18日、UAE・アブダビでFIFAクラブワールドカップ決勝が行なわれる。現行の大会形式となって6回目だが、今回の決勝は史上初めてアフリカ王者・マゼンベ(コンゴ)が世界一の座に挑戦、マゼンベが勝てばサッカーの歴史が大きく変わる。対するのは欧州屈指の名門インテル・ミラノ(イタリア)。アフリカ勢が偉業を達成するか、それとも名門クラブが45年ぶりに世界王者となるのか。全世界注目の1戦が明日、キックオフされる。
 一昨年まで日本で行なわれてきたFIFAワールドカップ。2011年、12年大会は再び日本で行なわれることが決定している。6つの大陸王者と地元代表の7クラブで争われてきた今大会。最も注目を集めているのはアフリカ王者・マゼンベだ。これまでアフリカ勢はベスト4に入ることもなかったが、準々決勝でパチューカ(メキシコ・北中米カリブ海)を1対0で破り、準決勝に駒を進めた。相手は南米代表のインテルナシオナル。4年前のFIFAワールドカップを制しており、ここもインテルナシオナルが優勢かと思われていた。

 しかし、GKのムテバ・キディアバが好セーブを連発し失点を0に抑えると、後半8分、ムロタ・カバングがペナルティエリア少し外でボールを受け、浮き気味のボールを右足でボレーシュート。シュートは素晴らしいコースへ飛び、GKが全く反応できないまま相手ゴールへと突き刺さった。ボールを受けてからシュートまでのスピードが速く、アフリカ勢特有の身体能力の高さを見せ付けたゴールだった。

 続く40分にもディオコ・カルイトゥカが強烈なミドルシュートを決め、南米王者に引導を渡した。結果は2対0。年代別を除きFIFAが主催する大会で、アフリカ勢が始めて決勝進出を決めた。

 今年はアフリカで初めてW杯が開催され、2018年には東欧初のロシア、22年には中東初のカタールでW杯が開催されることが決まった。初モノづくしの2010年らしく、マゼンベがアフリカ勢初の世界王者に王手をかけた。新しい市場を拡大するため、昨年からUAEで行われているクラブW杯で、南米、欧州以外から世界王者が生まれるとなれば、FIFA幹部の狙いが的中することになる。

 しかし、欧州屈指の名門が指をくわえているわけにはいかない。インテルにも意地がある。2009−10シーズンはジョゼ・モウリーニョに率いられ、欧州CL、セリエA、コパ・イタリアとイタリアサッカー史上初となる3冠王者となった同クラブも、モウリーニョがレアル・マドリッドに移籍すると、全く別のクラブになってしまった。ケガ人が続出したこともあるが、ラファエル・ベニテス監督の采配は精彩を欠き、国内リーグでは6勝4敗5分けで現在7位に沈んでいる。イタリアメディアでは連日、ベニテス解任論が展開されている。

 ただでさえケガ人の多い状況にありながら、準決勝では攻守の要であるウェズレイ・スナイデルが試合開始直後に肉離れを起こしベンチへ退いた。決勝でも出場は難しく、調子の上がらないクラブはますます窮地に追い込まれている。

 それでも地力のあるインテルは準決勝でアジア王者の城南(韓国)に3対0で完勝。3点目は今季絶不調と言われているディエゴ・ミリートが決めた。欧州CL決勝でも活躍したアルゼンチン人FWが復活すれば、世界王者への道も大きく開ける。

 また、波に乗れないクラブにあって、FWのサミュエル・エトーは今季開幕から好調を維持している。リーグ戦では9ゴール(得点ランク2位タイ)、欧州CLでも7ゴール(同1位)を決めており、スナイデルのいない攻撃陣にあって、彼の活躍は不可欠だ。彼が普段通りの仕事をすれば、マゼンベは敵ではない。6月のワールドカップではグループリーグで日本の前に屈したカメルーン代表キャプテンは、このビッグタイトルで世界一の座を狙っている。

 マゼンベが勝てば歴史的勝利となるが、コンゴのFIFAランキングは121位。たしかにFIFAランク4位であるブラジルのインテルナシオナルに勝ってはいるものの、2度のジャイアントキリングは難しいのではないか。インテルにはアフリカの英雄・エトーがいるだけに、アフリカ勢をリスペクトして試合に入ることは間違いない。慢心がなければ、決勝では順当にインテルが1964、65年のインターコンチネンタルカップ連覇に続き、3度目の世界一の座に就くだろう。

(大山暁生)