22日、南アフリカワールドカップグループリーグB最終節がポロクワネで行われ、ギリシャ(FIFAランキング13位)とアルゼンチン(同7位)が対戦した。先発を7名入れ替えたアルゼンチンは立ち上がりからギリシャの堅守に手こずる。前半は0対0で折り返すと、後半もこう着状態が続く。均衡が破れたのは32分。コーナーキックのチャンスでゴールを決めたのはDFマルティン・デミチェリス(バイエルン・ミュンヘン)だった。その後はボールを支配したアルゼンチンが終了間際にも追加点を加え、3連勝でグループ首位通過を果たした。一方のギリシャは攻撃の形をほとんど作れず1勝2敗でグループリーグ敗退となった。

 3試合で1失点 守備の安定も光る(ポロクワネ)
ギリシャ 0−2 アルゼンチン
【得点】
[ア]  マルティン・デミチェリス(77分)、マルティン・パレルモ(89分)

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 2連勝で最高のスタートを切ったアルゼンチンは、得失点差を考えるとこの試合で敗れてもグループリーグ首位通過の可能性は極めて高かった。そうした事情からか、ディエゴ・マラドーナ監督は前節でハットトリックを決めたFWゴンサロ・イグアイン(レアル・マドリッド)ら主力を温存し、韓国戦で先発したメンバーから4名のみを先発メンバーに残した。世界中がゴールを待望するFWリオネル・メッシ(バルセロナ)はキャプテンマークを巻いて先発、メンバーを入れ替えてもメッシ、ディエゴ・ミリート(インテル・ミラノ)、セルヒオ・アグエロ(アトレティコ・マドリッド)という豪華な3トップを形成し、試合に臨んだ。

 一方のギリシャは同時刻にキックオフされるナイジェリア−韓国戦の結果いかんでは、引き分けでも決勝トーナメント進出の可能性が残っていた。1トップに長身のゲオルギス・サマラス(セルティック)を配置し中盤を厚くする布陣。本来ならば勝ちにいかなければいけない立場ながら、端からドローを狙っているのではないかと思わせる守備的なフォーメーションでスタートする。

 序盤からボールを支配したのは予想通りアルゼンチンだった。ギリシャの分厚い中盤の前に華麗なパス回しとはいかないが、縦パスやセットプレーで好機を見出す。18分には左サイドからアグエロが強烈なシュート。これはGKアレクサンドロス・ツォルバス(パナシナイコス)が枠外へかき出しコーナーキックに。このコーナーのクリアボールを拾ったMFファン・セバスチャン・ベロン(エストゥディアンテス)が右足で強烈なミドルシュート。これもツォルバスの好セーブに阻まれる。ギリシャGKがファインセーブを連発し、なかなか得点は生まれない。

 一方のギリシャはサマラスをターゲットに縦パスを供給するものの、チャンスすらつくることができない。前半45分を過ぎてギリシャのシュートは0本。全くといっていいほど攻撃は機能していなかった。

 両者0対0のままハーフタイムを迎えると、ギリシャは攻撃のキーマンであるMFゲオルギス・カラグニス(パナシナイコス)に替え、ニコラオス・スピロプーロス(パナシナイコス)がピッチに入る。カラグニスは足を負傷しての交代となり、ギリシャはますます攻め手を失ってしまう。

 後半開始早々、ギリシャにビッグチャンスがやってくる。3分、縦パスに反応したサマラスがトラップと同時にデミチェリスを振り切ると、PAに侵入しDFニコラス・ブルディッソと1対1になる。放ったシュートは一旦ブルディッソに阻まれるも、跳ね返りに反応したサマラスが再びシュート。ボールはゴール右へわずかに外れたが、ギリシャがファーストシュートで同点に追いつくかと思われた。

 その後は両者ともに攻めあぐね、なかなか決定機が生まれない。アルゼンチンは引き分けでもグループトップを守るだけに、リスク負って前に出る必要はない。対するギリシャは、カラグニスに続きMFコンスタンティノス・カツラニス(パナシナイコス)、MFヴァシリオス・トロシディス(オリンピアコス)と攻撃を牽引する選手を故障でピッチから下げざるを得なくなり、全く攻めの形を作れない。ケガ人続出で3枚の交代カードを使いきってしまうという不運に見舞われ、さすがのオットー・レイハーゲル監督もお手上げという状態になった。

 膠着した試合を動かしたのはアルゼンチンだった。後半32分、左サイドからのコーナーキックにヘディングであわせたのはデミチェリスだ。シュートは一旦味方に当たるものの、そのボールにもう一度デミチェリスが反応し、左足を振りぬく。ゴール寸前から放たれたシュートに対し、これまで好セーブを見せてきたツォルバスはどうすることもできず、ボールはゴールへと吸い込まれる。アルゼンチンが先制点をあげ、3連勝でのグループステージ突破が見えてきた。

 その後もボールを支配しつづけたアルゼンチン。観客の関心はもはや勝敗ではなく、今大会無得点のメッシがゴールを決めるかに絞られていく。40分には左サイドのPA少し外でボールを受けたメッシが、ファーストタッチでマークにきたDF2人を抜き去りシュートを放つ。これは左ポストに直撃しゴールにならないものの、メッシがバルセロナでもよく見せる必殺パターンでゴールに迫っていく。

 アルゼンチンに追加点が入ったシーンも起点はメッシだった。44分、右サイドでボールを受けるとカットインしながら強烈に左足を振りぬく。GKが必死のパンチングで失点を回避するも、ゴール前に待ち構えていたパレルモの元へボールが転がる。これを36歳のベテランが落ち着いてゴールへと流し込み2対0。途中出場のパレルモがゴールを決めると、アルゼンチンベンチはお祭り騒ぎとなった。南米予選でもチームを救った大ベテランのゴールで試合を締めくくったアルゼンチンが、文句なしの3連勝でグループ首位通過を果たした。

 アルゼンチンは7ゴールをあげた攻撃陣もさることながら、1失点で切り抜けている守備陣の健闘が光る。デミチェリス、ワルテル・サムエル(インテル・ミラノ)のセンターバックは安定感がある上、守護神のセルヒオ・ロメロ(AZ)の存在も心強い。バックアッパーも充実しており、今大会で最も高いパフォーマンスを発揮しているチームといえる。決勝トーナメント1回戦の相手はグループA2位通過のメキシコだ。こちらも安定感のあるチームだが、現在のアルゼンチン攻撃陣を抑えきるのは容易ではない。何より好調のチームにあって、まだメッシが得点をあげていない。彼がゴールを決め始めればチームはさらに波に乗る。南米予選では何かと批判の的となったマラドーナ監督も、最高のモチベーターとしてチームを鼓舞している。決勝トーナメントの組み合わせを考えても、ベスト4は堅いのではないか。今のアルゼンチンにはそこまでの勢いがある。

(大山暁生)

【ギリシャ】
GK
ツォルバス
DF
パパドプーロス
キルギアコス
パパスタソプーロス
MF
モラス
ビントラ
トロシディス
→パトサ(55分)
ツィオリス
カツラニス
→ニニス(54分)
カラグニス
→スピロプーロス(46分)
FW
サマラス

【アルゼンチン】
GK
ロメロ
DF
デミチェリス
ブルディッソ
C・ロドリゲス
オタメンディ
MF
ボラッティ
M・ロドリゲス
→ディ・マリア(64分)
ベロン
FW
メッシ
アグエロ
→パストーレ(76分)
ミリート
→パレルモ(80分)