大相撲秋場所は18日、7日目を迎え、横綱・白鵬が小結・稀勢の里を押し出しで破って連勝を54に伸ばした。これは昭和以降では横綱・千代の富士(現・九重親方)の53連勝(1988年夏場所〜九州場所)を超え、単独2位。最大の目標とする横綱・双葉山が持つ不滅の69連勝(1936年春場所〜39年春場所)にまた一歩近づいた。
 今場所、一番危ない相撲だった。差し手争いからまわしを奪うことができず、稀勢の里の引きに一瞬、体が泳いだ。しかし、すぐさま体勢を立て直して突き返すと、出てきた相手をはたいて崩し、逆に頭をつけて土俵の外へ。決着がついた瞬間、苦笑いのような、ホッとしたような、笑みがこぼれた。

 もはや戦っているのは目の前の相手ではない。自分自身だ。奇しくも連勝が伸び始めたのは、ライバル・朝青龍の引退から。1人横綱の重圧を力に変え、その責任に白星で応えてきた。2月に朝青龍が土俵を去って以降、春、夏、名古屋と3場所連続の全勝優勝。これは年6場所制が定着した1958年以降、初の快挙だった。

 千代の富士が53連勝を打ち立てた1988年当時、横綱には大乃国(現・柴田山親方)、大関には旭富士(現・伊勢ヶ濱親方)、小錦、北天佑らがおり、上位陣は充実していた。だからといって白鵬の記録が色褪せるわけではないが、今は横綱を止める力士が見当たらないのも現状だ。7日目を終えて、全勝の大関は琴欧州ただひとり。国技館は初日から空席が目立ち、テレビ視聴率も前年の秋場所と比較して落ち込んでいる。せっかくの偉業が盛り上がりに欠けてしまうのは、白鵬が強すぎるからではなく、他の力士がだらしなさすぎるからだ。

 大相撲解説者の舞の海秀平氏は「作戦をひとつに絞って、それで負けたら仕方ないという気持ちで臨むことが大事」と語っていた。全対戦力士がストップ・ザ・白鵬に集中し、その包囲網を横綱が時には冷や汗をかきながら突破する。69連勝への道のりが、より熱を帯びるかどうかは大関陣以下の奮起にかかっている。