花田景子(貴乃花親方夫人)<後編>「理事選前夜、決意のグラス」

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二宮: 相撲界は伝統を重んじる場所ですから、礼儀作法やしきたりなどに慣れるのが大変だったでしょう。親方と結婚して、一番大変だったことは何ですか? 
花田: 結婚してすぐの頃、スポーツ新聞に“貴乃花、風邪引いた”って見出しで記事が出ていました。「風邪引いたくらいでニュースになるの?」ってビックリしましたよ。それにデパートへ買い物に行っても、ふと気づいたら周りのおばさんたちが、私が何を買うのかを覗いている。つまり貴乃花が何を食べるかを知りたがっていたんです。「私、とんでもないところに嫁いだかな……」って思いましたね(苦笑)。


二宮: 力士となると食事量も違いますから、料理をするのも一苦労だったのでは?
花田: それまでお料理なんてほとんどしたことがなかったのが、食事をつくるのが仕事みたいでしたね。結婚したばかりの頃、親方の体重はまだ140キロ台後半だったんです。当時は曙関、武蔵丸関、小錦関と200キロを超える巨漢力士がいましたから、本人は体重を160キロ近くに増やしたいという希望を持っていました。そこで夜6時に夕食を食べた後、10時ぐらいから夜食の時間。夜食といってもステーキにスープとごはんといったメニューなので、1日2回、ディナーを作るようなものでした。

[size=medium] すべては相撲のために[/size]

二宮: 厳しい勝負の世界ですから、勝った時はまだしも、負けた時の接し方は難しかったのでは?
花田: まったくわかりませんでした。何と声をかけたらいいかもわからない。とにかく明るくはしてましたね。最近、親方がインタビューで現役時代を振り返っているのを見聞きすると、「あ、そうだったんだ!」と感じることがたくさんあります。たとえば、現役時代の親方は子供から「パパ」と呼ばれても、ゆっくり振り向いていたんです。イメージでは大きな熊がのっそのっそと動く感じ(笑)。「体が大きい人は動きがゆっくりなんだな」と思っていたんですけど、親方によると立ったり、座ったりする時に、わざとゆっくり動くことで自分の体に負荷をかけていたそうです。

二宮: それは目からウロコですね。日常の動作も、すべて相撲につながっていたと?
花田: 「朝起きて寝るまで、すべての動きを無駄にしてなかったんだ」と親方は言っています。ゆっくり歩いていたのも指をしっかり使っていたからです。相撲では足が“土俵の砂をかむ”ようになることが大切だと言われますよね。だから日常生活でも、その動きを確かめながら歩いていた。すべてを相撲のために捧げたストイックな生活だったんです。

二宮: 現役を引退してからの親方は2年間で80キロも減量しました。どんなダイエットをしたのでしょう?
花田: 何か特別なことをやったわけではありません。現役時代同様、四股を踏み続けて体重を落としました。親方は四股を踏むことは相撲の基本であり、他のスポーツにも通じる動きだと話しています。四股は股関節を柔らかくして体の内側の筋肉を強くし、軸を鍛えると。柔道や剣道はもちろん、サッカーや野球やゴルフにも役立つ基本だそうです。

二宮: 部屋を引き継ぎ、弟子を育てる立場になると、おかみさんとしては子どもが一気に何人も増えたような気分ではないでしょうか? 弟子への接し方で気をつけていることは?
花田: 基本的には自分の子どもに接するのと同じです。中心には厳しいお父さんがいて、多くは語らず背中でみせる。お母さんは優しく接しながらも、細かいところまで目を光らせる。家庭でも部屋でもそんな感じですよ。

二宮: 私はかつて親方のことを“相撲原理主義者”と命名させていただきました。最近は本人が自ら、そう名乗っているようですが(笑)。稽古場ではさぞ厳しいことでしょう。
花田: そうですね。他にも掃除だったり、やるべきことがきちんとできていない日が何日も続くとガッツーンとカミナリが落ちます。その時は私も一緒に怒られるんですよ。「おかみの指導が悪い」って弟子と一緒に怒られています(苦笑)。
 でも、親方は自分のやり方を弟子に押しつけはしません。私なんかは「親方が現役時代にやってきたマニュアルをそのまま弟子たちに教えたら強くなるんじゃないの?」と考えてしまうんですけど、親方は「弟子それぞれに教え方や叱り方がある」と……。

二宮: 古くからの関係者に聞くと、最近の日本人力士は昔に比べて、体力も弱くハングリー精神に欠けると言われます。部屋の力士を見ていて、そんなことを感じますか?
花田: いや、それは一概には言えないと思います。確かに昔とは違うかもしれないけど、今の時代なりに、この世界で強くなろうと思って頑張っている力士はたくさんいますよ。ただ、今は携帯電話で連絡ができるし、近くのコンビニに行けば、たいていのモノは手に入る。部屋を取り巻く環境が大きく変わってしまいました。そんな中で、あえて相撲界に入ろうと決心して部屋にやってきたんですから、それだけでも素晴らしいことだと思います。もちろん弟子たちには、みんな関取になってほしいのですが、現実問題として幕内で活躍できる力士はひと握りしかいません。引退後も協会に残れる力士はさらにその中のひと握りです。であれば、ここで切磋琢磨して学んだものを一社会人として活用できるように育てる責任が私たちにはあると考えています。

二宮: 以前、舞の海秀平さんと対談した際には「相撲部屋には更生施設的な役割もある」と言っていました。少々やんちゃな子でも、相撲部屋で鍛えることで、真っ当な道を歩めるようになるんだと……。
花田: ウチの部屋でも「辞めたい」と申し出てきた弟子に対して、親方が「今、外に出ても一人前の社会人として、何も社会に貢献できない。あと半年間、とにかく気持ちを入れ替えてやりなさい」と諭したことがあります。それで半年間、我慢させると意外と「辞めたい」とは言わなくなることがある。人間、苦しいところを乗り越えると、変わるものだなと痛感しますね。辞めさせることが本人にとって良いこととは限らない。あえて厳しい道を歩ませることも、その子に対する優しさなんですよ。

[size=medium]「理事選で自分の相撲人生の評価が下される」[/size]

二宮: この2月の理事選で、親方は相撲界の慣習を破り、一門を離脱して立候補を表明しました。フタを開けてみれば不利との予想を覆しての当選。おかみさんは当選の自信はありましたか?
花田: 私は、理事選に出馬すること自体に意義があると思っていました。正直、当選はできないだろうと。ただ、出馬することで相撲界に一石を投じたのだから、素晴らしいこと。そう感じていました。ところが理事選の投票前夜、親方が家に戻ると、「とにかく今日はいいワインを開けてくれ。最後の晩餐だ」と言い出したんです。
 
二宮: 「最後の晩餐」ですか。理事選にかける決意の重さを感じますね。
花田: 思わず「えっ?」って聞き返しましたよ。続けて「明日、自分の15年間の相撲人生の評価が下される」とも親方は言いました。その瞬間、私の胸の鼓動が一気に高まるのを感じました。

二宮: やはり親方には使命感があったんでしょうね。不祥事続きで人気も低迷する相撲界に対して「やむにやまれぬ大和魂」との思いが背中を押した。
花田: たとえ親方を評価していただいていたとしても、投票では「さすがに名前は書けない」という方もいらっしゃるでしょう。一般に言われているような一門での縛りがあるとしたら、それを破って「貴乃花に一票」という思いを持っていただけなければ、絶対に投票してもらえない。だからこそ、親方は相当な決意で出馬を決めたわけだし、投票では「その評価が下される」と考えている……。私の心には親方が22回目の優勝を果たした、武蔵丸戦以来の緊張感がドッと押し寄せてきました。

二宮: 親方にとって最後の優勝となった2001年5月場所ですね。あの時は14日目に武双山に巻き落としで敗れ、ヒザに大ケガを負いました。それでも千秋楽の武蔵丸戦に強行出場したんですよね。
花田: ヒザをケガした直後、亡くなった二子山親方(元大関・貴ノ花)が家に飛んでこられて「絶対に休場させろ!」とおっしゃいました。その一言でケガの重大さが私にも伝わったんです。その夜、親方は治療に行っていて、いつもより遅く帰宅しました。二子山親方が「明日は休場しろ!」といくら言っても返事をしない。最後には「じゃあ、もしも結びの一番で負けたら、優勝決定戦は絶対に棄権しろ!」と言って二子山親方は帰っていきました。私はもう、その時からドキドキしてしまって、翌日までどんな1日を過ごしたのか記憶がありません。ケガをしたヒザで、ましてや相手はあの強くて大きな武蔵丸関……。本当に長い長い1日を過ごしたことだけは覚えています。理事選の前日から当日にかけても、同じような心境でした。

[size=medium] 親方は水割り、お湯割り派[/size]

二宮: だいぶ、お酒も進んできました。改めて「マヤンの呟(つぶや)き」の感想を。
花田: 本当においしくて飲みやすいです。アルコール度数が高めなのに、すごくまろやかですね。なんだかほわーんとしてきました(笑)。

二宮: 親方はお相撲さんだから、お酒にも強いでしょう?
花田: いや、現役の頃はほとんど飲んでいませんでしたから、強くなかったんですよ。引退してから段々、お酒を楽しめるようになりました。焼酎を飲む時は、親方はだいたいストレートかお湯割り。私はロックです。

二宮: ロックを好む人のほうがお酒は強い。親方と飲み比べをしたら、おかみさんのほうが勝っちゃうかもしれませんね(笑)。よくご自宅では晩酌もされるのでしょうか?
花田: はい。お酒とともにいろんな話をしますが、親方のほうがよくしゃべります。基本的に私は聞き役ですね。逆に私の話はあまり聞いてくれない(苦笑)。

二宮: その日によって違うでしょうが、平均で何杯くらい飲まれますか?
花田: 私はロックで2杯程度。親方は3、4杯といったところでしょうか。

二宮: 引退されても部屋の弟子がいて、お子さんもいますから、なかなか夫婦水入らずというわけにもいきませんね。
花田: それが2人で結構、“銀ブラ”することもあるんですよ。

二宮: 銀ブラ? 親方だと周りからバレませんか?
花田: そうでしょう? それなのに「オマエのせいでバレた」とか言うんですよ(笑)。私はひとりで歩いていても、気づかれることはほとんどないのに……。夫婦揃って天然なんでしょうね、きっと(笑)。

二宮: アハハハ。モンゴル出身の貴ノ岩関も関取までもう一歩のところまできました。貴乃花部屋の関取第1号誕生がこれから楽しみです。
花田: 一朝一夕には難しいと思いますが、早く幕内土俵入りをして、明るい照明の下、大勢のお客さんの前で取り組みをする弟子を見たいものですね。実は親方の現役時代、優勝パレードで部屋に帰ってきたところを私は間近で見られませんでした。ですから親方と貴乃花部屋の前で優勝力士が帰ってくるのを出迎えたい。親方が二子山親方に迎えられたように、今度は親方が優勝した弟子を笑顔で迎える姿を見たい。それが私の大きな夢です。

>>前編はこちら

<花田景子(はなだ・けいこ)プロフィール>
 11月12日生まれ、宮崎県出身。上智大学在学中は「ミス・ソフィア」に選ばれ、『週刊朝日』などの雑誌にモデルとして出演し、メディアの仕事に携わる。大学卒業後、フジテレビにアナウンサーとして入社。「FNNモーニングコール」「FNN World Uplink」「FNNスピーク」など、ニュース・情報番組を中心に活躍する。94年からフリーに転進。「投稿!特ホウ王国」などの司会を務めた。95年、横綱・貴乃花(現親方)と結婚。3児の母であると同時に、貴乃花部屋のおかみとして奮闘する傍ら、講演やテレビ、雑誌などでも活躍中。







★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

樫樽の中で歳月を重ねることで味わいに深いコクとまろみを加えた、アルコール度数38度の長期貯蔵本格そば焼酎「マヤンの呟(つぶや)き」。国際的な品評会「モンドセレクション」2010年最高金賞(GRAND GOLD MEDAL)受賞。

提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
赤坂 有薫
東京都千代田区永田町2−14−3 エクセルホテル東急3階
TEL:03-3592-0393
営業時間:
ランチ  11:30〜14:00(月〜金、祝日除く)
ディナー 17:00〜22:00(月〜金)、16:00〜21:30(土、日、祝日)

☆プレゼント☆
花田景子さんの直筆サイン色紙を長期貯蔵本格そば焼酎「マヤンの呟(つぶや)き」(720ml、アルコール度数38度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「花田さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、花田景子さんと楽しんだお酒の名前は?


 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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