当HP編集長の二宮清純がインタビュアーを務めるBS朝日の番組『勝負の瞬間(とき)』が11月27日(土)、19:00より放送されます。この番組では毎回、各競技から一流たちをお招きし、トップを極めた技術と、その思考法に迫ります。これまでのスポーツ番組とは一味違ったインタビュードキュメントです。今回はテストマッチ(公式国際試合)の通算トライ世界記録保持者で、今シーズン限りでの引退を表明したラグビー・大畑大介選手をお招きします。
(写真:両アキレス腱断裂などの大ケガを乗り越え、ラストシーズンに臨む)
 当サイトでは番組に先駆けて、大畑選手とのインタビューの一部を紹介します。

二宮: 今日はよろしくお願いします。体、大丈夫ですか?
大畑: あんまり大丈夫じゃないです(苦笑)。

二宮: まさに満身創痍ですね。
大畑: もうボロボロですね。ただ、まだ気持ちが張っていますから。

二宮: 引退を間近にして、今の思いは?
大畑: ものすごいすっきりしてます。自分のできることはやりきりましたね。引退を発表をさせてもらった時には、もうちょっと寂しさが出てくるんじゃないかなと思ってたんですが、何カ月間経っても全然感じないんです。もう早く自分の中でのゴール、ラグビーの現役選手としてのゴールを切って、そして次の新しいスタートラインに立ちたい気持ちのほうが強くなってきています。

二宮: 今は、もうファンに対する「恩返しセール」といった心境でしょうか?
大畑: 完全にそうですね、その気持ちだけでやっている感じです。

二宮: もし日本代表監督のJK(ジョン・カーワンヘッドコーチ)から招集の電話があったら、どうしますか?
大畑: それは引退を撤回して代表に行きますね(笑)。

二宮: 大畑さんはさまざまな故障を乗り越えてきましたが、「ケガを引退の理由にしたくない」と前から話していましたよね。ケガで引退すると、ラグビーにネガティブなイメージを持たれるからと……。
大畑: 自分でこう言うのも何ですが、大畑大介という存在は、ラグビーファン以外の人間もよく知ってくれています。そのラグビー界で一番有名な選手がケガで引退すると、ラグビーに対してネガティブなイメージしかつかなくなる。だからケガでは引退はしたくないなと思っていましたね。
>>この続きは番組をお楽しみ下さい。

「ケガで引退はしたくない」
 その言葉は裏を返せば、大畑選手のラグビー人生がケガとの戦いでもあったことを物語っています。「後ろから鉄球で殴られて目が飛び出るんじゃないかと思うほどの痛みだった」と明かすアキレス腱の断絶に、肩、指のケガ……。まさに満身創痍でプレーを続けていたのです。

 しかも身長は176センチと決して大柄ではありません。それでも数々のトライを決められた理由はどこにあるのか。それを大畑選手を「自分を客観視する能力に長けていた」と説明します。何が自分には足りないのか。どうすれば自分の長所を生かせるのか。それらを自己分析し、試行錯誤を繰り返しながら、「大畑大介」というヒーローを演じ続けてきた――。インタビューからはケガに屈しない熱いハートのみならず、自らをプロデュースできる冷静な思考力もうかがえます。
(写真:「しっかり準備をして、それらを整理整頓しておくことが大事」と話す)

 1999年香港セブンズでの100メートルを独走した逆転トライに、テストマッチでの通算トライ数世界記録更新と、大畑選手は記録にも記憶にも残るラガーマンです。しかし、彼自身の脳裡から離れないのは、栄光の思い出ではなく屈辱の記憶……。「僕にとってはトライを獲るのが仕事。そのトライを獲るために周りの人間は体を張ってボールを運んでくれている。その信頼を崩すようなプレーは本当に辛かった」と、ある試合での痛恨のミスを振り返ります。

 2016年リオデジャネイロ五輪での7人制ラグビーの採用、2019年のW杯開催など、日本のラグビー界は追い風が吹いています。この絶好機をいかに活用し、競技の普及、強化につなげていくべきか。番組の最後では大畑選手の考えるプランも披露されます。「いろいろなことに挑戦したい。僕は常に主役で生きてきた人間なので、どこでも絶対主役になれると思ってやっていきたい(笑)」。ラストシーズンとは思えないほど、さわやかに第2の人生への決意を語る大畑選手に、観ている我々も元気を与えられる55分間です。

 この『勝負の瞬間』は月1回ペースでお届けしています。今後もボクシングの世界チャンピオンなど、一流のアスリートたちが続々と登場予定です。どうぞお楽しみに!

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