17日(現地時間)、アジアカップ2011グループリーグB第3節がカタール、アル・ラーヤンで行われ、日本はサウジアラビアと対戦した。出場停止や負傷で先発が3名入れ替わった日本は前半8分に岡崎慎司(清水)が先制点をあげると、その後も立て続けに2ゴールを決め、前半20分までに大きくリードを広げる。後半5分にもこの日2点目となる前田遼一(磐田)のゴールが生まれ、35分には岡崎がハットトリックを達成し、5ゴールを叩き込みサウジアラビアを圧倒した。日本はグループリーグを2勝1分けで終え、リーグ首位でグループリーグを突破。準々決勝で地元・カタールと21日(金)に対戦することになった。

 試合を完全にコントロールし完封勝ち(アル・ラーヤン)
日本 5−0 サウジアラビア
【得点】
[日] 岡崎慎司(8分、13分、80分)、前田遼一(19分、50分)
 1勝1分けでグループリーグ最終戦を迎えた日本代表は、シリア戦でレッドカードを受けたGK川島永嗣(リールセ)、さらには右足首を痛めた本田圭佑(CSKAモスクワ)、右太ももの肉離れを起こした松井大輔(グルノーブル)を欠いた布陣で試合に臨んだ。これまで途中出場だった西川周作(広島)、岡崎慎司(清水)がピッチに立ち、トップ下には柏木陽介(浦和)が入った。

 引き分けでも決勝トーナメントへ進出できる日本は、早い時間帯で先制点をあげ、楽な試合展開に持っていきたいところ。試合開始直後にアルベルト・ザッケローニ監督の期待に応えたのは岡崎だった。前半8分、中盤の遠藤保仁(G大阪)からの縦パスに反応した岡崎はDFラインの裏にうまく抜け出しGKと1対1になる。ボールに追いつくと同時にうまくボールを浮かせGKをかわすと、最後は自らボールを無人のゴールへと押し込み、先制点をあげた。

 その5分後にも岡崎は持ち味を発揮する。香川真司(ドルトムント)が左サイドでボールを持つと、逆サイドからゴール前へ侵入。ニアサイドへ走りこんだ前田がDF2人を引っ張る形になってできたスペースにうまく入り込みクロスにダイビングヘッドであわせる。シュートは見事にゴールネットを揺らしリードを2点に広げた。

 圧倒的に攻める日本のゴールラッシュは続く。19分には左サイドを駆け上がった長友佑都(チェゼーナ)からニアサイドにクロスがあがると、そこへ飛び込んだのは前田だ。絶好のタイミングで右足でクロスをあわせると、シュートは豪快にサウジゴールへと突き刺さった。開始20分で3ゴールを決め、序盤で一気に勝負の行方を決めてしまう。試合後にサッケローニ監督が「早い時間に点を取ったことに満足せず、試合を決めにいったことに満足している」と攻めの姿勢を高く評価したように、この日の岡崎と前田は集中してゴールを狙うことができていた。

 守っては川島の出場停止をうけピッチに立った西川が安定した守備をみせた。雨が降る嫌なコンディションの中、ほとんどのボールをこぼすことなく堅実なプレーを見せる。センターバックを守る今野泰幸(F東京)、吉田麻也(VVVフェンロ)との連係にも問題はなく、サウジ攻撃陣にほとんど仕事をさせなかった。

 後半に入ると、前半で警告を受け次戦で出場停止となる内田篤人(シャルケ04)をベンチに下げ、次戦に出場濃厚な伊野波雅彦(鹿島)をピッチに送り込む。伊野波はそのまま内田のポジションに入り、周りとのコミュニケーションを確認しつつ攻めのタイミングを図った。

 その伊野波から前田の2点目が生まれた。右サイドで岡崎がボールをキープしながら伊野波の上がりを待つと、トップスピードで岡崎を追い越したタイミングでスルーパスが出る。伊野波はニアサイドへフワッとしたクロスを上げると、そこに前田が飛び込みヘディングシュート。ボールはサウジゴールへ吸い込まれ、ダメ押しとなる4点目が入った。

 その後は試合をコントロールし、チャンスとなれば人数をかけ相手ゴールに迫るザックジャパン。35分にはゴール正面から前田とのパス交換でうまくゴール前に入った岡崎が左足でシュートを決め、ハットトリックを達成。スコアを5−0とし、今大会2連敗だったサウジアラビアを圧倒した。

 トップ下に入り素早いパス交換でリズムを作った柏木も含め、岡崎、伊野波、西川とこれまで先発出場していなかった選手が、周りと息のあったプレーをみせチームに貢献した。控え選手も含めた総合力が問われる決勝トーナメントに向け、いい材料が揃うグループリーグ最終節となった。

 準々決勝の相手は地元のカタールだ。世界ランキング105位とはいえ、手ごわい相手になることは間違いない。実際、横浜で行われた南アフリカW杯最終予選では、本大会出場を決めた直後の試合とはいえ、1対1のドローに終わっている。凱旋試合となったゲーム後に、岡田武史前監督がスタジアムのサポーターに陳謝した場面は記憶に新しい。カタール代表を率いて3年目となるブルーノ・メツのサッカーが浸透し、完成度の高い集団となっている。侮る事のできない相手だ。準決勝まで勝ち進まなければ、次のアジアカップ予選免除となる3位以内を確保することはできない。ザックジャパンにとって試練の準々決勝となるだろう。

 ただ、この日3ゴールの岡崎と2ゴール1アシストの前田を筆頭に攻撃陣は波に乗っている。あとは今大会でまだ目立った活躍のできていない香川にゴールが生まれれば、上昇ムードはさらに高まるはずだ。4日後の試合はザックジャパンがさらにステップアップするためには絶好の機会。5ゴールの勢いそのままに、地元サポーターを黙らせるような試合を見せてほしい。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
西川周作
DF
今野泰幸
吉田麻也
→岩政大樹(63分)
内田篤人
→伊野波雅彦(46分)
長友佑都
MF
遠藤保仁
→本田拓也(83分)
長谷部誠
香川真司
岡崎慎司
柏木陽介
FW
前田遼一