前期も残りわずかとなりました。23日現在、富山サンダーバーズは13勝17敗2分で北陸地区最下位。チーム打率2割4分5厘はリーグ5位、そしてチーム防御率5.17はリーグワーストと投打ともに長いトンネルから抜け出すことができていません。最大の要因は開幕直後から続出しているケガ人。特にピッチャーに多く、ローテーションを組むことができない状況です。
 とはいえ、その中でも戦っていかなければなりません。昨季チーム最多の10勝を挙げた日名田城宏(高岡西高−北陸大)、その日名田に続く6勝を挙げた田中孝次(釜利谷高−帝京平成大)、リリーバーの柱の木谷智朗(関東第一高−東京情報大−愛媛マンダリンパイレーツ)と、実績のある3人を中心に、なんとかやり繰りしてきました。しかし、この3人もなかなか思うような成績をあげることができていません。

 やはり昨年まで不動のエースとして君臨してきた小山内大和が抜けたことが大きく影響しているのでしょう。エースというのは、もちろん勝ち星を計算できるということもありますが、それ以上に連敗を止め、チームの悪い流れを断ち切ってくれる、まさに救世主としての役割を担ってくれるのです。ところが、エース不在のまま開幕を迎えたことで、日名田、田中、木谷らに必要以上に精神的負担がかかっているのです。

 これまで富山といえば、打線が売り物のチームでしたが、今年は投手を含めた守備力の強化が最重要課題でした。そこで4人のピッチャーを獲得しました。内田和肖(静岡高−JR東日本東北)、吉見康平(桐蔭学園高−桐蔭横浜)、加藤貴大(八王子高−明治学院大)、崇博(八日市南高−千葉ロッテ)です。ところが、全員ケガでとても試合で投げられる状態ではありませんでした。特に崇博は主力としての活躍を期待していましたから、当初の構想とはかなりズレが生じてしまったのです。

 投手陣がうまく機能していないことが、打線の不振にもつながっているのでしょう。これまでリーグトップの強力打線を誇ってきたものの、先述したように今季はなんとチーム打率最下位。得点しても守りきれず、「もっと得点を挙げなければ」という気持ちが力みを生み出してしまっています。加えて、打線の中心として期待していた町田一也(倉吉北高−NOMOベースボールクラブ)、下島孝之(岐阜三田高−朝日大−シティライト岡山)が相次いで故障してしまいました。そのため、4番を任せている恭史(松商学園高−住友金属鹿島−宮後工業)に負担がかかっている状態です。

 それでも、ここにきてようやく町田や崇博が復帰、加藤も目処がたち、少しずつではありますが、選手のコマが揃い始めています。前期は残り4試合。消化試合などというものは1試合もないと思っていますから、後期に向けてしっかりと戦っていきたいと思います。

 今月には2人の新人選手が加入しました。右投手の三橋直樹(向上高−関東学院大−日産自動車−横浜)と外野手の坂本斗志(上宮太子高−IPB)です。三橋はNPB経験者でもありますから即戦力としての活躍を期待しています。スピードこそ140キロそこそこですが、コントロールがよく、球種も豊富。安定したピッチングをしてくれますので、先発の柱として起用したいと考えています。32歳とベテランですから、兄貴的存在として投手陣の精神的支柱になってほしいですね。一方、坂本は21歳と若く、技術的にはまだまだ粗い面があります。しかし、体が強く、左打者が多いチームにとっては貴重な右の大砲になってくれればと思っています。

 彼らに共通して望むのは、チームの起爆剤になってほしいということ。故障者が多く、限られた人数の中ではなかなか競争心が出てきません。これでは甘えが生じてしまいます。強いチームというのは、必ずといっていいほどチーム内で激しい競争があるものです。ですから、現在の悪い状況を打開するためにも、彼らの加入によって選手間の競争心があおられ、チームが活性化してくれたらと思っています。

横田久則(よこた・ひさのり)プロフィール>:富山サンダーバーズ監督
1967年9月8日、和歌山県出身。那賀高からドラフト6位で指名を受けて1986年、西武に入団した。その後、ロッテ、阪神へと移籍。02年オフに阪神から戦力外通告を受けるも、台湾の兄弟エレファンツに入団した。2年目には5勝を挙げる活躍を見せたが、肩の故障などに苦しみ、06年限りで引退を決意。07年より富山サンダーバーズのコーチに就任。今季より2代目監督として指揮を執る。


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