Jリーグ2011年シーズンは5日、開幕を迎える。今季はガイナーレ鳥取が加わり、J1・J2あわせて38クラブが激闘を繰り広げる。今季J1の優勝争いは3強を軸に展開されそうだ。その筆頭は、ドラガン・ストイコビッチ監督率いる名古屋グランパス。初のJリーグ優勝を果たした自信を手に今季はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)との二冠を目指す。そこに対抗するのは、昨季天皇杯を制した鹿島アントラーズと昨季リーグ2位・ガンバ大阪の2クラブになるだろう。
(写真:連覇を目指す名古屋のストイコビッチ監督)
 名古屋は、今季も充実した戦力でJ史上4クラブ目となるリーグ連覇を狙う。今季は昨季の主力メンバーの多くが残り、さらに日本代表の藤本淳吾、昨年のアジア大会得点王・永井謙佑らが加入した。特に藤本は司令塔としてだけでなく、プレースキッカーとしても期待される。藤本の正確なキックからジョシュア・ケネディ、田中マルクス闘莉王ら長身選手をいかす名古屋のセットプレーは他チームにとって脅威となるだろう。1つ気がかりなのは、ケガで序盤戦を棒に振るダニルソンの離脱だ。その穴を中村直志、小川佳純、吉村圭司らが、どこまで埋められるか。昨季の優勝に貢献した大型ボランチを欠く時期に、どれだけ取りこぼしを少なくするかが、連覇に向けての一大テーマだ。

 その名古屋を追いかけるのは、J最多7度の優勝を誇る鹿島と昨季リーグ1位の得点をあげたガンバ大阪だ。

 鹿島は今季、大幅な選手入れ替えを敢行し、世代交代を図った。本田拓也、西大伍、アレックス、田代有三ら20代の選手を補強し、ポジションごとの競争が増した。小笠原満男、中田浩二ら30代の主力に危機感を与えることで、チーム全体が底上げされるだろう。不安材料は指揮官のオズワルド・オリベイラも懸念している「決定力不足」だ。昨季は主導権を握っていた試合で、取りこぼしが多かった。それが4連覇を逃した原因だ。この「決定力不足」という課題が解決しない限り、王座奪還は難しいだろう。新加入のブラジル人・カルロンがどれだけフィットするか、興梠慎三、大迫勇也ら若手FWが一皮剥けるかがカギを握る。

 G大阪は今季から背番号11をつける宇佐美貴史の活躍に期待したい。昨季は高校3年生ながら7得点を奪い、ベストヤングプレーヤー賞に輝いた。下部組織出身の逸材は、ずば抜けたテクニックで観衆を魅了する。G大阪といえば、日本代表の司令塔・遠藤保仁を中心にした攻撃的なサッカーだ。今季はセレッソ大阪からアドリアーノを獲得するなど、その破壊力に磨きがかかった。05年にG大阪は外国人助っ人・アラウージョが得点王に輝き、初優勝を収めた。昨季14ゴールをあげたブラジル人FWが、今季さらに得点を量産すれば頂点も見えてくる。

 上記のクラブにセレッソを加えた4クラブは、ACLと並行してリーグを戦わなくてはならない。過密日程との戦いとなり、チームの総合力を問われることになる。ACLはすでに先日開幕、ガンバとセレッソの大阪勢は、ともに初戦を本拠地で勝利し、好スタートを切った。一方、アウェーを戦った鹿島は引き分け、名古屋は黒星と順調とは言えない出だしとなった。今季はクラブW杯が3年ぶりに日本で開催される。Jリーグとしては、既に開催国枠が1つ用意されている。しかし、開催国のプライドに懸け、アジアチャンピオンの座を奪い出場権を得たい。

 ACL出場勢以外の注目クラブは、昨季J2を圧倒的な力で制覇した柏レイソルだ。昇格組は09年のサンフレッチェ広島、10年のC大阪が旋風を巻き起こし、見事翌年のACL出場権を獲得している。この2チームに共通するのは、J2時から数年後を見据えたビジョンを持っていること。積極的に若手を起用するところからも、クラブの意図は見て取れる。昨季のレイソルも、工藤壮人、茨田陽生ら若い選手を育てながらJ1昇格を果たした。さらに、今季は兵働昭弘、増嶋竜也、アン・ヨンハら新戦力が加入し、戦力にも厚みが増した。スタートダッシュに成功し、序盤で波に乗れれば、ダークホースとなる可能性は十二分にある。

 5日の第1節、最大の注目カードはガンバとセレッソの大阪ダービーだろう。ACL出場クラブ同士の対決は必見だ。両者の対戦成績は1勝1分とガンバがリードしている。試合は攻撃的なサッカーを持ち味とする両チームだけに、点の取り合いも予想される。開幕を華やかに飾るような好ゲームに期待したい。
(写真:大阪ダービーの健闘を誓う宇佐美<左>と乾貴士)

 また、名古屋は横浜F・マリノスと、鹿島は大宮アルディージャと、それぞれホームで対戦する。昨季、横浜は8位、大宮は12位とふるわなかったが、的確な補強を行っており、油断はできない。Jリーグが、1シーズン制となった06年から優勝チームの開幕戦成績は4勝1敗1分だ。このデータからもいかにオープニングゲームの重要かがわかるだろう。34分の1であって、34分の1でないゲーム、それが開幕戦だ。戦いの火ぶたがいよいよ切って落とされる。

<2011Jリーグ第1節対戦カード>

3月5日(土)
甲府 × 磐田(14:00、中銀スタ)
名古屋 × 横浜FM(14:00、豊田ス)
G大阪 × C大阪(14:00、万博)
広島 × 仙台(14:00、広島ビ)
福岡 × 新潟(14:00、レベスタ)
川崎F × 山形(15:00、等々力)
柏 × 清水(19:00、柏)
3月6日(日)
神戸 × 浦和(13:00、ホームズ)
鹿島 × 大宮(14:00、カシマ)