北京五輪代表選考会を兼ねた東京国際女子マラソンが18日、東京・国立競技場を発着点とする42.195キロのコースで行われ、アテネ五輪金メダルの野口みずき(シスメックス)が2時間21分37秒の大会記録で初優勝して、北京五輪代表に大きく前進した。
 サリナ・コスゲイ(ケニア)が2時間23分31秒で2位、04年優勝のブルーナ・ジェノベーゼ(イタリア)が2時間27分35秒で3位に入った。
 4位は尾崎朱美(セカンドウィンドAC)、5位に大南博美(トヨタ車体)。序盤から野口、コスゲイらとともに先頭集団を形成した渋井陽子(三井住友海上)は30キロ手前で遅れ、7位に終わった。
 スタート時の気温18度。日差しが強く風も強い中、先頭集団は早々に有力選手に絞られ、15キロすぎからは野口、渋井、コスゲイの3人の争いとなった。
 30キロ手前で渋井が遅れはじめると野口とコスゲイの一騎打ちに。コスゲイが幾度となく前に出て仕掛けようとするが、野口は落ち着いて対応し、35キロ過ぎにコスゲイを引き離すと独走状態に。36キロ以降の上り坂も力強い走りで駆け抜け、99年に山口衛里(天満屋)がつくった従来の大会記録2時間22分12秒を8年ぶりに更新する2時間21分37秒で、優勝のゴールテープを切った。

 2年ぶりのマラソンながら、ブランクを感じさせない落ち着いた走りで、五輪金メダリストの貫録を見せつけた野口はレース後、「アテネ五輪、(日本最高記録を出した)ベルリンの時よりも倍くらい嬉しい。みんな調子が良いと聞いていて怖かったし、北京の切符もかかっていたので、不安もあった。目標としていた大会記録も出せて本当に嬉しい」と笑顔で喜びを語った。
 30キロ手前で、「渋井さんが離れかけているのが影を見てわかったので、このへんでスパートしようと」ペースを上げたという。コスゲイと一騎打ちとなってからは、「(コスゲイの)走りが元気で怖かったが、自分の走りを信じていた。合宿でやってきたことを思い出して、自分にしかできない練習をやってきたんだから大丈夫、と言い聞かせていた」。
 決して良好とはいえないコンディションの中で、圧倒的な強さを見せ大会新記録での優勝。北京五輪の代表切符をほぼ手中にし、「(代表に)決まれば、中国の周さんとか強い選手はたくさんいる。強い気持ちで今まで以上の練習に励みたい」と力強く語った。
 前人未到の五輪2連覇へ、野口が大きな一歩を踏み出した。

 レース後に会見を行った日本陸連の澤木啓祐専務理事は野口の代表入りの可能性について明言は避けたが、「今回の走りを見て、マイナス面は見られなかった。ライバルを想定した上での駆け引き、戦術がうまくいき、パーフェクトな走りだったのではないか」と語り、高野進強化委員長も「昔は馬力で走るイメージだったが、今回、後半の勝負どころでギアを変えていく走りができていた。走りのギアをたくさん持つことは世界で戦っていくには必要。楽しみな選手だなと思った」とそれぞれ高く評価した。

 残る女子マラソンの北京五輪選考レースは来年1月の大阪と同3月の名古屋。実質、残り「1枚」となった切符をめぐり、代表争いはさらに熾烈を極めそうだ。
 
上位の成績は以下のとおり。

1位 野口みずき(シスメックス) 2時間21分37秒 ※大会新
2位 サリナ・コスゲイ(ケニア) 2時間23分31秒
3位 ブルーナ・ジェノベーゼ(イタリア) 2時間27分35秒
4位 尾崎朱美(セアンドウィンドAC) 2時間28分39秒
5位 大南博美(トヨタ車体) 2時間30分24秒
6位 挽地美香(天満屋) 2時間34分14秒
7位 渋井陽子(三井住友海上) 2時間34分19秒
8位 シビレ・バルシュナイテ(リトアニア) 2時間34分29秒
9位 ジェシカ・ルース(ニュージーランド) 2時間39分12秒
10位 大久保絵理(アミノバイタルAC) 2時間40分12秒