9日(現地時間)、アジアカップ2011グループリーグB第1節がカタール・ドーハで行われ、日本はヨルダンと対戦した。試合開始からボールを保持し続けた日本だが、決定機を迎えながらもゴールを奪えない。逆に前半終了間際にカウンターから失点し、苦しい展開となる。後半も主導権を握ったが得点をあげることができず、このまま試合終了かと思われた後半ロスタイムに吉田麻也(VVVフェンロ)がヘディングシュートで同点弾を上げ、土壇場で追いついた。最後まで勝ち越しゴールを狙ったもののそのままタイムアップとなり、勝ち点1を獲得するにとどまった。

 負け試合で追いつき勝ち点1獲得(カタール・スポーツクラブ)
日本 1−1 ヨルダン
【得点】
[日] 吉田麻也(90+1分)
[ヨ] ハサン・アブドゥル・ファター(44分)
 アルベルト・ザッケローニ監督にとって、初めての公式戦となるアジアカップが開幕した。第1節となるヨルダン戦でザックはセンターバックに今野泰幸(F東京)、吉田を起用し4バックで試合に臨んだ。

 試合開始から主導権を握ったのは日本だった。ボールをつなぎ相手陣内に多くの選手が侵入しチャンスを作る。7分にワントップで起用された前田遼一(磐田)がファーストシュートを放つ。さらに14分にはフリーキックからの攻撃で香川真司(ドルトムント)がゴール前でシュート。20分過ぎには両サイドバックが幾度となくチャンスを作り、ヨルダンゴールへと迫った。中盤の底から長谷部誠(ヴォルフスブルク)、トップ下の本田圭佑(CSKAモスクワ)もゴール前へ飛び込みチャンスメイクする。

 ただ、トップに入った前田は前線で体を張るもののなかなか効果的な展開が生まれない。香川、本田と絡む場面も少なく、パスが収まることも少なかった。徐々に孤立する時間が増え、前田のシュートチャンスは数えるほどしかなかった。

 それでも、日本が決定的な場面を作ったのは前半40分。左サイドから人数をかけて攻め上がると、そこから一気にサイドチェンジ。内田篤人(シャルケ04)がボールを受けると、ペナルティエリア近くの長谷部へパス、長谷部は低く速いクロスボールを前線に供給する。ゴール前で前田がクロスをスルーするとそこへ香川が走りこみDFを交わしてシュート。ボールは枠を捕えるも、GKのファインセーブ。ドイツ・ブンデスリーガで8得点をあげている香川がビッグチャンスを演出したが、先制点とはならなかった。

 決定機を逃した日本が失点したのはその直後だった。44分、左サイドでクリアボールをアメル・ディーブ(アル・ワーダ)に拾われると、中央へ勢いよく走りこんだハサン・アブドゥル・ファター(アル・ワーダ)へボールが渡る。ゴール正面でファターが左足を振りぬくと、シュートはクリアに入った吉田の足に当たりコースが変わってそのまま日本ゴールへと吸い込まれた。一瞬の隙を狙われカウンターで失点を食らった日本は1点ビハインドで試合を折り返す。

 後半早々にザッケローニは動く。1トップが機能しなかった前田に代え、代表初選出の李忠成(広島)が投入される。前田と同じポジションに入った李は前線で動き出しの良さでボールを引き出そうとするものの、こちらもなかなかパスが収まらず攻撃の起点とはならなかった。新生日本代表でもFWの孤立化は解消されていない。アジアカップという長い大会で、前線でのコンビネーションを少しでも改善したいところだ。

 日本は後半も攻め続けながら、なかなかゴールが奪えない。1点を守ろうとするヨルダンがゴール前に張り付きスペースを消す中、どうしても中央にボールが偏り簡単にDFの網にかかってしまう。何度かチャンスを作るもののゴールは生まれず、このまま試合終了かと思われた。

 しかし、後半ロスタイムにドラマが待っていた。香川が獲得した左サイドからのコーナーキック。素早いリスタートから長谷部がファーサイドへクロスをあげる。そこへ走りこんだのは吉田だった。高い打点からヘディングシュートを放ち、ヨルダンのゴールネットを揺らした。値千金の貴重な同点弾がロスタイムに生まれ、日本は土壇場でドローに追いついた。失点の場面でクリアし切れなかった吉田がオフェンス面で貢献し1点を返す格好となった。その後も少ない時間で勝ち越しゴールを狙ったものの、このまま試合は終了し、アジアカップ2011は引き分けでスタートを切った。

 終始ボールを支配しながらもゴール前で引いた相手に苦戦したザックジャパン。世界の強豪相手との戦いとは逆の展開になるアジアでの試合で苦しむパターンはこれまでと変わっていない。次節のシリア戦も同じような状況になるだろう。試合後に主将の長谷部は「負け試合を引き分けに持ち込んだ。結果はポジティブに考えるしかない」と語った。4度目のアジア制覇に向け完璧な立ち上がりとはいかなかった。ここからどのようにチームを立て直し、調子を上げていくのか。ザックの手腕が早くも問われるグループリーグになりそうだ。

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
今野泰幸
吉田麻也
内田篤人
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
松井大輔
→岡崎慎司(58分)
香川真司
本田圭佑
→藤本淳吾(90分)
FW
前田遼一
→李忠成(46分)