった。中途半端にボールを失い、相手のカウンターであわやという場面も2度作られた。

 刻一刻と時間が少なくなる中、日本はDF田中マルクス闘莉王(名古屋)が前線へポジションチェンジ。高さを生かして、同点ゴールを狙いにいく。ビッグチャンスは終了間際に訪れた。右サイドのハーフウェイライン付近からのフィードボールを、中央のペナルティーエリア手前で闘莉王が頭で落とす。そこへ突進したのは岡崎。追いついて左足を伸ばしたものの、ボールは無情にもバーの上を越えていった。

 さらにロスタイムには、長友がペナルティエリアで粘り、相手DFに後ろから倒される。PKかと思われたが、判定はゴールキック。結局、日本は1点に泣き、勝ち点を奪えなかった。

 後半立ち上がりでうまく主導権を握り、ワンチャンスをつかんだオランダと、巻き返しの機会を何度も得ながら決め切れなかった日本。個の差といえばそれまでだが、課題は単なるフィニッシュの精度だけではない。シュートを打つべきところで打たず、フリーの選手がいても、無理にひとりで攻めてボールを失う……。そんな個々のジャッジメントの未熟さも強いチーム相手では際立ってしまう。

 しかし、いまさらそんなことを言っても仕方がない。グループリーグ突破の行方はすべて次のデンマーク戦に委ねられた。FIFAランキングでいえば、デンマーク(36位)はオランダよりも下だ。デンマークは勝ち点3で並んでいるが、オランダに0−2で敗れており、得失点差で日本が優位に立っている。この2試合での収穫は、日本の組織力は曲がりなりにも通用していること。残された時間でもう一度、組織を徹底し、決勝トーナメントへの扉をこじ開けたい。

(石田洋之)

【日本】
GK
川島永嗣
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
駒野友一
長友佑都
MF
阿部勇樹
長谷部誠
→岡崎慎司(77分)
遠藤保仁
松井大輔
→中村俊輔(64分)
大久保嘉人
→玉田圭司(77分)
FW
本田圭佑

【オランダ】
GK
ステケレンブルク
DF
ハイティンハ
マタイセン
ファン・ブロンクホルスト
ファン・デルヴィール
MF
ファン・ボメル
デ・ヨング
ファン・デルファールト
→エリア(73分)
カイト
スナイデル
→アフェライ(83分)
FW
ファン・ペルシー
→フンテラール(88分)