13日(現地時間)、アジアカップ2011グループリーグB第2節がカタール・ドーハで行われ、日本はシリアと対戦した。前半35分、日本は長谷部誠(ヴォルフスブルク)のゴールで先制し、後半に入っても相手陣内へ攻め込む時間が続く。しかし、日本がエアポケットに落ちたのは後半25分だった。不用意なバックパスと不可解なジャッジからPKを献上、このプレーで川島永嗣(リールセ)が一発退場となる。同点とされた上、一人少ない中で厳しい状況に追い込まれた日本は37分に岡崎慎司(清水)がPKを獲得、これを本田圭佑(CSKAモスクワ)がゴールへ叩き込み、2−1とする。その後はシリアが猛反撃をみせたが、ロスタイム6分を含めて体を張った守備をみせ、今大会初勝利を手に入れた。日本は得失点差でリーグ1位に浮上し、決勝T進出へ大きく前進した。

 苦しい試合制し、グループ首位に(カタール・スポーツクラブ)
日本 2−1 シリア
【得点】
[日] 長谷部誠(35分)、本田圭佑(82分)
[シ] フィラス・アル・ハティブ(76分)
 ヨルダン戦を引き分けた日本は、初戦と同じ先発メンバーで試合に臨んだ。立ち上がりからサイドで松井大輔(グルノーブル)らが起点をつくり、シリア陣内へと侵入していく。細かいパスをつなぎながら、やや単調なリズムになる時間もあったが、多くのチャンスを作り相手ゴールへと迫った。

 先制点が生まれたのは前半35分。DFラインからの縦パスに反応した本田から分厚いカウンター攻撃が展開された。右サイドからPA内に進入した本田はゴール前へグラウンダーのマイナスのクロスを上げる。ぽっかり空いたスペースに走りこんだのは香川真司(ドルトムント)。うまくトラップすると、ゴール前へドリブルで入っていく。シュートを打つと見せてフェイントを入れ、GKとDFを手玉に取り、ここでシュート。一旦、GKが好セーブを見せるがこぼれ球に反応した松井がフォローし、長谷部へパス。長谷部は松井が作ったシュートコースに右足で落ち着いてボールを蹴りこみゴールネットを揺らした。

 初戦では孤立しがちだった前田遼一(磐田)や香川のポジションが幾分か修正され、中盤の選手との絡みでチャンスを演出した。試合後にアルベルト・ザッケローニ監督が「90分間、我々が主導権を握っていた」と語ったように、ほとんどの時間で日本のサッカーができていた。

 ただし、それでもすんなりと勝てないのがサッカーだ。日本が一気に慌てふためいたのは後半25分だった。長谷部のキーパーへのバックパスが短くなり、シリアFW2人が川島に詰め寄る。一旦は川島がクリアするも、このボールに後半から出場したフィラス・アル・ハティブ(アル・カディシャ)が反応しダイレクトで前線へパス。飛び出した川島よりもゴールに近い位置にいたサンハリブ・マルキ(ロケレン)がボールを受けた。副審はパスが出た瞬間にオフサイドフラッグを上げる。しかし、主審はこのオフサイドを流しプレーは続行。PA内でボールを奪いにいった川島はマルキを倒してしまい、PKの判定が下る。さらに川島にはレッドカードが提示され、控えキーパーの西川周作(広島)が急遽準備をして前線の前田と交代しピッチへ入った。西川が準備する間に、日本は主審へ猛抗議を行なったが、判定が覆ることはなくキーパーの準備が整うとPKへ。ここでアル・ハティブは落ち着いてシュートを左サイドへ流し込み、1−1の同点とした。

 バックパスを拾われた場面ではアル・ハティブがラストパスを出すタイミングでセンターバックの今野泰幸(F東京)と重なっているようにも見え、ピッチ上でプレーを見ていた主審はアル・ハティブのラストパスを今野のバックパスと判断したようだ。

 1人少ない上、同点とされた日本は、是が非でも勝ち越さなければいけない状況へと追い込まれた。ここで大きな仕事をしたのは岡崎だった。後半20分に香川に代わってピッチに入った岡崎は積極的なドリブルと体を張ったプレーで攻撃にテンポを作った。

 その岡崎が絶好機を作ったのは37分。中盤からのフィードをうまくトラップし、振り向きざまのシュートを狙う。ここでベラル・アブドゥルダイム(アル・カラマ)が堪らずに岡崎を倒し、PKを獲得した。日本のキッカーは本田。緊張する場面で本田はPKをシリアゴールのど真ん中に蹴りこみ、絶体絶命の状況で日本は勝ち越しに成功した。

 シリアも執拗な粘りで残り時間は日本ゴールに襲い掛かる。アル・ハティブを中心に強烈なシュートを何本も放つものの、西川が落ち着いて対応しゴールを許さない。PKでの抗議やロスタイム中のシリア選手の退場で6分以上のアディショナルタイムが与えられたが、最後まで日本守備陣は集中を保ち続け、そのまま試合終了のホイッスルが鳴った。

 試合後、主将の長谷部は「よかったのは勝ち点3を取れたことだけ。全てにおいて、このままではアジアカップに届く気がしない」と試合内容への不満を吐露した。先制したまではよかったものの、後半は受けになる時間もあり、もったいない形で失点している。審判の不可解な判定はあったものの、その前に2点目が入っていれば失点をしても慌てることはなかった。ザッケローニ監督もこの点に触れ、「もっと早く試合を決めなければならなかった」と反省の弁を述べている。

 薄氷を踏む勝利で勝ち点4とした日本はヨルダンと勝ち点で並んだものの、得失点差でグループB首位に立った。最終節の相手はサウジアラビア。今大会は2連敗を喫し、すでにグループリーグ敗退が決まっているが、日本と並ぶアジアカップ3回の優勝を誇る強国だけに油断はできない。

「(サウジアラビア戦は)勝つだけ。サウジはシリア、ヨルダンよりも強い。しっかりと準備をして競り合いになってもチーム一丸となって勝ちたい」と決勝のPKを決めた本田は力強く語った。グループリーグから白熱した試合が続くザックジャパン。この経験がチームを強くしていくはずだ。1つでも多く試合をするためにはできるだけトーナメントで上へと勝ち進むことが、チーム強化を考える上でも重要だ。サウジアラビア戦で勝てば文句なしの決勝トーナメント進出となる。4日後の試合ではさらに連動性の増した攻撃陣のゴールラッシュを期待し、アジアの頂点への足がかりとしてほしい。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
川島永嗣
DF
今野泰幸
吉田麻也
内田篤人
長友佑都
MF
遠藤保仁
長谷部誠
松井大輔
→細貝萌(90+2分)
香川真司
→岡崎慎司(65分)
本田圭佑
FW
前田遼一
→西川周作(74分)