2日、翌日に控えたヤマザキナビスコカップ決勝に出場するジュビロ磐田の柳下正明監督と那須大亮キャプテン、サンフレッチェ広島のペトロビッチ監督と佐藤寿人キャプテンが都内ホテルで記者会見を行なった。ナビスコカップ決勝で両クラブの顔合わせになるのは18回目の大会で初めてで、磐田は12年ぶり2回目、広島は初優勝を狙う。4万を越えるサポーターが詰め掛ける聖地・国立競技場で優勝カップを掲げるのは果たしてどちらのクラブか―――。
(写真:左から磐田・那須キャプテン、柳下監督、広島・ペトロビッチ監督、佐藤キャプテン)
 今年で18回目を迎えたヤマサキナビスコカップ。明日、国立のピッチに登場するのは9年ぶり5度目の決勝進出を果たしたジュビロ磐田と、同大会で初めてファイナリストとなったサンフレッチェ広島だ。

 会見の冒頭、柳下監督は「ジュビロが久しぶりにファイナルの舞台に上がれるのは嬉しい。決勝に立てたのは選手たちの力があってこそ。全員が100%の力を出して試合を楽しむことができればいい結果がついてくると信じている」と語れば、ペトロビッチ監督は「クラブが初めて決勝に勝ち進んだことを誇りに思う。ベストを尽くしてカップを手にしたい。もし、カップに手が届かなくても、クラブで祝勝会をやりたい。このような厳しい戦いでファイナルに出られるだけでも栄誉なこと」と口にした。

 奇しくも、両監督が言葉にしたのはファイナル進出の喜びだ。ナビスコカップはJリーグやACLと並行して行なわれる大会だけに、クラブの総合力が問われる。厳しい日程での戦いを勝ち抜いて決勝までたどり着いた両指揮官は、ファイナリストになった選手たちを手放しに褒め称えた。

 ジュビロの那須選手は「広島は個人の能力が高く、チームとしても手ごわい」と相手を表現すれば、佐藤選手は「ジュビロと戦うときはいつも接戦。特に(前田)遼一にやられているので、彼に点を取られないようにしなければ」とジュビロのストライカーを警戒する発言が見られた。

 今季の両クラブの対戦は1勝1分けと磐田に分がある。特に広島との2試合で3ゴールを挙げている前田は抜群の相性を誇る。前言の佐藤だけでなく、指揮官や他の選手たちも前田を意識しており、ペトロビッチ監督は「前回の対戦でもコンマ何秒かのスキを見せて得点を奪われてしまった」と鋭いゴールへの嗅覚を警戒し、槙野智章は「遼一さんが風邪を引いて、明日出場しないことを祈りたいです」と彼流のエールを送った。

 一方、警戒されている前田は「(広島に対し)特に得意だと意識することはありません。決勝でも普段どおりプレーするだけ」と平静に対応。ビッグマウスの槙野が「ゴールを奪ってMVPを獲る」と宣言しても、「チームが勝てばいいので、MVPはいらない」とマイペースを貫く。リーグ戦で13ゴールを挙げているストライカーは静かに明日の決勝に向けて集中力を高めていた。

 注目の決勝戦は明日14時に東京・国立競技場でキックオフされる。

 また記者会見の後にはヤマザキナビスコカップ決勝前夜祭が開かれ、その中で今年度のニューヒーロー賞が発表された。この賞は大会期間中に活躍が顕著だった23歳以下の選手に贈られている。過去には名波浩(96年、磐田)、高原直泰(98年、磐田)、長谷部誠(04年、浦和)など、後の日本代表で中心となる選手が受賞してきた。

 今年の受賞者は広島のMF高萩洋次郎だ。準々決勝、準決勝の4試合にフル出場した高萩は、清水エスパルスとの準決勝第1戦で決勝ゴールをあげるなど活躍し、クラブの決勝進出の原動力となった。高萩は受賞インタビューで「まず、自分が選ばれたことに驚いている。人前に立つのは苦手なので、試合よりも緊張する」と答え、会場の笑いを誘った。

 それでもインタビューの最後は「(MVP宣言をした)槙野が打ったシュートをちょっとだけ触ってゴールを決めて、僕がMVPを取ります」と締め、ニューヒーロー賞とMVPのダブル受賞を高らかに宣言した。明日はトップ下で出場が濃厚なだけに、高萩の出来が広島の攻撃のカギを握る。広島にビッグタイトルをもたらすか、ニューヒーローのプレーぶりに視線が集まる。