男子ゴルフ4大メジャーのひとつ、マスターズ・トーナメント(4月7日〜、米ジョージア州オーガスタ・ナショナルGC)に初出場する藤田寛之が13日、都内で会見を行った。73年のツアー制度施行以降では日本人最年長記録となる41歳9カ月で夢の舞台に初挑戦する藤田は、「世界の舞台に行けば僕はチャレンジャー、無名の新人。失うものは何もない。藤田寛之のゴルフをぶつけてどこまでいけるか、期待を持っている」と抱負を語った。
(写真:マスターズの招待状を手に「不思議な気持ち」と心境を明かす藤田)
 昨年の藤田は4月のつるやオープンで優勝。年間を通じて安定した成績を収め、ツアー最終戦となった日本シリーズJTカップを制覇し、石川遼や池田勇太ら若手を抑え、賞金ランキング2位に食い込んだ。2010年度の最終世界ランキングでも48位に入り、マスターズの出場資格(50位以内)を確保した。待ちに待った招待状が届いたのは昨年末の12月27日。外出中に妻から到着の連絡が入った。

「立派な入れもので来ると聞いていたら、友達から来るエアメールみたいな封筒だった(笑)」と初めて見る招待状には、やや拍子抜けの感想を抱いた。とはいえ、本人曰く「夢のまた夢」の場所からの招待状。「自分の手許にあっていいのかという気持ち」とまだ実感が沸かない様子だ。「招待状が届いている以上、オーガスタでプレーできる。早く現実に戻ることが藤田寛之には大切」と41歳は気を引き締めた。

 ゴルフを本格的に始めた15歳の頃からマスターズのテレビ中継は食い入るように見ていた。藤田にとって最も印象深いのは1986年のマスターズ。ジャック・ニクラウスが46歳2カ月で最年長優勝を果たした。その模様を最後まで見ていて、当時16歳の藤田少年は高校に遅刻したという。

 その後、プロになり、オーガスタには1度だけ雑誌の企画で訪れた。プロ初勝利を挙げた翌年の98年、3日間だけ「ゴルフの祭典」を生で体感することができた。
「アップダウンがきつくて、グリーンはアンジュレーション(起伏)が大きくて狭い」
 現在はコースが改良されているが、当時の印象は緑の青さとともに今でも鮮明に残っている。

 今回のマスターズには藤田に加え、3回目の出場となる石川、2回目の出場となる池田、そして日本のアマチュア選手では史上初の参戦となる松山英樹と4名の日本人が難コースに挑む。藤田以外は全員が10代後半〜20代前半の若手になるが、「遼くん、勇太は経験している。一緒に練習ラウンドでまわりたい」と謙虚に後輩から学ぶつもりだ。ただ、これまでマスターズ以外のメジャートーナメントは全英オープン、全米オープン、全米プロと計6度経験してきた。うち予選通過は4回。メジャーならではの雰囲気、緊張感はもう何度も味わっている。
「マスターズでも出てくる選手は変わらない。コースが違うだけ。マスターズの重みを感じるあまり、自分を見失わないようにしたい」
 ベテランらしく目標も「20位以内」と現実的だ。

 40歳を過ぎての大活躍に、最近では“アラフォーの星”と呼ばれることも多くなった。同世代を中心に周囲の期待は高まる一方だ。
「マスターズで瞬間でもいいので頑張っているなと思われるよう、一打一打真剣に一生懸命やりたい。その姿から何かを感じていただければうれしい」
 ベテランにあって、若手にはないもの――それは経験だ。藤田は18年間のプロ生活で培ったものすべてを大舞台で出しきろうとしている。
(写真:「オーガスタは距離が長い。ドライバーがカギになる」と話す)

 既に8日からトレーニングを開始し、マスターズに向けた準備は着々と進んでいる。2月後半から3月にかけて米国で3試合をこなし、帰国後は師匠の芹沢信雄プロの下、合宿を張る予定だ。
「平常心でやるのは無理だと思う。ただ、やれるぞと思って1番ティーに立ちたい」
 4月7日、初日のオーガスタ1番ホール。夢が現実に変わった瞬間、果たして41歳はどんな姿をみせるのか。石川や池田たちのみならず“アラフォーの星”も輝くマスターズであってほしい。

(石田洋之)