7日、第92回全国高校野球選手権大会が阪神甲子園球場で開幕する。今大会の中心は今春の選抜を制覇した興南(沖縄)だ。同校が春の勢いそのままに、県勢初となる選手権優勝、史上6校目となる春夏連覇を果たすのか。それとも、その興南の前に立ちはだかる高校が出てくるのか。例年以上に49校の実力は拮抗しているだけに、見応え十分の大会となりそうだ。
 興南の優勝のカギを握っているのは、やはり今大会屈指の左腕、島袋洋奨(3年)だ。大きなひねりを加えた独特のフォームから繰り出すボールは、打者の手元でグッと伸び、三振がとれる本格派サウスポーだ。過去3度の甲子園では計77奪三振をマーク。今夏の沖縄大会でも4試合31回を投げて44三振を奪った。島袋を援護するのは好打者がズラリと並ぶ打線だ。どんなカウントから思い切って振りに行く積極性は相手投手に休む暇を与えない。特に選抜で大会通算最多タイの13安打をマークした主将の我如古盛次(3年)は、勝負強さと粘り強さを兼ね備えた巧打者。今夏も打率5割9分1厘と好調で、決勝戦では満塁本塁打を放ってみせた。同校は守備も堅く、走攻守どれをとっても優勝候補トップの位置は揺るがない。

 春覇者の対抗馬として有力なのが、好投手・有原航平(3年)擁する広陵(広島)だ。有原は選抜後、右ヒジを痛めたものの、広島大会では準決勝、決勝と好投し、完全復活を果たした。187センチの長身から投げ下ろす角度のついた最速147キロのストレートにキレのあるスライダー、磨きをかけたチェンジアップを織り交ぜたピッチングは全国でもトップクラス。また、エースが不在の間に上野健太(3年)や2年生の上原健太、川崎真といった控え投手が成長したことも大きい。今大会屈指のスラッガー・丸子達也(2年)を軸と打線にも力がある。広島大会では3割5分7厘をマーク。上位から下位まで穴がなく、どこからでも得点できる。春は3度の優勝経験をもつ伝統校が夏初制覇を目指す。

 全国最多188校の激戦を勝ち上がってきた中京大中京(愛知)も地力のあるチームだ。4季連続出場、昨夏には7度目の全国制覇を成し遂げており、大舞台での経験は随一といえる。決勝戦、試合を締めくくったエース森本隼平(3年)と、旧チームから正捕手を務め、大会屈指の強肩の持ち主、主将の磯村嘉孝(3年)の優勝バッテリーを中心に、安定感は抜群だ。森本は故障明けとピッチングにはやや不安は残るものの、磯村とともにバッティングもよく、出場49校トップのチーム打率4割2分9厘を誇る打線でも主軸を担う。中京商時代の3連覇(1931〜33年)以来の夏連覇で、今大会限りで引退を表明している大藤敏行監督の最後に花を添えることができるか。

 今大会は好投手が多いのも特徴だ。注目は左が島袋なら、右は東海大相模(神奈川)の一二三慎太(3年)だ。本格派右腕として一躍有名となった選抜では制球力の不安定さを露呈し、まさかの初戦敗退。その後、制球力の向上を目的にサイドスローへと転向した。自己最速の150キロをマークし、新たにシュートも習得した。しかし、神奈川大会では34回を投げて、19四死球と制球力の不安は拭いきれていない。サイドへの転向がどう影響するのか。真価は甲子園で問われることになる。

 甲子園初登場メンバーでは、松本工(長野)の柿田裕太(3年)と成田(千葉)の中川諒(3年)を推したい。柿田はプロ注目の本格派右腕。181センチの長身から繰り出す伸びのあるストレートとキレが抜群のスライダーを武器に、春夏通じて初の甲子園出場に導いた。全6試合を一人で投げ切り、スタミナも十分。大舞台で本領発揮となれば、全国にその名を轟かせることになるだろう。打線でも主砲を担っており、負担の大きさが懸念されるが、1、2年生を中心とした九州学院との開幕戦を制し、“松工旋風”を狙う。

 中川は球速こそ130キロ台ながら、球もちがよく、打者の手元で伸びるストレートは数字以上の威力がある。千葉大会、全6試合45回を投げて61奪三振という記録がそのことを色濃く物語っている。無理のないゆったりとしたフォームは、先輩の唐川侑己(現・千葉ロッテ)を彷彿とさせる。低めへの制球力のよさも先輩譲りだ。打線が奮起すれば、上位進出の可能性は少なくない。

 ほかにも落差のあるフォークを武器とし、選抜8強の立役者となった南陽工(山口)の右腕・岩本輝(3年)、最速148キロを誇るストレートと独特のカーブを武器とし、大分大会では1試合17奪三振をマークした大分工の剛腕・田中太一(3年)、南北海道大会6試合に登板し、防御率0.93と安定感抜群、選抜8強の原動力となった北照(南北海道)の又野知弥(3年)などにも注目したい。