元日、第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝が東京・国立競技場で行なわれ、鹿島アントラーズが清水エスパルスを2−1で下した。鹿島は前半26分にコーナーキックからフェリペ・ガブリエルがヘディングシュートを決め先制する。一旦は追いつかれるものの、後半32分に野沢拓也が直接フリーキックを決め勝ち越しに成功、そのまま逃げ切った。鹿島の天皇杯制覇は3年ぶり、Jリーグが発足した1993年以降では最多となる4度目の優勝となり、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得した。

◇1月1日、国立
鹿島アントラーズ 2−1 清水エスパルス
【得点】
[鹿島] フェリペ・ガブリエル(26分)、野沢拓也(77分)
[清水] ヨンセン(59分)
 互いにリーグ戦で不本意なシーズンを送った両クラブ。来季のACL出場権をかけ元日決戦に臨んだ。先制したのは鹿島だった。前半26分、左サイドのコーナーキックから小笠原満男が高いボールをファーサイドへ入れる。そこへ飛び込んだのはフェリペ・ガブリエル。DFと競り合いながら高い打点でヘディングシュートを放ちゴールネットを揺らす。タイトルなしでは今季を終われない鹿島が意地の先制点をあげた。

 鹿島は前線から激しいプレッシャーをかけ、清水からボールを奪い攻撃へと結びつけた。中でも大迫勇也の献身的な動きが光った。リーグ戦では輝くことのできなかった20歳だが、今大会で3ゴールをあげ決勝進出の原動力になっている。先制のコーナーキックも大迫の積極的な守備から獲得したものであり、数字に表れない部分でもクラブに貢献した。

 後半に入ると清水がいいリズムで反撃に出る。相手陣内で小野伸二がボールに絡む機会が増えるにつれ、攻撃に厚みが出ていく。後半5分、9分、10分と立て続けに鹿島ゴールへと迫った。続く14分、本田拓也からの浮き玉のパスに反応したヨンセンがDFラインとGKの間にうまく抜け出しループシュートを放つ。ゆっくりと放物線を描いたのち、シュートは鹿島のゴールへと吸い込まれた。いいテンポで攻め続けた時間帯に同点弾が生まれ、これで勝負の行方はわからなくなった。

 その後は一進一退の攻防を繰り返す。次の1点が勝負を決する時間帯となった後半32分。貴重な勝ち越し弾を決めたのは鹿島だった。

 清水ゴール正面、ペナルティエリア少し外で興梠慎三を倒され、フリーキックを得る。ボールの近くには小笠原と野沢がスタンバイ。壁の少し上を狙ってシュートを放ったのは野沢だった。右足でカーブのかけられたボールは、ゴール手前で鋭く落ち、清水ゴール枠内へと向かう。清水GK山本海人が懸命にセーブを試みるも、右手でボールに触れるのが精一杯。シュートは山本の手を弾き清水ゴールへと吸い込まれていった。残り10分で勝ち越しに成功した鹿島が、このまま清水の反撃を凌ぎきり2対1で元日決戦を制した。

 鹿島は今季リーグ4連覇を逃したものの、天皇杯優勝でアジア制覇への挑戦権を獲得した。就任以来4季連続でタイトルをもたらしたオズワルド・オリヴェイラ監督は「ブラジル的な考え方がクラブに根付いている。集中できる環境を作ってくれており、それが強さにつながっている」と鹿島の強さについて語った。

 内田篤人やイ・チョンスと開幕から先発出場していた主力がシーズン序盤でクラブを離れ、マルキーニョスも帰国した中でのタイトル奪取。年末の強行日程を乗り切り、チームの完成度、総合力を見せつけた格好だ。3年連続で挑戦しているACLはベスト8が最高の成績だ。浦和レッズ、ガンバ大阪が制した同大会を制するのはクラブにとっても悲願といえる。2011年もアジアとJリーグの頂を目指す鹿島を中心に日本のサッカーシーンが動くことは間違いない。

(大山暁生)